第46話
「完全に破壊者モード入ってるな。」
「みたいね。簡単に考えてたけど、殺さずに気絶させるのってかなり難しいわよ!!」
「手加減しながらどーこうできる相手じゃ無さそうだしな。超回復もあるから部位破壊で無力化も不可能だし…よし!考えても方法なんて出てこないし、やれるだけやってみよう。メノウさんも俺らを敵として認識したみたいだしな!」
その言葉を言い終わる前にメノウさんはアリエスの前に飛び出した。そして突然手に現れた真っ黒な巨大な剣に、これまた真っ黒な炎を纏わせ斬りかかってきた。
その禍々しい攻撃は完全に避けたにも関わらず、その黒い炎が形を変え、手のようなものが飛び出しアリエスの左腕を掴み取った。
「きゃっ!何これ!?」
メノウさんはそのままアリエスの腹に横蹴りを当て吹き飛ばした。アリエスはそのまま飛ばされるかと思ったが、すぐに空中でスキル「エアウォール」で見えない壁を作り、それを蹴ることで反転し、メノウさんの頭へ逆に回し蹴りを当て吹き飛ばしていた。
「ゲッホゲッホ!くー、こんなに痛い感覚久しぶりだわ!!」
俺はアリエスが吹き飛ばした方へ先に移動し、吹き飛んで来るメノウさんへ攻撃を仕掛けた。
「獅子烈火衝!!」
俺の両の手が放つ掌底に合わせて炎の獅子の姿が現れ、メノウさんを飲み込まんと巨大な口を開く。だがメノウさんは、俺の攻撃が届く直前に空中で風の魔法で体勢を整え逆に攻撃を仕掛けてきた。
「鳳凰回転弾!」
メノウさんは自身の体を急速回転させ鳳凰を彩る炎を全身に纏い、そのまま獅子の口へ飛び込んできた。お互いの炎と炎がぶつかり合い、周りの温度を急速に上昇させる。俺らの周りの大地はあっという間にマグマ状に変貌していく。
「う熱っちっちちち!!」
俺はその温度変化の方にダメージを受けてしまい、慌ててメノウさんの力を受け止めるのではなく、流して空の方へと変換させてやった。そして俺から離れていくメノウさんに向けて水のレーザーを放った!
今放ってるのは以前の魔力200の生活魔法で使ったようなちゃちなものではなく、魔力9999×2のあらゆる魔法を無詠唱で放てるように極めた俺の放つ魔法である。その圧縮力は桁外れで、1滴分ですら本来は琵琶湖の水くらいの質量がある。
水のレーザーはメノウさんの体を貫き、そして再び意識を持つかのように方向を変え戻り、メノウさんを何度も何度も貫いていく。メノウさんもこれには堪らないと思ったのか、水のレーザーを迎撃しようと火の魔法で消し去ろうとするが、多少の蒸発などしてもこのレーザーの質量には大した変化はない。尚もメノウさんの体を貫きまくる。
熱では埒が明かないと判断したメノウさんは、今度はその手に持つ黒剣で激しい衝撃波を起こしレーザーを掻き消した。メノウさんの体に大量に空いた穴は攻撃が止んだ途端にあっという間に塞がっていった。
なるほど…超回復はダメージを受け続けてる間はそれなりにしか回復しないようだな。つまりは回復の暇さえ与えずにダメージを与え続けることが勝利の最低条件ってやつだな!
「アリエス!メノウさんにダメージを与え続けていくぞ!!回復の暇を与えるな!」
「オッケー!」
メノウさんは俺たちへ向けて間髪入れず様々な属性の魔法を放ってきた。俺たちはそれを避け、相殺し、合間に攻撃を放つも、回復の暇を与えないどころか、先程からこちらの攻撃を当てることすらできていない。
「アルテミットソード!」
「次元断裂斬!」
「邪炎黒点裂波!」
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「月影マスカレード!」
9つもの強烈な技や魔法が突然メノウさんを襲った!転生者の仲間たちが追い付いてきたのだ。その1つ1つがメノウさんに大きな傷を与えていったが、最後に短剣で攻撃をしたルージュには傷を受けながらも反撃をしてきた。
ルージュの素早く放った月影マスカレードは他の転生者たちの攻撃でボロボロになっていたメノウさんへ大勢の虚像のルージュで取り囲み同時に斬りかかった。この技の恐ろしいところは虚像でありながら、その攻撃の全てが何かで受けようとしても、避けようとしても回避不能で全て現実として斬ることができることだ。
ただし唯一弱点がある。その一撃自体は大して強くないことだ。それをメノウさんは知っていたのだろう。これまでの他の転生者たちの攻撃には致命傷を避けるために回避や防御に専念していたのに、この時は全力で反撃に出ていた。メノウさんの持つ真っ黒な剣は全てのルージュの姿を真っ二つに斬っていく。虚像も本人自体も…
「ガハッ!」
「ル、ルージュ!!そんな!!」
ロイが首を胴体を真っ二つに切断されたルージュへ駆け寄る。
「リリィ!ルージュを回復してくれ!!俺たちは攻撃を続ける!」
「オリオンさん、分かりました!!」
だが俺の思い通りにはならなかった。メノウさんは俺らの会話を聞くなり、体中まだボロボロにも関わらず俺らの攻撃を大きく回避して回復魔法を使えるルージュを狙った。
「炎天烈風連撃!!」
無情にもその炎の斬撃は次々とリリィの体へ襲いかかると思われたその刹那、
「「聖陣魔衝壁!」」
その攻撃は2人女の子の放った光の盾によって完全に掻き消されることとなった。
「ナディア、リディア!助かったわ!!」
彼女たちは地球でも双子の姉妹として生まれ、共に転生しこのポータルマリアに再び双子として転生した希少な存在であり、共に盾神と超回復を取得しており、転生者の守り役となっている。今年で共に16歳となる。
「「それが私たちの役目!これからももっと守る!!」」
「相変わらず息ぴったしね?」
「「そんなことはない!性格は全然違う!!」」
「んなこと話してる場合じゃねーだろ!次来るぞ!!」
彼はメッシュ15歳、その若さで既に2メートルを越える恵まれた体格を持ち、さらに自分の身長を越える巨大な大剣を軽々と振り回す姿は俺たち転生者の中でも一際目立つ。
「冥王氷冷斬!」
メッシュの放ったどす黒い氷の刃は、メノウさんの放った炎の最上級魔法とぶつかり大きな爆発と共に相殺した。その爆発の合間から一本の虹色の一閃がメノウさんへと向けて突き抜けた。
「滅殺レインボーアロー!」
七色に輝く矢はメノウさんの体貫くと7つに分かれ、赤は炎で燃やし、橙はその強い輝きと熱で目を焼き、黄はレーザーとなり貫き、緑は風で切り刻み、青は体内のメノウさんの血を急速に吸い上げ赤く染まり、藍は体内に毒を分泌し、紫は毒ガスを発生させた。
これはボリーという最年少の転生者が放った技である。メッシュと同じ15歳で、逆に小柄で中性的なイメージの少年だ!
「ボリー、ナイス!もしかして殺ったんじゃない?」
復活したルージュがボリーを褒めるが、
「な訳ないだろう!あのオリオンさんとアリエスさんでも苦戦する相手だぞ!ルージュは自分が殺されかけた癖に油断しすぎだ!!」
「なっ!可愛くないわね!!」
だがボリーの指摘が正しいことは次の瞬間に嫌でも理解させられた。メノウさんはボリーの攻撃をまともに受けたにも関わらず次の瞬間には、リリィの目の前に現れその首を一閃のもとに切り裂いた。
「嘘だろ!?何だってんだ、あの速度!!」
そう、本気のメノウさんの速度はステータスマックスに俊敏2倍の俺とアリエスをも越えてるのだ。他の転生者たちに対応しきれる筈がないのだ。さらにゼウスローゼン様からたった今もらった情報によれば、『無限スタミナ』、『無限魔力』を持つ為、疲れて弱体化することもないそうだ。
そんなことを言ってる間にも自分を救ってくれたリリィが殺されたことに怒ったルージュが飛び出したところをメノウさんは今度は確実に首を切断することで止めを刺した。
俺は次に近くにいたボリーを殺そうと動いたメノウさんを掴むと、空高く投げ飛ばし、追跡機能を持っている爆炎の魔法を3つ放った。
「みんなリリィとルージュの死体を持ってここを離れるんだ!メノウさんは俺が殺すことにする!」
「オリオン、いいの?」
「ああ、クラリスさんには悪いが命の優先順位がある。メノウさんと戦いながらの蘇生は不可能だ。だから30分以内にメノウさんを殺して、2人を救うことにする!!アリエスも一緒に離れてるんだ!」
「私は一緒に戦うわよ!」
「アリエスはみんなを守ってあげてくれ!ここからは俺の力を全て解放して戦うつもりだ!!俺自身初めての全力だ…間違えてもアリエスを巻き込みたくないんだ!!頼む!」
「分かったわ!でも絶対に死なないでね!!」
「ああ、任せておけ!!」
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