第14話
「俺はただの新人Fランク冒険者のオリオンです。」
「ふざけるな!どこにオークキングを1人で倒せるFランク冒険者がいるっていうんだ!!」
「1人ではありません。マリネさんの補助とマナさん、ミナさんの魔法の援護があったからこそ俺は勝つことができました。それまでは本当に危ないところでした。
それに俺は赤ちゃんの頃から自分を鍛え続けてきた結果が今の俺の強さなんです。本当に何者だとか特別な存在なんかではないんです!単に努力の結果なんです!」
「ちっ!そんな話信じられる訳がないだろ!!」
「1つだけ俺の秘密をバラしちゃいますが、俺は生まれつき20歳で死ぬ呪いを受けてます。その呪いを解く準備をするのには少なくとも200万GPをそれまでに貯める必要があります。
そんな運命だからこそ、物心ついたときから俺は生きるために必死で努力を続けてきました。俺には1日も無駄にする時間はないからです!その説明だけでは俺の強さの理由として説明不足でしょうか?」
俺はここまで知られた以上、嘘はなく、転生のことだけ秘密にして素直に話すことにしたのだ。
「何だその話は!?そんな呪いだのふざけた話は信じられる筈がないだろ!」
「素直に秘密までバラして信じてもらえないのなら、もう何も話せることはありません。勝手にどうとでも思っていて下さい。さっきも言いましたが、俺には無駄にする時間は残されてないんです!ナジムさんとのこの問答もこれ以上は時間の無駄でしかありません。」
「このっ!」
「ナジム落ち着きなさい!彼は嘘は言ってなさそう。」
「マリネ、本当か?お前がそういうのならばそうなのか…しかし、信じられねー!」
「私たちに信じられるような努力をしたって、成人したばかりであんな強さは手に入らないってことよ!おそらくは彼が言うように、ずっと信じられないような努力を続けてきた結果が今の彼なのね。」
「そうか…俺はあいつの強さに嫉妬しちまってたのかもな…あの年で何であいつだけあんなスゲー力を手にしてるんだって思っちまったのかもしれねー。そうか、俺が弱えーのは努力が足りねーんだな。そして努力を始めるのが遅かったってことだよな。」
「ナジムさん、そう思うなら今からでも死ぬ気で努力したらいいわ!!私はオリオンに追い付くために必死で努力をしてるわよ!まだその努力を始めてたった8日だけどね!そのたったの8日だけでも私は成長してるわよ。魔法を無詠唱で使えるようになった。
努力が足りないって気づけたなら、そこが努力をできるチャンスだと思えばいいのよ!そこで変われない奴は一生そのままなのよ!!」
「アリエス…お前、良いこと言うな!うおーー!何か燃えてきた!!俺はたった今から生まれ変わるぜ!俺はもっと自分が好きになれるようもっと強くなる!!
しかし、オリオンの話を信じるとしたら、お前の人生中々にヘビーだな。10年で200万GP貯めるなんて、よっぽど強い冒険者を雇って代わりに戦わせるくらいしか不可能じゃないか?」
おそらくはこれまでの転生者で200万GP貯めることに成功した者は殆どこの方法であろう。異世界知識でお金を稼ぎ、それを使ってGPの荒稼ぎをしたに違いない。だが…
「俺は自分で稼ごうと思ってますよ。」
「まあ、お前のあの強さがあれば不可能ではないのか…?しかし、それにしても普通の方法じゃきつそうだな。ランクがもう少し上げられれば『ダンジョン』に潜るのが一番効率がいいだろうな!!」
「ダンジョン!?この世界にはダンジョンが存在するんですか?」
「変な言い回ししやがるな。それにしてもダンジョンがあることも知らないのか?この国にも幾つかあるぞ!簡単なダンジョンなら、慣れれば半日もあればクリアできるぞ!詳しく知りたいならエリーゼに聞けば教えてもらえる筈だ。」
この情報を知れたのが、俺たちにとって今回の依頼の中でも一番の出来事だと思えた。ダンジョンといえば魔物が大勢いて、倒しても倒しても次々と沸いてくる筈だ。単にGPを稼ぐことを目的にするのなら、冒険者の依頼をこなすよりよっぽど効率が良さそうだ。
俺の頭の中は、既にダンジョンに潜ることが決定事項となっていた。しかし現実はそう上手くはいかなかった。
「オリオンさんとアリエスさんはまだダンジョンには入れませんよ!」
エリーゼさんの冷静な声が俺の耳に響いてくる。
俺たちがオークキングを倒して話していると、街に戻った冒険者ギルドの人たちが冒険者のパーティーを連れて慌てて戻ってきた。
ギルドの人たちもついてきた冒険者たちもオークキングとオークジェネラルが2匹も存在していたことに驚き、さらにそれが既に討伐されていたことに大変驚いていた。
彼らはまさか俺たちが倒したとは思いもせず、旋風の牙を褒め称えていた!ナジムたちも違うと言おうとするのだが、「謙遜するなっ!」とバシバシ叩かれ、何も言えずにいた。
それからは全員で協力し、オークたちの肉を解体して馬車に乗せていった。数が多すぎて馬車2台でも3往復も必要だったのはご愛嬌だろう。俺たちが街に戻ったのは薄暗くなった頃であり、数も数な為、報告と報酬の計算は翌日にということになったのだった。
翌朝、俺はダンジョンについて急いで知りたかったので朝イチでギルドに向かった。そしてエリーゼさんに速攻で告げられたのが先程の言葉であった。
「ダンジョンに入れないって何故ですか?年齢ですか?」
「いえ、年齢制限はないのですが、各ダンジョンには冒険者ランクの制限がつけられているのです。つまり、Fランクであるお二人にはまだダンジョンには入れないということですね。
あっ!でも昨日の報酬が凄そうなので、もしかしたらEランクには上がれるかもしれないですね。そうしたら初心者ダンジョンには入れるようになりますよ。
ただ…お二人にはちょっと物足りないかもしれませんが…」
「初心者ダンジョンにはどんな魔物がいるんですか?」
「ゴブリンやコボルトなどですね…ボスでも通常のオークくらいです。」
「なるほど…それは確かに物足りないかもしれませんね。」
「お前に初心者ダンジョンはさすがにねーよ!」
「あっ!ナジムさんおはようございます。皆さんもおはようございます。」
「おはよう。昨日は本当にありがとう。オリオン君がいなかったら、私たち確実に死んでたわ。」
「いえ!皆さんの助けがなかったら俺もヤバかったのでお互い様ですよ!!」
「えっ?何その話…旋風の牙がオークキングとオークジェネラルたちを倒したのよね?私はそう報告を受けてたんだけど…」
「いえ、その3匹を倒したのはオリオンですよ!」
「えええぇーー!?」
そこからはエリーゼさんからの質問攻めで大変だった。俺がまだ未成年であることを知っていたエリーゼさんには、そんな俺がどうやったらオークキングを倒すことができるのかと強烈に問いただしてきたのだ。
そしてそこからは、旋風の牙のメンバーからも「お前、まだ未成年なのか!?」と質問のオンパレードだった。
「俺の戦いの技術についての詳細は秘密にさせてもらいます!」
俺の魔法はこの世界ではあまりに常識を越えた使い方なので、素直に話せば下手をすればこの人たちを危険に晒すと考え、秘密としたのだった。
「そこを秘密にされちゃったら私が困るのよ!どう報告を上げればいいのよ?Fランクの未成年の少年が、オークキングとオークジェネラル2匹を討伐しました!なんて話、誰も信じてくれないわよ!!」
「そこは俺には関係ない話ですし…」
「オリオン君、君は私が困ってもいいというの?酷い、酷いわ…」
「そんな泣き真似しても無駄です。」
「ちぇっ!でもこれはさすがに王都の冒険者ギルドから呼び出し受けそうだわ。オリオン君も、アリエスさんも下手をしたら一緒に呼び出しかかるかもしれないから覚悟しておいてちょうだいね!」
「えー!そんな暇俺たちにはありませんよ。」
「確信持って報告できない以上、今回の討伐の報酬を渡すのに審議がかかる筈なのよ。報酬額が報酬額なだけにそのまま放ってもおけないしね。」
「そんなに報酬がでるんですか?」
「その3匹の討伐だけで500万ラナくらいにはなると思うわ。」
「500万ラナ!?」
5000万円くらいか…スゴい額だ。でも…
「最悪それもいらないですので、呼び出しは遠慮します。」
「そうだ!今回の討伐が認められたら、二人の冒険者ランクは一気に上がる筈なのよ!おそらくは一気にCランクにはなりそうね!そうすれば、王都の傍にあるダンジョンに入れるようになるわよ?
あそこなら二人ならかなり効率よくGPを稼げるんじゃないかしら?」
「それはどんなダンジョンなのですか?」
俺はエリーゼさんの罠だと分かってはいても、その誘惑に尋ねずにはいられなかった。エリーゼさんのニヤリとした顔を眺めながら、俺たちはなし崩し的に王都のギルドに報告へ行く流れとなったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます