第11話

『キャハハハ!今の顔見た?頑張って200万GP貯めた後のあの絶望の表情…ほんと堪らないわ~♪』



『あはっ!本当にあの顔は堪らない!!これだからこのラノベホイホイは止められないんだよな!10歳になった時に、俺たちの悪意を理解したくせに、ただ200万ポイント貯めれば助かるなんて思える甘ちょろい奴らの多いこと!ほんとにラノベ好きにはご都合主義な考えの奴らばっかりね!?』



『ラノベって存在がそういうものだからね!私たちは嘘は言わないけど、罠は何重にも張って転生者たちを絶望に導くの♪絶対に呪いを越えられる転生者なんていないわ!次に絶望するのはどの転生者かしら?』




 神界ではファーレ神とベトログ神が転生者たちの苦しむ姿を見て楽しんでいた。ファーレ神もベトログ神もこの希望が絶望に変わる瞬間を見るのが一番の楽しみであり、転生者たちが10歳を迎える際、GPを200万貯め終えそうなときに自動でお知らせされるように設定されていた。


そのため、GPを貯めるために苦労してる姿を逐一観察する趣味はなかったのだ。だからこそ彼らの用意した磐石の罠であるラノベホイホイにとって、初めてそのの磐石の罠に亀裂が入っていることに彼女たちはまだ気づいていなかったのであった。




『あはっ!絶望のままに自殺しちゃったね…』



『あーあ、もう少しその絶望を見てたかったのに!勿体ない!』



『あれ?地上に逃げ出した神獣が消えてるな。』



『俺の呪いが発動してたし、消滅したんだろ?』



『そっか、そっか!次は誰が苦しむかな~?』




 トリスがあまりにも小さな存在になってしまったこと、さらにこの時2人が詳しく調べなかったおかげでトリスは消滅したものとして気にされなくなった。



 さらに彼女たちにとっての大きな誤算は、俺たちがトリスと出逢ってることに気づけなかったことだ!それさえ知っていれば、俺たちの未来は変えられなくとも、少なくとも自分達の未来は守れたかもしれなかったのに…



彼女たちはまだ知らない…自分達が玩具だと蔑んでいる転生者たちが、復讐の炎を燃やし、自分達に牙を剥く日がくることを…





「なあ、エリーゼさんに何て報告しよう?」



「神獣が暴れてたけどこんなに可愛い子になりました!なんて言えるわけないもんね。」



「俺たちが嘘つきだと言われるに決まってるな!」



「じゃー何が起きたか分からないけど、魔物が逃げてくる方へ調査に向かったところ、グルドルの森で何か巨大なものが暴れた跡を発見。その巨大な存在は確認できなかった。ってくらいでいいんじゃない?あの大量の折れまくった木をも見れば私たちの言ってることが嘘ではないと判断されるでしょ?」



「それいいな!さすがはアリエス、見た目通りやっぱり頭いいな!脳筋はステータスだけでよかった!」



「オリオン…あんた私を怒らせたいわけ?」



「えっ?褒め称えたつもりだったんだが…今のに何か怒らす要素あったか?」



「オリオンは無意識でないと女の子を褒めるのは無理みたいね!」



俺にはアリエスの言ってることの意味がさっぱりだった。




「我が起こしたことで2人には迷惑を掛けるな…」



俺の胸ポケットの中からトリスが顔を出した。



「ふふっ!そんなとこから顔だけだすと益々トリス可愛い!!」



「くっ!アリエスのそれは我には中々の屈辱だ…我はカッコいい最強の神獣を目指してるのだ!!」



「それは呪いが解けた後に目指したらいいことよ!今はその可愛い姿を満喫することをオススメするわ!!だって、その姿に最強もカッコいい要素も0だもん。本当のトリスが強くてカッコいいのは私たちがよく分かってるから!」



「うぐぅ。確かに今のナリでは文句も言えぬか…ゆっくりでも構わないと思っていたが、早く元に戻りたくなったぞ!」



「それは私たちも命が掛かってるから全力を尽くすわ!!」



「ああ!!今はどうするのがGPをたくさん貯めるのに有効か試していくしかないな!」



「今日はトリスが魔物を追いやってくれてたから結構稼げたわね♪」



「そうだな。だけど、今日のペースでも正直まだまだペースは遅すぎると思うんだ!もっと稼ぎ放題のような方法を見つけたいな!」



「さすがにそれはないんじゃない?そんなのあったらみんなやってる筈でしょ?」



「かもな。でも急がないといけない。あの神様たちの性格からすると絶対に200万ポイント貯めることなんてまだ呪いを解く通過点でしかない筈なんだ!」



「どういうこと?」



「詳細は俺にも分からない。だがあの神様たちの性格なら、きっと必死に200万ポイント貯めたところで、俺たちが絶望する何かを用意してる筈だ!俺があの神様たちなら必ずそうすると思うからな!


俺の予想では少なくともあと3つは乗り越えないといけない壁がある筈なんだ。」



「なにそれ?詐欺じゃない!」



「いや、今のところあの神様たちは嘘は何一つついてないんだ!スキルは本当に全てとんでもないチートスキルばかり用意していた。ただ取ることが困難なだけだ。


俺にファーレははっきりと完全解呪でベトログの呪いは解けると言った。そこに嘘はない筈だ。だからきっとそれだけでは解呪できないんじゃないかと俺は考えてるんだ!他に条件が幾つかあり、それを全て満たさなければ解呪できない。そんな感じだな。」



「最低な予想ね…でも確かにあの神様たちならしそうな罠だわ。それで絶望する人たちを眺めて楽しんでそうね!」



「神の決まりで地上の人間に嘘は付けない。それは本当だ!だが本当のことを言いながら、真実を隠し巧妙に違う印象を与えることはできる。昔から邪神と呼ばれる者たちの常套手段だ。


言わなくても予想してるかもしれんが、あの2人は元邪神だ!!我が主を陥れて、この世界の神の座を奪ったのだ!」



「あー、なるほど…それで色々と合点いったよ!そういう目で見れば、全てに納得できる。」



「この世界のルールを作ってる神様が用意した罠なんて簡単には越えられる訳ない!私たちのやってることは全て無駄なの?」



「それは違う!クリアできる可能性を0%に設定することはファーレが嘘をついたことなる。必ずクリアする方法は用意されている。何重にも罠を張ってな。


そして、クリアされると思ってないからこそ、クリアされてしまうと対応は弱い筈なんだ!


そこに俺たちの逆転の目があると思ってるんだ!!」



「逆転の目?」



「そう、あの神様たちをギャフンと言わせる何かだ!!そう考えると楽しくならないか?神様たちが俺たちを苦しめるために全力で準備した罠を俺たちが全て蹴散らしてクリアする!それを見た神様たちの悔しがり様!超悔しがるだろうな!!そして俺はその様子を見てるだろう神様に独り言のように言ってやるんだ!


神の罠なんてこんなものか?俺にはまだ物足りないぜ!ってな♪」



「神様を挑発してどうすんのよ?直接天罰を下されるわよ!?」



「トリス、そこはどうなんだ?地上の人間に神様が直接天罰を与えたりできるのか?」



「それは不可能だな!神であることを捨てる覚悟ならば、一撃くらいは放てるかもしれんが、おそらくその瞬間存在そのものが消滅してしまうことだろう。


神とは見守ることが仕事なのだ!できることは間接的に世界に干渉することしかできないな。それすらも多用することはできないな。」



「ほらな!大抵のラノベでも神様の立場なんてそんなものなんだ!!俺はあんな神様たちを喜ばしてやるつもりなんててんでないからな!」



「それは私だってそうよ!!」



「ふはははは!お前たちはいいな!成り行きでお前たちと行動することにしたが、今は心の底から共に行動できてよかったと思えるぞ!!あんな神など我が主の封印さえ解けば必ず神の座から引きずり落としてみせるわ!!!」



「それいい!その方向でいこう!!」



「オリオン、どういうこと?」



「さっき言っただろ?あの神様たちをギャフンと言わせる何かだ!トリスの主の神様を復活させて、俺たちを騙そうとしたあの神様たちを神の地位から引きずり落としてやるんだ!!俺たちもざまぁできるし、この世界にとっても邪神が治めているよりもその方がずっといいと思うんだ!!」



「そうね。でもちょっと気が早いけどね!まずは200万ポイント貯めるとこからね。」



「まあな。明日からもGP集めを頑張ろう!」



俺たちは取り敢えず先のことは置いておき、目の前の問題に全力を注ぐことにしたのであった。


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