Act.39:精霊王の協力


「なるほど、そういう事でしたか」


 ティターニアにわたしたちが何故この妖精世界に来たのかを話す。既に知っているような気はするけど、念の為だ。


「私と精霊の力があれば、再生は出来ると思いますが範囲が広すぎますね……流石に世界を再生させるのはいくら魔力があっても足りませんね」

「ティターニアでもやっぱり?」

「規模が違いすぎますしね。ただ一気に全部は無理ですが、所々を再生させることは出来ると思います。しかし問題は魔物の存在ですね。再生させても魔物にまた侵されては振出しに戻ってしまいます。結界を張る事も必要になりますね……全部私がやるとなると中々難しいですね」


 流石に精霊王でも世界全体を再生させるのは無理か。いや出来たらそれはもうやばいけど……神様ですか? 的な感じになる。


 範囲が広いから一気には無理。

 だけど、所々に点々として再生させる事は可能。それを繰り返せば、どれくらいかかるかは不明だが最終的のは妖精世界を再生させられるだろう。

 しかし、問題は魔物の存在だ。精霊の森はティターニアの張った結界が守っているから魔物が寄ってこない。その結界がない場合、どうなるか? 

 魔物は魔力に惹かれて寄って来るだろう。そして魔力を体に蓄え、成長してしまう恐れがある。木とか魔力が復活しても魔物に奪われてはどうしようもない。


 なので、結界を張る必要がある。

 しかし、流石にそれら全ての結界をティターニアが維持する事は不可能。反対に言えば、結界が張れれば何とかなるかもしれないとも言える。


「後は今の精霊の森のように、精霊に結界を維持してもらうと言う事も可能ですが、彼女たちはさっきも言ったと思いますが、魔力の薄い外に行くのは危険です。彼女たちの頼む場合は、この精霊の森を起点に広げていくしかないですね」

「精霊……」

「精霊に頼むにしても、無限ではありませんし何時何処で何が起きるかもわかりませんし、出来れば頼りたくはない所ですね。まだ回復しきってない精霊も居るでしょうし」


 ティターニアが協力してくれるとは言え、流石に精霊をそこまで酷使したくはない。だけど、どうすれば良いだろうか?


「思ったんだけれど」

「ん。ブラックリリー?」


 何かないかと考えていると、ブラックリリーが話に入って来る。


「結界っての動力と言うか、元って魔力なのよね?」

「そうですよ。魔力を使って形成しています」

「それなら、あれが使えないかしら」

「あれ……? あ、魔石」

「そうよそれよ。存在忘れてたとは言わせないわよ」

「忘れてはないけど……」

「魔石は魔力を持っているのだから、結界張るための代用品として使えると思うけれど」

「確かに」


 魔石の存在を忘れていたと言う訳ではないが、思い浮かばなかった。これは普通に思い浮かぶはずだろわたしよ。


「でも、かなりの数が必要になるよね……」

「そうだけど、居るじゃない。この世界にも」

「……あ、確かに」


 魔石の取得元は魔物。

 少なくとも地球では、それくらいしか入手手段はない。その活用方法としては、魔力の回復や一時的なブースト等があり、他にも魔力を動力源に動く道具とかにも使える。地球で言うなら開発中の魔導砲だ。


 この妖精世界にも魔物は居る。それならば、奴らを倒せば手に入るのではないか? しかもここは、荒廃した大地しかないから魔法も使いたい放題。

 いや流石に折角再生した精霊の森に影響を与えるのはNGだが。


「ティターニア。これって結界展開に使えたりする?」


 わたしは杖の中からそこそこ、高品質な魔石を一つ取り出してティターニアに渡す。


「魔石、ですか。そう言えば妖精世界では魔石が主な動力源でしたね」

「そうですね。魔石は様々な所で使われてました。むしろ、魔石がない生活は考えられませんでしたね。もちろん、限りもあるので頼り切りにはならないように私たちも色々と研究開発していましたが」


 世界中に魔力があった妖精世界では、魔石と言うのはその辺に落ちている石のような感覚だったみたい。鉱石からも取れたし、自然の中からも取れたらしい。


「確かに……魔石で維持する事は出来るかもしれませんね。ただこれって消耗品ですよね? 定期的に補充もしないといけませんね……まあ、そこは精霊のお願いしますか」

「後は魔石の供給源だね。この妖精世界に居る魔物は地球よりも弱い可能性があるから、魔石の品質も低い可能性がある。流石にこの世界だけで自給するのは無理だろうね」

「何か話が進んでいるわね……」

「ん。ブラックリリーのお手柄」

「そんな大した事ではないわよ」


 何処か照れくさそうにそういうブラックリリーを見て、わたしはちょっと笑う。


「供給源ねえ……地球から持ってくる? でも地球の魔物も減ってるし、安定はしないわよね」

「ん」


 魔石と言えば……魔法省が管理していたよね。

 魔法省に協力してもらうか? でも、妖精世界の存在何て信じるだろうか? 職員は別として、ホワイトリリーやブルーサファイアは信じてくれるかもしれないけど。後は茜もか?

 ただそうするには、こちらの事も明かす必要があるし……恐らく魔法少女の誰かが付くと思うからわたしの住所がバレるな。

 それに、魔石の用途は魔法少女や魔導砲の方に回っているし、仮に妖精世界の事を信じたとしても、どうなるかは分からない。


 わたしが持ってる魔石は結構あるけど、それで持つかは謎。と言うより、仮に全部使って大丈夫だとしても、魔石が内包する魔力がなくなったら、新しい魔石に交換する必要がある。


 やっぱり相当数の数が必要になるよね。


 魔石は知っての通り使い捨てであり、内包する魔力を使い切るとどういう原理か分からないが石自体が消滅する。なので、魔石に魔力を入れ直すとかそう言うのは出来ないのである。


「ん。……魔法の瓶マギア・フラスコは使えない?」

「そう言えばそれもあったわね。あれなら魔力を入れれば良いだけだし」


 ゲートを使う為に魔力を貯めていた魔法の瓶マギア・フラスコ……ララが出したのはわたし三人とあと少しの魔力を貯められる程の容量だし、かなり長持ちが期待できそうだが。


「ボクが持っている魔法の瓶マギア・フラスコは、特殊、大、中、小の4つだけど、それじゃ足りないよね」


 うーん。

 結界を張らずに再生させるしかないだろうか。魔物については、わたしたちが始末すれば良いし……何処まで対応できるかは分からないが。

 それに、妖精世界の魔物はどういう風に出現するんだ? 地球みたいにやはり突発的なのだろうか。倒す存在が居ないから、突発的に発生しても減らないだろうから、普通に周りに徘徊しているのも納得できるし。


「取り合えず、やれる所まではやってみますか。それに結界がない方が良い場合もあります」

「?」

「結界は結界内の魔力が漏れるのも防ぎます。つまり、外に折角できた魔力が流れないと言う事です。魔力は妖精世界の植物にも多大な影響を与えますし、外へ漏らしてしまった方がもしかすると、早く再生できるかもしれませんよ。魔物の存在は厄介ですが……」

「ん。確かに」


 ティターニアの話に頷く。


「妖精世界の植物は、既に昔から魔力を生み出すものとなってますからね。魔力が延々と世界中に循環していたのも植物が生みだしていたからですし」


 続けてラビが言葉を続ける。

 そっか。妖精世界の植物は地球よりも前から、魔力を生み出すようになってるんだしそれはそうか。地球で言う空気のような存在だしね、妖精世界では。


 地球も一気に魔力が流れ込んで来たから、植物が一気に変化と言うか進化? したんだし。もし、一気に流れ込んで来なかったら地球全体に魔力は回るにはかなりの月日がかかっていたと思う。

 むしろ、回らなかった可能性すらある。


「なので、むしろ結界で封じ込めてしまうよりも、放出した方が効果はありそうですね。とはいえ、その場合だとやはり魔物ですね。魔物を倒してから再生させても、また出現するかもしれないですし、どうしますかね」

「ん。他にも魔物が魔力を蓄えたら強くなる」

「そうねえ……」


 さて、どう動くべきか。




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