Act.40:蒼からのメッセージ


「ん? CONNECTに通知が来てる」


 妖精世界で精霊王と会い、森の再生を目撃しこれからの事を考えていたが、現状、やれるだけやると言う事だけしか言えないで一度解散と言う事になった。時間も時間だったしね。


 何かティターニアがこっちの世界に来たがっていたけど、今はやめてくれと言う事で抑えたけど、多分諦めてないよあれ。

 地球にも魔力があるから恐らく、精霊もティターニアも普通に来れるだろうけど。


 そんな訳で自宅に居るのだが、CONNECTに通知が来ていた。魔法少女の状態だと、このデバイスはステッキなのが基本なので、通知とかが来ても分からない。スマホ型になれるけど、わざわざそれにする必要はないし……魔法少女の状態の時は。


「相手は……蒼?」


 送信者を見てみると、蒼である事が分かる。丁度今から一時間くらい前のようだ。


『いきなりすみません。今度の土曜日に二人で会えないですか?』


 ただその一文だけのメッセージが残されていた。土曜日か……直前で何もなければ、問題はないが……何故二人?


「……」


 そこで思い浮かぶのが、この前の雪菜の告白。

 わたしは答えられずに居たが、雪菜は待ってると言ってた。だから、わたしは答えなければならないのに。


 いや、雪菜の告白の返事も大事だが、今考えるのはこの蒼の呼び出しと言うか、会えないかと言うメッセージだ。

 色川蒼……魔法少女ブルーサファイアの正体であり、ホワイトリリー同様魔法省茨城地域支部に所属する政府機関の魔法少女。


 そしてわたしに対して好意を持っているであろうもう一人。何か、あの大晦日の時からかは分からないけど、何かとは言えないけど変わっていると言うか、最初よりも違う印象になりつつある二人。


 主にホワイトリリーは本当に変わっていた。何か前よりもアグレッシブ? と言えば良いのか……積極的になっている。

 そして件の告白。


「……」


 妖精世界の事ばかりでは駄目だな。こちらに向き合わねば……でも、わたしは一体どうしたいのだろうか?


 おっと、話が逸れてしまった。今の本題は蒼からのメッセージである。あえて二人で、と書いている所を見ると、まあそのままなんだろうね。


『土曜日は大丈夫だと思う。時間は?』


 蒼のメッセージにわたしはそう返信する。

 特に特別な予定はないし、急用的な何かがなければ問題ない。わたしが返信して3分くらい経過した所で、メッセージに既読が付く。


 ふと思う。

 そう言えば、雪菜とは告白もされたし、話したりしたけど蒼とはあまり会話出来てないな。この前の、香菜も行った集まりで少し話した程度だ。

 あーでも、それ言うと雪菜ともあまり話してないのか。告白の時くらいしか。


 最近は、香菜とラビ、ララとしかあまり交流してないなと思う。目的が目的なので、仕方がないんだけど魔法省の魔法少女とも少しは仲良くしたい所。

 特に、わたしに深く関わりのある雪菜と蒼とは。


 別に魔法省の魔法少女たちを蔑ろにしている訳ではなく、ぶっちゃけ交流があるのがホワイトリリーとブルーサファイアばかりだから、他の子が薄いと言うか……。

 でも、嫌いと言う訳ではない。そこまでの交流はないけど、出会う事自体は、魔物を倒した後や向かう途中とかにちょくちょくあったから、雰囲気程度は何となく分かる程度。

 雰囲気もその時その時で変わるようなものだし、精度は期待できないかな。

 もちろん、全員と会った訳ではないが……ホワイトリリーとブルーサファイアを除いて28人……わたしが会った事あるのは20人くらいだろうか?


「ん」


 正確な数は分からない。

 以前は以前で、問題が別にあったからそれもそれで仕方がなかった。わたしは極力、他の魔法少女と会うのを避けていたから。


「蒼と話せる良い機会かもしれない」


 まあ、蒼がなんで二人で会わないかと言ってきたのは分からないけど、取り合えず彼女と話せる機会が出来るのは良いと思う。


『良かったです。14時頃はどうですか? もちろん、そちらの都合が良ければ、ですが』


 14時頃か……別に午前中とかでも良いのだが、やっぱり皆午前中は忙しいのかもしれないなあ。予定はないので大丈夫と返しておく。


『ありがとうございます。また土曜日に』

『うん』


 それだけ送り、既読が付いたのを確認した後、CONNECTのアプリを閉じる。すると当たり前だが、ホーム画面に戻る。


「今度はブルーサファイアもとい、蒼からですか」

「ん。何だろう?」

「それは実際会わないと分からないですけど。二人でって書いてある所が気になりますね」

「やっぱり?」

「メッセージ自体は別に可笑しくないですけどね」

「だね」


 気にした所で、どうしようもないので考えるのはやめておこうと思う。何かわたしに用事がある、だからこうやって誘ってきたと言うか、聞いてきたと言う事だ。


「それで、これからどうしましょうか」

「ん。妖精世界の再生っていうのはやっぱり長い道のりだね」

「そうですね。まさか精霊王が出て来るとは思いませんでしたが……」

「ん。でも精霊王が仲間? になってくれたからかなり前進したと思う」


 彼女……ティターニアは精霊王であるからその力は絶大。あの森をあっさりと再生させてしまった光景を見ればそれはもう明白。


「それはそうですが、気が気でありませんよ……」

「そう? 結構、話しやすかったけど」

「確かに話しやすい雰囲気ですけど、やっぱりティタ様からはかなりの力を感じます。どうしてもそれに気圧されてしまいますよ……」


 ラビの言う通り、ティターニアからはとてつもない力を持っているのは確かだけど正直、そこまで気圧されるような感じはしてない。ティターニアが力を抑えている可能性もあるけど。

 うーん、時々見せる子供っぽさが、打ち消してしまっているのかな。


 身長とかはあの時も言ったように、ブラックリリーよりほんの少しだけ高いくらい。ブラックリリーの方がわたしよりも微妙に身長があるので、ティターニアはわたしよりも高いって事になるけど。


 透き通るような水色の髪に、緑色のオーラのようなものがかかっている感じ。髪の長さは腰に届きそうなくらいだったかな。

 そして何より、一番気になったと言うか目立つのが金色と緑のオッドアイ。まず地球では見ないような色の組み合わせである。

 いやもしかすると、地球にも居るのかもしれないがわたしは見た事がない、それだけである。


 喋り方は何処か大人っぽさがあるのだが、時々子供っぽくもなる。


「ラビ。結界って地球でも使えるのかな?」

「どうでしょうね……ですが、結界の使い方が分かればもしかすると使えるかもしれませんね。生憎、私は知らないですが……」

「そっか。ティターニアに直接聞くしかないか。あれでも、妖精書庫には?」

「うーん、どうでしょうか。私が読んだ限りでは結界と言う名前の魔法はありません。まだ全部を読んだわけではありませんが」

「結界は魔法じゃないって事?」


 でも魔力を使って張っていたよね。

 あー……そうは言っても、魔力ってまだ100%解析されている訳ではないし、それに魔力を消費するのは魔法のみとは限らないか。

 精霊なら精霊だけが使える何かとかがあるかもしれないし。


「分かりませんね……やはり直接ティタ様に聞く以外はないかもしれませんね」


 そっかー……。

 もし結界が使えれば、地球も魔物が出現しても少しは安全になるのではないか? と思ったんだけど。あ、でも地球の魔物は突発的に出現するのは変わらないけど、倒す存在が居るから留まる事はあまりない。

 結界を張って、その結界内に魔物が出現した場合はどうなるんだろうか?


 そもそも結界って何なのだろうか? ティターニアが言うには魔物を退けるものらしいが、妖精世界に魔物は居なかったはずなので、魔物に対する魔法があるとは思えないんだけど。


 精霊だけが使える特殊な力とかなのかな。

 ……うん、考えても分かるはずもないので、今度ティターニアに聞いてみる事にしよう。


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