第48話 戻ってきた異母妹と
そのあと、私とエリカはなんてことない会話をした。
エヴェラルド様はエリカに振られてしまったことが相当ショックだったらしい。彼はとぼとぼと歩いて行ってしまう。
それに対し、エリカは「彼はそんなやわな人じゃないわ」と言っていた。……どうやら、エリカはエヴェラルド様のことをよく知っているらしい。
そのままの足でリスター家のお屋敷に戻れば、ちょうどギルバート様がエリカを捜そうと動き出そうとされていた時だった。なので、私がエリカを連れて帰ってきたのを見られて、ほっと胸をなでおろされる。
「……エリカ嬢、よかった」
ギルバート様のそのお言葉に、エリカが目を大きく見開くのがわかった。
それに、私もギルバート様のそのお言葉には驚いている。
「……ギルバート様」
私が少しジト目になりながら彼の名前を呼べば、彼は「……エリカ嬢が無事じゃなかったら、シェリルが悲しむだろう」とおっしゃって顔を背けられる。
「……そう、ですか」
「あぁ、俺はシェリル以外の女に興味はない」
堂々とそう発言されるギルバート様に対し、私は顔を真っ赤にしてしまう。
そんな私たちの姿を見て、エリカは肩をすくめながら「そういうの、二人きりの時にされた方が良いわよ」と言っていた。
「……本当に、バカみたいにラブラブなのね」
エリカはそんな言葉を告げてくる。バカなんて言われたら、普通ならば怒りだしたくなる。でも、私はエリカのその『バカ』という言葉が何よりの愛情表現に聞こえてしまった。
「……お義姉様」
そして、エリカが私に向き合ってくる。なので、私が彼女に視線を向ければ、彼女は「……本当に、ごめんなさい」と言って深々と頭を下げてきた。
「お義姉様に、無駄な心配をかけてしまったわ」
「……エリカ。無駄な心配だなんて言わないで」
そっと彼女の身体を抱きしめながらそう言えば、エリカは「……ふふっ、お義姉様ったら本当に泣き虫ね」と言葉をくれる。
「……泣いてなんて」
「嘘言わないで」
エリカのその言葉とほぼ同時に、私の頬に温かい涙が伝う。それに驚きながら目元を拭っていれば、エリカは「……でも、そんなお義姉様が大好きよ」と言葉をくれた。
「前も言ったけれど、私はここを出たら働く先を探して、アパートを借りて、暮らすわ」
「……うん」
「……だから、その」
彼女が何を言いたいのか。私にはわかった。だからこそ、私は「……たまには、お茶でもしましょうね」と笑みを浮かべて告げる。
「えぇ、嬉しいわ」
そう言って笑ったエリカの表情は、何やら憑き物なのが全て落ちたかのようなほどに清々しくきれいなもの。その表情を見ていると、私も嬉しくなってしまう。
「さぁて」
私とエリカがどちらともなく笑い合っていると、後ろからロザリア様のそんな声が聞こえてきた。それに驚いて彼女に視線を向けると、「……どうせですし、女子会しましょうか」と突拍子もない提案をしてくる。
「……え?」
「エリカ様が出て行く前に、女子会しましょう!」
いや、そうなった経緯を知りたいのだけれど……?
そう思って私が頬を引きつらせていれば、クレアが「いいですね!」とニコニコと笑って言う。
「マリンも、いいと思うわよね?」
「……え? ま、まぁね」
「よし、じゃあ決まりです!」
肝心の私たちの意見は無視して、ロザリア様はそう言われた。
「……おい、女子会って」
「あっ、旦那様はダメですよ。女子会に男性は入れませんから」
ギルバート様に冷たくそう言ってのけて、ロザリア様は「さぁさぁ、行きましょう!」と言ってくる。
私は彼女に背中を押されながらも、ほんの少し笑ってしまった。
「……なんていうか、強引ね」
エリカが肩をすくめながらそう言う。それに内心で同意しつつも、たまに彼女の強引さに助けられていると思うのだ。
……それが、ロザリア様のいいところ。
そんなことを思いながら――私たちは、この日ロザリア様の女子会という名の愚痴大会に付き合わされることになったのだった。
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