第8話 いじめ

 新学期から、しばらくたったある日のこと、僕は翔と一緒に下校していたのだが、

「ヤバい、忘れ物した。翔、先帰ってて」

「ああ、わかった。またな。」


 宿題のプリント、机の中に入れたままだった。ついてないなぁ。


 僕は忘れものを取りに学校へと戻った。


 そして、学校に到着し、校内へと入る。

やっぱりみんな帰ってるから、静かだなぁ。

階段を登り、教室に到着した。

すると、そこで僕が見たのは、、、


「あんたさぁ、授業中トントントントンうるさいんだけど」

「ほんとほんと」

神楽さんが立花さんたちに囲まれていた。


「でも、これが私のノートで」

「はぁ?知らねぇよ!」

ドンッ!

立花さんは神楽さんの机を叩いた。


「あと、翔くんにも話しかけてもらって。

いいよね、障害者は。優しくしてもらえるから」

「別に織部くんはそんなつもりじゃないと思うよ」

「はぁ、そうに決まってんでしょ!

翔くんは、優しいんだから」

「みんなに優しいよ、だから」

「口答えしないでくれる?

あぁーもう、イライラした!

凛、そこのバッグとって」

神楽さんの机にかかっているバッグがとられた。

「何するの?やめて」

「ふふ、彩。こいつ押さえてて」

そして、立花さんはバッグの中から花の写真を取り出した。

「よーく、音聞いててね」

ビリッ、ビリッ、ビリビリ。

彼女は、その写真を破き始めた。

ハハッ、ハハハッ。

「何するの!ひどい」

「あんたがいけないのよ」

その後も、写真は破かれ続けた。


 一部始終を見ていた僕は、立ち去ろうと思った。だって、僕は助けるようなキャラじゃないから。翔ならこういうとき、きっと助けるんだろうな。


「なんで、私がこんな」

ポロッ、ポロポロ。

神楽さんは泣いていた。

そうだ。なんでだ。

なんでいつも、自分だけ。翔より劣っていて。

彼女の気持ちは、僕がいつも抱いている劣等感を思い出させた。そう、なんでなんだ。悪いのはあいつらじゃないか!


「おい、やめろ!」

彼女たちは、びっくりしていた。

神楽さんは泣いているままだ。

「何?かばう気?」

「ああ、どう考えても立花さんたちが悪いだろ」

「こいつが翔くんに媚び売るからいけないのよ」

「そんなことしてないだろ!

もしかして、嫉妬してんの?」

「ち、ちがうわよ。

もういい、凛、彩行くわよ」

そう言って彼女たちは、教室を出て行った。


「これはひどい」

僕は、落ちている写真の破片を拾い集めた。

すると、神楽さんも同じく写真を拾い始めた。

「ありがとう、助けてくれて」

「いや、あれはひどい。

てか、彼女たちってあんな感じなんだね」

「女子ってそういうもんよ」

「そうなのか」

僕は、ここで初めて彼女とまともな会話をした気がする。


「あっ、そういえばこのひまわりって」

僕が見つけたのは、

この前見たひまわりの写真だ。

「あっ、それ私の家の近くの公園で撮ったの。その写真一番お気に入りだったんだけど。それも破かれてる?」

「うん。でも大丈夫大丈夫!

これを、テープで貼り合わせれば、、、」

「いいよ、いいよ。また、写真撮りに行く楽しみが増えたし」

彼女は、にっこり笑ってそう言った。


その笑顔につられたのか

「ねぇ、実は僕もその公園近所なんだ。

だからさ、一緒にいってもいい?」

気づいたら、そんな言葉が口から出ていた。


「あっ、そうなんだ。もちろんいいよ。」

「やった、ありがと」

「てか家どの辺?」

「実は、神楽さんの家の隣」

「ええっ、そうなの!もっと早く教えてよ」

「ふふっ、ごめん。なかなか話すタイミングなくて」

「さっきの公園のことだけど、今週の日曜日空いてる?」

「ああ、大丈夫」

「じゃあその日ね!」

こうして僕は、彼女と公園に行く約束をした。




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点字のラブレター 藤崎莉々 @racherry

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