第2話 転校生

「よし、ついたついた」

「ここが今日から俺らの教室かぁ」

「あっ、黒板に座席表貼ってあるよ」

「どれどれ」

 そして、二人で座席表を確認する。

「僕は朝野だから、やっぱり一番前だな」

 これが、朝野という名字に下された運命だ

「俺はお前と同じ列の一番後ろだ」

 翔はいわゆる、アニメの主人公がよく座っている席だ。

 確認し終わったあと、各自座席に着く。

顔見知りもいるけど、ほとんど初対面だな。

やっぱり部活入っておけばよかったかな。

そう、僕は部活動に所属していない。

翔はサッカー部に所属しているが、僕は入りたい部活動がなく、帰宅部ということになった。

やはり、部活動の縁は強く、もう既にグループがちらほらできている。

そんなことを考えていると、先生が教室に入ってきた。


「今日から皆さんの担任になります。

新任の綾瀬奏あやせかなでです。」

「やった、美人先生きたー」

「えっ、めっちゃ優しそう」

 クラスの何人かが声を上げる。

確かに先生は美人だ。だけど、新任の先生がいきなり担任って大丈夫かな。不安の方が大きい。

「えーっと、早速ですが皆さんのクラスに転校生が来てくれました」

「えー、やったー」

「男子?女子?」

「朝野くんの隣の席、一つ空いているでしょ。そこに座るからね」

 急に名前を呼ばれてびっくりしたが、確かに席が一つ空いている。新学期から欠席だなんて可哀想だと思っていたが、そういうことか。

「あっ、椅子引いといてほしい」

 椅子を引いとく?転校生に対して、好待遇だな。もしやお嬢様的な人が来るのかな。

「ちょっと、待っててね」

 言われた通り待っていると、

「そう、こっちよ。そのまままっすぐ。

はい、ここで止まって。こっち向いて」

 先生に手を引かれて歩いている転校生は、女子生徒だった。だが、目がおかしい。焦点が合っていない。もしかして、目が見えないとか。

「じゃあ、自己紹介してね」

「はい。はじめまして、転校生の神楽向葵かぐらひまりといいます。私は、生まれつき目が見えないのですが、皆さんと仲良くしていきたいと思っているので、よろしくお願いします」

「じゃあ、席はこっち。ここ座って」

 先生がまた手を引く。僕も椅子の引きを彼女の身体に合わせて調整する。そして、彼女はゆっくりと席に座った。

「ありがとうございます」

 目が見えない人って不便そうだと思っていたが、実際に会ってみると、やっぱり大変そうに見えた。

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