第3話恭子、春花のお引っ越し

雲一つ無い晴天。お引っ越し日和♪


いそいそと荷物を箱に詰める。

母からは沢山の荷物を月城邸に運び入れるのは、ご迷惑だから要らない物は処分しましょう。と話され家具、家電やあまり着ていない服等はリサイクルに出した。

お陰で荷造りはスムーズだ。


1時間後、業者の方が荷物を運びにやって来た。

業者

「こんにちはー!『白猫たける』です。」


青色の繋ぎを着た引っ越し屋さんを母が招き入れ、慣れた手つきで荷物をトラックに積んで行く。

春花も邪魔にならない様に手伝いをする。


「白猫さんは丁寧で仕事が早いって評判だから頼んでよかったわ~。」


業者

「いえ、ありがとうございます!

これでお荷物は全部でしょうか?」


母「はい。終わりです。」


業者

「ご処分なさりたい物とかはございませんか?」


母「いえ、大丈夫です。有りません。」


業者

「では、お届け先のご住所はこちらでお間違いありませんか?

なければこちらにサインをお願いします。」


母が書類を確認し、サインをした。


業者

「では、お届け先でまた宜しくお願いします。」


「はい。こちらこそ、宜しくお願いします」


業者はトラックに乗り込むと出発した。

母は部屋を見て回り、最後の確認をしてブレーカーを下げた。

扉に鍵を閉めて「さぁ、行きましょうか」と笑顔を向けた。



母が運転するスポーツカーの助手席で、どんな生活が待っているのかを想像して緊張していた。

「今日、斗真さんと悠さんはお仕事で家に居ないらしいの。

秀二さんは私達の為に午後からお仕事を切り上げて、お家で家政婦さんと一緒に出迎えて下さるわ。

貴方の部屋も用意して早く一緒に住みたいと、おっしゃっていたのよ。

だから、何も心配する事は無いわ。」


緊張を解かすように柔らかく話しかける。


春花

「うん。そうなんだ。

とても良い人だね、僕も早く打ち解けれると良いんだけど。」


「大丈夫よ。

お付き合いしている時も一番に貴方の事を気に掛けて下さっていたわ。

守りたいって、将来の夢があるなら手助け出来ればって嬉しそうに話していたわ。」


春花「うん。…」


春花の不安の原因は義理父ではない。

年の離れた義理兄だ。

どんな会話をすればいいのか分からない。

しかも、義理父譲りの甘いマスク。

目が合うだけで言葉に詰まり恥じらいを感じているのを見られるのが嫌なのだ。


心の中で深く、ため息をついた…。


引っ越し業者と同じタイミングで自分達も着いた。

レンガ調のスタンディングの外壁に白で統一された窓。

家の廻りは高い柵で囲われている。

奥には庭師が定期的に手入れしたであろう、立派な薔薇の庭が広がっていた。


『えっ、、大きいお家…。』


観音開きの重厚な扉が開いて義理父が出迎える。

少し下がって女性の家政婦さんが続く。


義理父

「恭子、春花君いらっしゃい。

さぁ、中に入って。」


案内され中に入る。


「今日から息子共々宜しくお願い致します

秀二さんとこれから、一緒に過ごせるのね。

とても幸せだわ~///」


義理父

「ずっと待ち望んでいたよ。

恭子、幸せにするから…。」


優しく母を抱き締め、熱ぽく囁いた…。



『あの〰️息子が目の前に居るんですけど、僕はこの状況下、どうしたら良いのでしょうか?』


義理父

「春花君、家族になったんだし何も遠慮は要らないよ。

ここはもう、君の家だ。

2階へ上がって直ぐに3つの扉がある真ん中の扉が、春花君の部屋だよ。

家具はこちらで新調しておいたから、自由に使って貰って構わない。

それから、お世話をして頂いている家政婦の鈴木さんに分からない事があれば、何でも聞くといいよ。」


家政婦(鈴木)

「家政婦の鈴木です。

分からない事やお申し付けが合ったら、ご遠慮なさらずお尋ねくださいね。」


家政婦の鈴木は物腰が柔らかそうな話しやすい印象の女性だ。

月城邸の付き合いは長く家族からとても信頼されている。

仕事は主に掃除と食事の支度。

ちょっとした用事ならお願いしても構わないと言う家政婦派遣会社との契約内容だ。


「春花です。これから、お世話になります。宜しくお願いします。」


笑顔で軽く会釈をした。



引っ越し業者が丁寧な仕事ぶりで段取りよく指示された場所へ荷物を運んで行く。

玄関口で様子を見守っていると話し掛けられた。


引っ越し業者

「君の荷物は何処に運んだら良いかな?」


春花「はい。案内しますね。」


階段を上がり、義理父が用意してくれた部屋のドアを開ける。

入り口付近へ段ボール箱を積んで貰った。


引っ越し業者

「君の荷物はこれで終わりかな?」


春花

「はい。そうです。有難うございました。」


十二帖程の広めの子供部屋は、水色に金の模様か配(あしら)われた壁紙。

窓際には、壁紙に合わせたスタイリッシュな机と椅子のセットが。

壁側にセミダブルのベッド。

反対側には、三帖のウォークインクローゼット。

中性的な雰囲気を直ぐ、気に入ったのだ。


『夕食までまだ時間はあるし、母さん達はどうせ、下でイチャついているだろうし…。

よし!荷物を片付けてしまおう。』


辺りが薄暗くなる夕暮れ時。

ドアをノックする。


母「春花?」


春花「…。」


母「入るわよ?」


ドアを開け、中に入る。

窓から射し込む夕暮れの光りに包まれた部屋。

荷物の片付けを終え、整理された辺りを見渡す。

壁際のベッドで「スースー」と寝息を立てて横たわる愛しい我が息子…。

縁に座り、優しく息子の髪をかきあげ静かに起こす。


母「春花…起きなさい…。夕食の時間よ。」


春花「あ…うん。今、行くよ…。」


ヨロヨロと立ち上がり、母に促されてついていく。

ダイニングテーブルには鈴木さんが作ってくれた美味しそうな料理が彩り良く並べられている。


義理父

「さぁ春花君、座って。一緒に食べよう。

鈴木さんの料理は旨いぞ。」


母「温かいうちに頂きましょう。」


義理父・母・春花「頂きます。」


和やかな食卓風景ー。

幸せな2人を見て次第に緊張が解かれて行く。

こんな穏やかな日常が続くのだと目を細め、見つめていた…。



母「春花、聞いてる?」


春花「え?何?母さん。」


ずっとラブラブな2人を前にしていたもんだから、会話はあまり入ってこず黙々と食事をしていた。


「あのね、秀二さんと明日から一週間、新婚旅行に行ってくるから。」


春花「え?そんな、急に?」


「急じゃないわよ。いやねぇ。

前に話したじゃない、引っ越しをしたら新婚旅行に行くから、斗真さんと悠さんに貴方の事をお願いしてあるからねって。」


春花はフリーズしている。

母は全く気にする様子は見せずルンルン気分で話を続ける。


「ちゃんとお土産は忘れずに買って来るから安心してね♪」


義理父

「鈴木さんは基本、土日は休みだから、お腹が空いたら冷蔵庫にある物は好きに食べていいから。

斗真と悠には、春花君がまだこの家に慣れてないから、なるべく一緒に居てあげるように。と伝えておいたよ。

お土産、期待してて。(ウィンク♪)」


『お土産の心配なんかしてないよー。

緊張するから居てくれない方が良いのにー!』

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