あれをを触りたい

 今も昔も、女の人の体は勝手に、気安く触ってはいけないと決まっている。特に胸やお尻や。


 今日も泰造は悩んでいる。

 なぜ、女は男の体を「胸筋すごーい」や「腹筋すごーい」などと言って気軽に触れるのに、男が少し女の胸に触れるだけで痴漢扱い。最悪の場合、お金を取られたり警察沙汰になったりもする。

 「なんでなんだよ。少し触れたくらいいいじゃないか」

 そんな不満を抱きながら布団に入り、朝を迎えた」


 いつものように朝の満員電車に乗り込んだ。相変わらず席は空いてるはずもなく、右手で吊革を掴んだ。数分走ると、急に電車が揺れた。すると隣の女性のお尻が左手におもいっきり、ちゃんと当たってしまった。リュック派の俺の左手は不運にも自由になっていたのだ。

 ・・やばい、きゃー!なんて叫ばれたら終わりだ。騒がれる前に謝ろう。

 「あの、お尻に手が当たっちゃいました。わざとじゃないんです。ごめんなさい」

 「あ、はい。大丈夫ですよ。珍しい人ですね。そんなことで謝るなんて」

 ・・え、そんなこと・・珍しいって。お宅こそ珍しい人でっせ。でもよかった、珍しい人で。

 会社に着き、自分のデスクに座り仕事を始めた。

 昼休憩、フードコートで昼食を食べていると、女性社員たちが筋トレの話で盛り上がっているのが聞こえてきた。俺自身、高校、大学とラグビーをやっていたから筋肉トレは好きで、その話に聞き入っていた。

 「最近ベンチプレスのMAX更新してさー。40キロ上がるようになったんだよね。触ってみてよ、胸筋すごいでしょ?」

 ・・40キロか、女にしてはけっこうやるじゃないか。てか俺も触りてえ。

 「ねえ、泰造くん筋トレ好きなんだよね?私の胸筋触ってみてよ」

 は?何を言っているんだ?

 「いや、男にそんな気軽に胸触れって」

 「え?なんで?泰造くん胸筋触られるの嫌なの?」

 「いやいや、男と女では物の価値が違うだろうよ」

 「なに価値って。うける。いいから早く」

 ・・いいんだな?触るぞ?お前から言ってきたんだからな?いくぞ。

 ・・ぷにゅ。

 ・・や、やわらかい。

 「ちーがーう、もっと押して」

 ・・ぷにゅう。

 「お、おお、確かに胸筋だ。すごいな」

 「でっしょー」

 最高。人生はつおっぱいがこんな簡単に叶うなんて。


・・ピピピ、ピピピ・・

 ・・ん、朝…。なんだ夢かよ。

 悔しい。またしても俺の願いは夢止まり。

 「おっぱいってあんなにやわらかいんだ」

 夢なのに、リアルな感触が右手人差し指に残っていた。

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泰造はしたい @taitenyu

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