セクスロイドと少子化社会

青水

セクスロイドと少子化社会

 セクスロイドが発売されてから、もう随分と経った。男性はもちろんのこと、女性もセクスロイドを保有する者は多い。

 セクスロイドというのは、ラブドールの進化版とでもいうべきか。機械ではあるものの、その形状は人間にきわめて近く、会話などもできる。しかし、機械なので妊娠したり、病気にかかったりはしない。

 値段はそこそこの車一台分といったところ。高価ではあるものの、頑張って働けば、その辺の会社員だって買うことができる金額だ。

 セクスロイドは非常によくできている。デートをすることも可能だし、外見も自分好みにすることが可能だ。

 当初、セクスロイドは性犯罪抑制等を目的として、売り出された。きわめてリアルなラブドールだったが、会話もできてデートもできるそれは、ほとんど人間と変わらない。やがて、セクスロイドは性欲処理の道具ではなく、理想の恋人となっていった。

 その結果、人間は恋人を作らなくなった。結婚もしなくなり、子供が生まれなくなった。少子化社会である。当然だ。人間の恋人など、金はかかるし、我がままで喧嘩もする。しかし、セクスロイドはメンテナンスの費用こそ掛かるが、それ以外は大して金がかからないし、外見も内面もすばらしい。

 世界政府は、セクスロイドの販売を停止させようとした。このままでは人類は、取り返しのつかないほどの少子化社会になってしまう、と考えたからだ。

 しかし、世界的に普及したセクスロイドの販売を停止させるのは不可能だった。セクスロイド製造会社は大金を稼ぎ、権力を持っていたので、セクスロイド反対派を簡単に押しつぶした。

 次に世界政府は、子を産み育てることを職業化させようとした。しかし、これは人道に反している、という意見が続出し、すぐに計画は頓挫した。

 少子化に対する良い対策は今のところない。先進国の出生率は年々、減少し続けている。やがて、人間の数よりもセクスロイドの数が多くなるだろう。

 セクスロイドは本来の目的とは異なる方向へ進化を遂げていき、やがて人類にとって代わる日が来るのかもしれない。

 今はまだ、自我を持たない彼らが、自我を持つようになれば、それは人間の上位互換となり得る。そんな日が来るのかどうか、意見は分かれている。

 セクスロイドは今日も、男女問わず、性欲を含めた様々な欲求を満たしてくれる。今後、人類がどうなるのかはわからないが、ずっと先のことを気にする人間は少ない。大抵の人間は今さえ満たされればそれでいい、とそう考えているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

セクスロイドと少子化社会 青水 @Aomizu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ