第14話 謎なまま迎えたエピローグ
晴れて私は、悪役令嬢ヴィオラのルートを完遂?…したのかは、分からないけど。
とにもかくにも。視界の左上にセーブボタンが出たので、待ってましたとばかりに、間髪入れずにセーブを選択し、やっとのことで恋宮(こいみや)からログアウトできたのだった。
***
ゆっくりとヘルメットを外せば、恋宮と同期していた視界が現実へと切り替わり、ゲームセンター内に流れる蛍の光が聞こえて慌てて席を立った。
平静を装い、店内を出た。
だけど私の心臓は、あれからずっとバクバクと激しく打っている。
もしも、あの一瞬を見逃してたら、私はどうなっていたんだろう…。
あそこでボタンの出現を見落としてたり、押さなかったら…。
そう思うと、ログアウト出来たのは奇跡に近い確率だと思った。
まだ、少しだけ、体の震えが残っている。
ぐるりと辺りを見回せば、視界に映るのは高層ビルにスクランブル交差点。
短く息を吸い込み、フゥ〜〜〜ッとゆっくり息を吐く。
行き交う人や車の往来に、ここまで安堵するとはね…。
(…うん。見慣れた景色だ。)
とりあえず助かった。良かった…。
ようやく落ち着いた私は、何度か来た事がある近くのカフェに入った。
入り口でコーヒーとスコーンを注文してトレイに乗せると、そのままいつも好んで座っている店内奥の席が空いていたから着いて、やっと色々と考える事が出来た。
ログアウトできるボタンが消えて、それから他のボタンも消えて、バーチャルゲーム(VRMMO)では有り得ない、嗅覚や触覚が体感できるようになって、最後は私の思考がゲームの進行に直結していたと思う。
…あの現象は一体何だったんだろう…。
それから、主人公クレフィから貰った『カード』と。
王子から手渡された日記に挟まってた『栞』。
精密な模様に添えられた文字は、どこかで見たことがあると思いながらスマホで調べると、どちらにも異なる“ルーン文字”が記されていたのが分かった。
恋宮の世界共通言語はフランス語だったから、きっとあの“ルーン文字”には、何か特別な意味がある筈なのだ。
───だけど。私はもう、ヴィオラでログインする勇気がない。
次にログインしたら、今度こそ出られなくなりそうだったから。
***
後日。私は会社の同僚から、どの攻略キャラがお薦めかを聞き、今度はちゃんと主人公目線でプレイしてみようと、恋宮へログインした。
色々と謎は残ったままだけど、これ以上ヴィオラのルートを進めるのは危険過ぎる。
そりゃあ、後ろ髪引かれるけどさ。
命あっての物種だもの。
私は迷いを振り切り、NEWゲームを選択し、次の画面表示まで進むと、主人公のデフォルト名『クレフィ』の名前を変えるところで、小さく息を吐いた。
ちらりと画面右下ギリギリ隅を見ると、やはり最初にプレイしたあれは見間違いではなかったのだと分かる。
やっぱり白い点は有ったから。
ただし。今見ている白い点は、前回はただの白い点だったのに、どう見ても、白い点の周囲が青く点滅しているのだ。
…ううう…何で点滅してるの…。
そんなことされたら、ものすご〜〜〜〜〜〜〜く、気になるじゃないか。
(…困った。…どうしよう…。)
私の胸の奥が、好奇心でウズウズしてるのが分かる。
そんな迷う私を誘うように、白い点がチカチカ青く点滅している。
うっ…めちゃくちゃ誘惑してくるんですけど・・・・。
(ううう…。)
──────ここで素直に押すか。
それとも、押さざるべきか────────。
Fin.
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