第10話 主人公と王子の裏話(本題)

結論から言うと、私(ヴィオラ)がのほほんと寝ている間に、事態は全て終息していた。


まず、私(ヴィオラ)が婚約破棄を言い渡された日に、この国へ侵入しているクレフィ暗殺を狙う刺客は全て捕らえ終えたらしく。


そこから一週間ほど掛けて『隣国のどの王子や王女がクレフィへ刺客を放ったかの証拠』も完璧に揃えた上で、隣国の王様へ内密に情報を提出したらしい。


なるほど。恋宮(こいみや)の王子や攻略キャラ達は無駄にハイスペックだって同僚が言ってたから、きっとそのハイスペックな能力を遺憾無く発揮して、裏稼業の刺客達の口を割らせたんだな。…怖。


それでクレフィを狙ったのは隣国の第二第三王子の双子と第三王女だった。


隣国の第一王子はとても病弱で王座は体力的に無理らしく、第二王女は他国の王様と政略結婚済。第四王子は末っ子という事もあり早々に王座を諦め、国王を支えるべく見聞を広げる為に他国へ留学中らしい。


そしてクレフィは、王様が結婚前に出来た子供なので、王妃との子ではないけれど、その出自が王族と認められれば、出生順により第一王女となる。


加えて、隣国では男女問わず『出生順』で王位継承権がある。


そう。クレフィの出自が王族と認められれば、王位継承権は第一位。そりゃあクレフィの命を狙いたくもなる訳だ。


まぁそれも、無駄にハイスペックなこの国の王子や攻略キャラ達と、更に上を行くこの国の国王陛下に悪事を暴かれた訳だから、隣国の第二第三王子の双子と第三王女の王位継承権が剥奪された事は自明の理と言える。


それで残る王位継承権の所持者は、病弱な第一王子と、他国へ留学中の第四王子と、王族と認められればクレフィとなる訳だが。


隣国の王様は、自分が愛したクレフィの母親から内密に時々届く手紙の中で、クレフィがこの国をとても愛していて、この国の発展に自分も力になりたいと夢を語り、伸び伸びと暮らしている様を知っていた。


だからこそ、隣国の王様はこの国で幸せに生きるクレフィを尊重し、隣国の玉座に縛り付けたくないと、今度はクレフィの王位継承権が第一位になる事を回避する為に、この国の国王陛下へ密書で相談を送った。


二日後に届いた密書を読んだ国王陛下は、「やはりこうなったか…」と予想していたらしく、私(ヴィオラ)と婚約破棄したばかりの王子と側仕えのクレフィを呼び出し、その場で事情を説明。


王子は半ばこうなる事を予想していたらしく、側仕えであるクレフィの礼儀作法が完璧である事や、性格は驕らず優しく機転も利き、高い学力も把握しており、総合評価的に異論無し。


クレフィは真相に始めは驚いていたけれど、愛するこの国をより良くしていける中心に、まさか自分が立てるだなんて…!と、目を輝かせて同意。(え〜と…クレフィよ…王子は二の次か…。)


双方の同意もあり、王子とクレフィは、その場で国王陛下の名の下に、婚約すっ飛ばしの婚姻となったそうな。


つまり、隣国の第二王女のように、この国の王子がクレフィと婚姻を結ぶ事で、クレフィの隣国での王位継承権を失くす事に落ち着いた訳だ。


そして私が眠っている間に、王子とクレフィの婚姻が発表され、二ヶ月前に王族貴族を招いての披露宴やら、王都を練り歩くお祝いパレードやら、国を上げての婚姻祭が終わり。(…何かすごい損した気分だ。クレフィの花嫁姿は絶対にエフェクトで花が飛んでてクソ可愛いヤツだし、王子や攻略キャラ達の正装とか絶対に何倍も格好良いヤツでしょ!…見たかった。参加したかった。体験したかったよぉおおお!!…ヴィオラの極限マイナス運がこんな所にまで…くうぅ〜〜〜っ!!…恋宮(こいみや)製作陣め…。)


それから王子とクレフィは攻略キャラ達を率いて一ヶ月間の新婚旅行。(ふと、その間に発生する彼等が受け持つ仕事が気になり、どうなったのか父に聞いたら「勿論、前倒しで処理済だ」って…マジか。無駄にハイスペックなのは主人公クレフィもだったか…怖。)


ついでに道中、隣国の第四王子へ接触し、隣国の現状を報告。王位継承権は第一王子にもあるが、実質的に次の玉座は健康な第四王子になると隣国の王様直筆の手紙と共に伝達。


第四王子は終始、呆気に取られていたそうな。ただまぁ、第四王子は王座への欲はないが、隣国を良くしたいと思う責任感があっての留学な訳だから、王子達が隣国の現状を伝え終わった時には、しっかりと「分かった」と頷いたらしい。


「これで隣国も安泰だろう」と父が言った。まぁ、収まるところに収まって何よりだ。


───そして私(ヴィオラ)が目覚めた今。


王子達はクレフィと共に既にこの国に帰国しており、自分達が留守中に滞りなく宮廷の業務を回してくれた同僚達へ、感謝を込めて新婚旅行の土産を配っているらしい。(へぇ〜。王子や攻略キャラ達の土産はともかく、クレフィは絶対に主人公スペックで土産を選ぶセンスも良い筈だ。何を配ってるんだろう…気になる…。)


父の話を聞きながら、心の中でそう思っていると、「───というのが事の顛末(てんまつ)だ。まぁ、明日ヴィオラへの土産を渡す為に、我が家へ王太子と王太子妃が来訪するから、他に聞きたい事があれば直接二人へ聞けばいいだろう。」と父に言われて、‥は?…となった。


To be continued…


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る