第6話 自ら死亡フラグを立てまくる
ここまでやる事なす事すべてが悪い方向へと変換されたら、もう乾いた笑いしか出てこないというものだ。
まぁね…。ヴィオラは恋宮(こいみや)の悪役だから、ね…。
本当はヴィオラは根っからの善人だけど、その真相と悪役という相反する設定を両立させるには、ヴィオラのこの『極限マイナス運』は、必要不可欠な要素なのだと思う。
だからこれは仕方ない…。うん…。仕方ないんだ…。・・・・・・・・・。
〜〜〜〜〜ぁああああっそれでも!!
それでもやっぱり何だか納得いかない、このもどかしさ!!(むきぃ〜っっ!)
だって、ヴィオラ目線でプレイ出来るシステムを作っといて、これが話の結末というのは、あんまりにもヴィオラに救いがなさ過ぎるって!
これがヴィオラの話の結末というのなら、恋宮のゲーム製作陣はプレイヤーを蔑ろにし過ぎだと思う。
だって、ヴィオラがクレフィを助けようとした想いは本物だった訳でしょ。
ヴィオラは悪役だけど、純粋で良い子だった訳よ。
それなのに、ヴィオラの想いも行動も、全てが無碍にされるとか、そんなの…そんなの…ヴィオラの救いはどこにあるのさ!!
ヴィオラ目線で感情移入しながらプレイした私からすると、ヴィオラに救いがなさ過ぎて…もう凹むしかなんですけど……。
こんなシナリオなら、ヴィオラ目線でプレイ出来るシステムなんて開放すべきじゃないと思う。これで終わりなら、恋宮の製作会社マジ鬼畜すぎるって…。
あ…そうか。
だからヴィオラ目線のログインは選択画面から殆ど分からない形で隠されてた?
まだ鋭利製作調整中だったのかも…。それを私が気付いてしまったと…。
うう〜〜〜ん…。はぁ〜。まぁ、もういいや…。続き、進めよっかな…。
私(ヴィオラ)は、色んな意味で落ち込みつつ、目の前にいる公爵へと謝った。
「…知らなかったとはいえ、ここまでの数々の失態は、誠に申し開きもなく…。誠に申し訳ございませんでした…公爵様…。」
「うむ…もう終わった事だ。それは良い。───してヴィオラよ、お前が命を狙われる理由は分かったのか?」
「…いえ…。」
「犯人が居る場で王子へ訴えただろう。『クレフィ嬢の命が狙われていたから』と。」
「はい、確かに訴えましたけど…それが何か?」
「隣国の刺客達はな。お前のその訴えのせいで、お前の命を“狙わなければいけなくなった”んだよ。」
「????」
「ハァ〜〜〜。いいかヴィオラよ…。」
そうして話してくれた公爵の説明は、聞けば聞くほど頭が痛くなるものだった。
まず、クレフィの王権を剥奪する方法は2つある。
1つ目は、クレフィに王権がある事を現国王が公表した上で剥奪を行う。謂わゆる正規の方法だ。
だが、現国王がクレフィの存在を秘匿している時点で、1つ目の方法は無理だ。
残るは2つ目の方法、クレフィの存在自体を抹消する。謂わゆる鬼籍(死亡)扱いとする不正規の方法しかない。
しかし、生まれた時からこの国の住民であるクレフィの存在を、この国の籍から抹消する事は、隣国側でどれだけ高位の権力者が掛け合っても不可能だ。
何故なら、隣国の王権争いは隣国内であれば正当性を保てるが、国外となれば当然その国の法が適用されるからだ。
繰り返し言うが、クレフィはこの国の住民で籍もこの国にある。つまりこの国の法に守られる存在だ。
その為、隣国の現国王でない(王権剥奪の権限を持たない)者達が、いくらクレフィの王権剥奪をこの国に主張しようと、クレフィの存在を抹消するだ何だと主張しようと通る訳がない。
だからこそ、隣国の王権争いに関与している者達は、最終手段である『殺害』という手段で、裏稼業である刺客達を使い、クレフィの存在を抹消しようとしていたのだ。
公爵の説明は、ここまでは私もすんなりと理解したし、頭も痛くなかった。
問題はその後で続けられた、隣国側がこの国に刺客を潜入させるという事は、表立ってバレればこの国に喧嘩を振っかけてる事になるのだ。という説明だ。
完っっっ全に、盲点だった。
確かに、隣国がこの国の民へ刺客を送る行為は、そのままの意味で捉えれば、喧嘩を振っかけてる事になる。
しかも、刺客が狙う人物は宮廷勤め。国王陛下の目が届かない地方の何処かではなく、この国の中枢たる宮廷内に刺客を送っているのだ。
この事が表面化すれば、必然的に国王陛下は無視できず、隣国へ正式に抗議しなければならなくなる。
最悪、隣国と友好国であるこの国の、戦争だ。
だからこそ、クレフィを狙う隣国側の刺客も、クレフィを護る王子や攻略キャラ達も、細心の注意を払って、ひたすらに水面下で殺(や)り捕(と)りをしていた。
そこへ私(ヴィオラ)が『クレフィ様の命が狙われていたから』などと、宮廷内で最も人通りが多い中央階段上で、しかもこの国の王子を前にして、大々的に訴えしてしまったのだ。
ああああ穴があったら入りたいーーーー!!
これがただの貴族や一般人の訴えであれば、まだ発言を無かった事に出来たのかもしれない。
でも、あの発言時のヴィオラの立場は──この国の『王子』の婚約者だ。
この国の頂点である国王陛下が『王族として連なることを認めた者』だ。
つまり、ヴィオラの発言は『王族と同等』の発言力を持つ事になり、隣国側からすればヴィオラの発言は、“無視する事が出来ない発言”という事になる。
だからこそ、隣国側の刺客達は戦争回避の為に、火種となるヴィオラの発言を無かった事にする為に、クレフィ同様の『殺害』でもって、ヴィオラの口封じに動くしかなくなったのだ。
「こ、公爵様…。」
ヒクヒクと口端が痙攣する私(ヴィオラ)を見て、公爵は盛大に溜め息を吐いた。
公爵は口には出されなかったけど、ようやく分かったか…この愚か者め…。という呆れ顔が口ほどに物を言っている。
そうか。だから王子はあの時、ヴィオラの『クレフィ様の命が危ぶまれたから』発言を途中で遮ったのか…。
わざわざ王子はヴィオラに向けて、『クレフィ嬢を階段から突き落としたのは君だ。…そうだよな?』と、隣国の刺客達へ丁寧に分かりやすく事実だけを認識するよう仕向け、尚且つヴィオラへ同意まで求めた。(ここで王子の意図を察しておけば…。)
あれは、ヴィオラが階段から突き落とした事実で、ヴィオラの発言を塗り替えて、隣国の刺客達の行為を表沙汰にしないように促してたんだ…。
あの時、王子が目線を一度下げて私を見たのは、続けて左右に目線を向けたのは、今思えばヴィオラを悪者扱いした事への謝りと、何も言うなという合図だったと分かる。
実際に、王子は言葉でも『それ以上言うな』と言っていたじゃないか。
それなのにヴィオラは、王子へ『クレフィ様の命が“狙われていた”から』と、せっかく王子が戦争の火種となる寸前で止めてくれたのに、王子の意図を汲まず、覆せない言葉で明確に訴えてしまった。(もうヴィオラがアホ過ぎて辛い…。)
だからこそ、この国の最後の砦となる国王陛下が、事を収めるしかなくなったのだ。
国王陛下がヴィオラをフルネームで呼んだのは、あの場が公式的なものであると隣国の刺客達に知らしめる意図と、ヴィオラの発言を“言い訳”で無効であると公言する事で、隣国との戦争を回避する為だった。
そして、ヴィオラから王子の婚約者という身分を剥奪する事で、ヴィオラの『王族と同等』の発言力を無に返し、隣国の刺客達へ“ヴィオラは王族に連なる者から外れたから狙うなよ”と牽制してくれたのだ。
それでもまだヴィオラの命が狙われる可能性はゼロではないと、国王陛下は自宅療養という名の完全な保護体制で、ヴィオラの身の安全確保までしてくれたという訳だ。
何というか…ここまでいたせり尽せりな庇われ方をされてたなんて…。
王子にも国王陛下にも、本ッ当〜〜〜に申し訳なさ過ぎて!居た堪れないんですけどぉ〜〜〜っっ!!
To be continued…
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