第4話 どうやら邪魔してたようです

公爵の溜め息の意図が分からず、先程とは反対側へ首を傾げる私に、公爵は頭を押さえつつ、ゆっくりと口を開いた。


そしたらどうだ。


公爵曰く、クレフィが隣国の姫である事は、初めから国王陛下や殿下含めた攻略キャラ達は知っていて、隣国の王様からクレフィを護ってほしいと託されていたらしい。


え。…って事は、クレフィが命を狙われてる事、知ってたんかい。


聞けば、クレフィの父親は隣国の王様で、母親は王様がまだ王子の頃に婚約していた恋人で、王様になる時に和平条約で婚姻する事になった他国の姫が、一夫一妻が条件だった為に、クレフィの母親は仕方なく王様と別れて親戚を頼り、この国へと移り住んだのだそう。


それで、王様とクレフィの母親は相思相愛だったらしく、別れる前日に、お互いの気持ちを吹っ切る為にと、一度だけ関係を持ったのが、クレフィの誕生秘話だった。


一度だけで妊娠するとか、すごい確率だ。きっと二人の想いの強さが実ったんだね…とかロマンチックに捉えたいところだけど、十中八九、運営の策略だね。


そしてクレフィの母親は、クレフィの身を守る為に、父親の事は平民だと伝えて育てたのだけど、クレフィの容姿って、隣国の王族の特徴を如実に受け継いでるから、隣国の王族を知る者からしたらバレバレだそう。


だからこそクレフィの母親は、クレフィを産んだ時に、クレフィが隣国の王族の血を引く事を秘匿するのは不可能だと判断し、極秘扱いで隣国の王様へは伝えていた。


隣国で王権争いが起きた時の、もしもの時を考えて。


そしてこの度、懸念していた隣国で王権争いが起きた為、クレフィが巻き込まれる事を危惧した隣国の王様は、この国へ身を寄せる母親と娘との関係を国王陛下へ明かし、クレフィを護ってほしいと願われたと。


なるほどねー。


乙ゲー恋宮(こいみや)の物語の始まりは、クレフィが母親と叔父叔母と平和に暮らしているシーンから、突然、自分宛に『王子のメイドとしてスカウトする』手紙が届いた所から始まる。


クレフィは、普段は外出する事を嫌がる母親から、「世間を知る為に学んでおいで」と言われ、過保護な叔父叔母までもが賛成し、アレよアレよと宮廷へ召し上げられ、嬉しいながらも訝しむ。


手紙の中では『叔父の遠縁の貴族子女が仕えられなくなった代わり』と書かれていたが、そこには何か別の理由があるような気がしたクレフィは、真相を知ろうと奮闘する───。


その真相が、実はクレフィ本人の預かり知らぬ所で、隣国の王権争いに巻き込まれていた。と。


公爵曰く、隣国の王様から国王陛下は、クレフィの出自は公にできないから(王権争いに巻き込まない為にも)、表立って護るのではなく、秘密裏に護るように頼まれていたらしく、王子や攻略キャラ達は、国王陛下の命を受け、クレフィに悟られないように身辺警護をしていたとの事。


えっ…てことは…。


口元が引きつる私の表情を捉えた公爵は、静かに、静かに頷いた。


やっぱりかーーーー!!


護衛を任された王子や攻略キャラ達が、クレフィを狙う犯人に気付かない訳がない。


それなのに私(ヴィオラ)は、ことごとく犯人の犯行を未然に防ぎ、クレフィを助けまくった。


つまり、王子や攻略キャラ達が、犯行の証拠を押さえる為に、あえて泳がしていた犯人の犯行を、ヴィオラはことごとく邪魔していたという事だ。


ギギギッと、まるで油が足りないロボットのように首を動かし、公爵の顔を見ると───。


ヒィィィ!!怖い!!!


最・大・級に、キラッキラしい笑顔が返されました…。


To be continued…


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