第10話

 ようやくルナが登校して来た。


 どうやら風邪を拗らせていたらしい。心無しか痩せたように見える。自業自得なのでどうでもいいけど。すると早速、私の所にやって来た。


「リタ~! 心配掛けてゴメンね~! もう大丈夫だから~!」


「良かった~! 心配してたのよ~! 無理しないでね~!」


 表面上は当たり障りのない会話を交わしているように聞こえるが、もちろん実際はこうだ。


『フンッ! なあにが心配してただよ! 見舞いにも来なかったクセに! いや、お前になんか見舞いに来て欲しくなかったけど、カルロを連れて来るとか出来ただろうよ! 気が利かねぇヤツだな! ホント使えねぇ! そんな女、カルロに相応しくねぇっての! さっさと私に譲れっての!』


 誰が譲るか! ふざけんな! ちなみにカルロには、ルナがずっと休んでいたことを伝えていない。その間、カルロからルナの話題が出ることすらなかった。居ないことに気が付いてすらいなかったはずだ。


 つまり、そもそもがカルロにとってルナはアウトオブ眼中な訳で、それに気付いていないのは本人のみと言うことになる。ホントおめでたいヤツだと思う。



◇◇◇



 お昼休みになった。私とカルロが食堂に行くと、当然のようにルナが付いて来る。カルロに、


「あれ!? ルナ!? 久し振りだね。なんかあったの!?」


 そう言われて絶句するルナ。プークスクス♪ そこへ、ルナが登校して来たのを知らなかったんだろう、リズとミラが当たり前のようにやって来てビックリしていた。


「ルナ~! 良かった~! 元気になったのね~!」


「ルナ~! 心配してたのよ~! 大丈夫~? 無理しないでね~!」


 ルナは顔を若干引き攣らせながらも答える。


「二人ともありがとう~! 心配掛けてゴメンね~! もう大丈夫だから~!」


 表面上はニコニコしながら会話しているが、もちろん実際はこうだ。


『クソがっ! ずっと休んでりゃいいものを! ノコノコやって来んじゃねぇよ! そんで当たり前のようにカルロ様の隣に座ってんじゃねぇ! そこは私の席だっての!』


『チッ! 生きてやがったのかよ! 死ねば良かったのに! ゴキブリ並みにしぶてぇ野郎だな! そんで早速お義兄様にベタベタしてんじゃねぇよ! 殺すぞ!』


『こ、コイツら~! 私が居ない隙にカルロを独占しようと思ってやがったのか!? ふざけんじゃねぇ! 私が復活したからにはカルロをてめえらになんか渡すもんか! カルロは私のもんだ! 私が守ってみせる!』


 いやこれってどういうカオス?


 私はため息を吐くしかなかった...

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