第9話
今日、私は神殿に来ている。
聖女として神に祈りを捧げ務めを果たすためだ。
「これはこれは聖女様、ようこそお越し下さいました」
大司教が出迎えてくれる。私はこの男が大嫌いだった。聖職者らしからぬでっぷりと太った醜い体型に、嫌らしい笑みを浮かべる油ぎった顔。心の声を聞くまでもなく、ロクでもない男だと分かるようなものだ。
聞きたくなかったのだが、心の声が聞こえてしまう。
『フンッ! 今日も澄ましてお高く止まりやがって! お前のみたいな小娘に謙るなんて儂のプライドが許さんが、今だけは妥協しといてやる! あぁ、こんな色気の無い小娘よりも、今日参拝に訪れた信者の女の方がよっぽどいい! 小娘の相手は適当にやっといて、早いところ部屋に戻ってあの女を抱くとするか! グヘヘヘッ♪ 聖職者ってのは全くもって美味しい仕事よなぁ! バカな信者どもを騙して金を巻き上げたり、女の股を開かせるなんて簡単なことよ! ちょっと囁くだけでいいんだからな!「あなたに悪魔が忍び寄っています。浄化するには浄財を寄付するのと、聖職者たる私と交わることが必要となります」これだけでコロッと騙されてくれるんだからな! ウポポポッ♪ 聖職者最高~♪』
こいつホントにクズだな! こんなヤツが聖職者を名乗るなんて許せない! 聖職者ならぬ性職者じゃないか!
私は鉄槌を下すことにした。
◇◇◇
「大司教様、折り入ってご相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「私でよろしければ。では私の部屋で伺いましょう」
心の声は、
『チッ! 面倒くせぇな! もうすぐ信者の女と約束してる時間だってのに! 適当に遇ってさっさと帰すとするか...』
こんな男と部屋で二人っきりになんてなりたくないが、ここは我慢だ。私は部屋に入る際、ドアをちょっとだけ開けておく。
「それでご相談とはなんでこざいましょうか?」
「実は...信者の主に若い女性の方々から相談されたんですが、神殿の聖職者と名乗る者からお布施を強要されたり、体を要求されたりすることがあるらしいのです...これは由々しき事態だとは思われませんか?」
「せ、聖女様の仰る通り、せ、聖職者を騙るなど、け、決してあ、あってはな、ならないことですな...」
大司教の顔から滝のような汗が流れている。その時だった。部屋の奥のドアが開いて、バスタオル一枚巻いただけのほぼ全裸の若い女が現れた。
「あ、あの...大司教様...まだでしょうか?」
大司教は顔が真っ青になった。
「大司教様! これはどういうことですか!」
私はおもいっきり声を張り上げた。部屋の外まで聞こえるように。なぜならこの時間にこの場所を通るのは...
「聖女様! 何事ですか!?」
「あぁっ! 教皇様! 聞いて下さい!」
そう、神殿のTOPである教皇様だ。大司教の顔色は青を通り越して白くなっている。
その後の調べで、大司教は信者の女とただならぬ関係にあったのみならず、信者からのお布施を自分の懐に入れていたことも判明し、罰として鉱山労働を言い渡されたとのこと。
ざまぁ!
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