第8話

 あの衝撃的な『噴水流し』の日からしばらく、ルナは学園を休んでいた。


 風邪を引いたらしい。そりゃそうだわ! 真冬に寒中水泳やってんだもん! ウププッ! だ、ダメだ...思い出しただけで笑いがこみ上げて来て...ウププッ!


 てな訳で、ルナが休んでる間は平和になったかと言えば、実はそうでもなかったりする。


「カルロ様ん♪ お昼ご一緒致しましょう~♪」


「お義兄様ん♪ 私もご一緒致しますわぁ~♪」


 今まではルナに遠慮していたのか、それとも役割分担でも決まっていたのか、学園ではほとんど絡んで来なかったリズとミラが、ここぞとばかりに纏わり付いて来るようになったのだ。


 歳が1個下のコイツらは当然学年が違うんで、学園では絡みたくてもそんなに絡むことが出来なかったってのもあったんだろうな。


 ただ、お昼休みだけは別だ。この時だけは学年関係無く絡めるはずなのに、今まで絡んで来なかった二人が急に絡んで来始めたのはなぜか? それもルナが休んでいる間を狙ったかのように。もしかしてルナに頼まれた? 託された?


 気になってみたんで、二人の心の声を拾ってみた。


『フフフッ! これはチャンスよ! あのブスが居ない間に、カルロ様の好感度を上げてやるわ! 大体あのブスは目障りなのよ! 幼馴染みだからってカルロ様のことを何でも分かってるような口振りしちゃって! ウザイのよ! 私だってカルロ様の幼馴染みだっての! もうずっと休んでてくれないかしらね? いっそのこと退学してくれないかしら?...それとこの女もウザイ! 病弱設定どこ行ったのよ! ここ最近は毎日毎日登校して来やがって! 今までは3日に一度は休んでだじゃないの! 今からでもまた病弱設定に戻しなさいよね!』


 これはリズ。


『フフフッ! これはチャンスね! あのブスが居ない間はお義兄様を学園でも独占してやるわ! 大体あのブスは気に食わなかったのよ! 幼馴染みだかなんだか知らないけと、お義兄様のことを昔から良く知ってるアピールを繰り返して、いっつもマウントを取りやがって! 今なら私が一番お義兄様と一緒に居る時間が長いんだっての! 舐めんなよ! このままずっと休んでろ!...それとこの女はもっと気に食わない! お義兄様相手に妹アピールしやがって! お義兄様の妹ポジは私一人で十分なのよ! 死ねばいいのに!』


 これはミラ。


 なるほど...私という共通の敵が居るから、表面上は協力体制を築き上げてるように見せ掛けていて、その裏では足の引っ張り合いを繰り広げていると...


 闇が深いなコイツら...


 

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