第6話
「リタ~! 次の選択授業何にした?」
「音楽だけど...」
「偶然だねぇ! 私も一緒なんだ~! ほら、一緒に行こう?」
「え、えぇ、いいけど...」
怪しい! 怪し過ぎる! いつもは仲の良い友達と一緒に行くクセになんで今日に限って!? 私はルナの心の声を拾ってみた。
『もう! なんなのよ! せっかく私がリタのことを悪役令嬢だって噂流したのに、肝心のリタがヒロインである私を虐めて来ないってどういうことよ! こんなんじゃ噂が噂のまま終わっちゃうじゃないの! 仕方ないから私が体を張るしかないわね! フフフッ、階段落ちの準備は万端よ! リタに突き落とされたって大声で叫んでやるわ! 見てなさい!』
いやだから、お前ヒロインでもなんでもないだろ? 私も悪役令嬢じゃないから、虐めなんてする訳がない。コイツ頭沸いてんじゃないか!?
『階段落ち』ってのは確かに小説にもあったな。ルナは落ちる気満々みたいだけど大丈夫なのか!? そう思ってルナを良く見てみる。
ブフッ! 危うく私は吹き出すところだった。ルナのヤツ、肘と膝を守るためにパットを入れてる。服の上からでも盛り上がってるのが良く分かる。もしかしたら肩にもパットを入れてるかも知れない。さすがにヘルメットまでは被ってないが、確かに準備は万端のようだ。
だったら私も期待に応えてあげないとね。
「ゴメ~ン♪ 教室に忘れ物して来ちゃったみたい~♪ 私ったらお馬鹿さん♪ テヘペロ~♪ 先行っててくれる~?」
「あっ!? ちょっ!? 待っ!?」
待たない! 私はこの日生まれて初めて授業をサボった。お疲れ様~♪ せっかくの装備が無駄になっちゃったね♪
◇◇◇
別の日、私の机の中にこんなメモが。
『放課後、噴水広場の前で待つ カルロ』
ハァ...私はため息を吐いた。ルナがアホ過ぎる...これはアレだな。小説の中にあった、ヒロインが悪役令嬢に突き飛ばされて噴水に落ちるっていう所謂『噴水流し』を実践しようって魂胆なんだろうが....
まず最初に、これはカルロの筆跡じゃない。私が何度カルロと手紙のやり取りしてると思ってんだ? 舐めるなよ? この下手くそな字はルナそのものじゃないか。
次に、いくらカルロとクラスが違うからって言って、わざわざ手紙を書くなんて手間を掛けるはずないだろ? 口で言えばいいじゃんか。ちょっと考えれば分かるだろ。アホなのバカなの死ぬの?
私は頭が痛くなって来た...こんなお馬鹿な作戦に付き合わないといけないのか...ルナの方をチラッと見ると、したり顔でニヤニヤしていやがる。
さて、どうしようか...
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