第2話

 妹のリズは大嘘吐きだ。


 カルロが私の家に遊び来る度に、私の悪口をカルロに吹き込む。曰く「お姉様が私を虐めるんですの」曰く「お姉様が私の持ち物を盗むんですの」曰く「お姉様が私のドレスを引き裂いたんですの」などなど。


 もちろんそんな事実は一切無い。良くもまぁ息を吸うように嘘が吐けるものである。優しいカルロはそれを聞かされる度に悲しい顔をして『リタがそんなことをするはずがない!』と心の中で叫んでいる。ちゃんと私のことを分かってくれて、信じてくれて嬉しくなる。


 だから私は、


「リズに何か変なこと言われてない? ごめんなさいね、あの娘ちょっと虚言癖があって.. 」


 と、目を伏せて悲しそうな演技をする。するとカルロは、


「大丈夫! 気にしてないよ!」


 と、笑ってくれる。心の中では、


『良かった! リズの嘘だったんだね! リタのことは信じているけど、ちゃんと言って貰うと安心するよ!』


 良し良し♪ 順調に調教...コホン...もとい誘導 指導? 教育? まぁなんでもいいか。とにかくリズに虚言癖があるってことを刷り込めたのは大きい。


 それはカルロだけじゃない。ウチの両親も同様だ。幼い頃からリズの口癖は「お姉ちゃんばっかりズルい!」だった。


 妹に甘い両親からは「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」「お姉ちゃんなんだから妹に譲りなさい」と言われて来た。私の私物は妹に全部取られた。


 子供の頃ならまだいい。私も少しくらいなら我慢しよう。だがいい大人になってからも変わらないのは我慢できない。


 だから私はリズの虚言癖を少しずつ両親に刷り込んでいった。私がリズの私物を盗んだり壊したりなんかしない娘だということを理解して貰えるように。


 やがてその苦労が実を結び、両親はリズの言うことをまともに取り合わなくなった。だから今日も、


「お姉様! また私の物を盗んだわね!」


「なんのことかしら?」


「惚けないでよ! そのペンダントは私のよ! 返しなさいよ!」


「酷いわ! なんでそんなこと言うの!...メソメソ...これはカルロに贈って貰った物なのよ!...シクシク...それをあなたにあげたらカルロが悲しんでしまうわ...エーンエーン...」


 こうやって泣き真似していれば、


「いい加減にしないか、リズ! お前という娘はそんなに姉の持ち物が欲しいのか! 恥を知れ!」


「リズ! お姉ちゃんに謝りなさい! なんて酷い娘なの!」


 と、まぁこうなる訳よ。


 ざまぁ!


 さて、リズが両親に怒られてる間に、カルロの家に遊びに行きましょうかね。カルロをウチに呼ぶとリズが必ず割り込んでくるからもう呼ばないことにした。


 ちなみにカルロの家には二人目が居る。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る