ギルドランクDから会員証が鉄製になります

 シェルターから、狼の毛皮を持ってきて。

 依頼書と一緒に、ギルドの受付嬢さんに渡すと、すぐに報酬の500Gを手渡してくれた。

 E級だと、報酬も、こんなもんみたいです。

 だからこそ、ランクアップが必要になるわけで。


「このまま、ランクアップの手続きを行いますが、よろしいですか?」


「お願いします。

 何かやることはありますか?」


「ないです。

 ギルド会員書が、鉄製になりますので。

 酒場スペースのほうで、座ってお待ちください」


 俺は思った。

 えっ、もしかして、レーザー刻印機?

 鉄板にレーザーで名前とか刻印すんの?

 いや、まさか、光の魔法で焼くのでは?


 そんな考えが浮かび、窓口の奥をのぞくと。

 受付嬢さんとは、別の男性が、釘とハンマーで小さな鉄板を叩き始めた。


「アナログ、かーい!」


 そりゃあ、そうであり。

 だからこそ、出来上がりまで、10分ほど時間がかかったのでした。 






*****






 出来上がった鉄板会員書には、点描てんびょうで、ランクを表す『D』の文字と俺の名前が刻印されていた。

 それ以外の、『ギルド会員証』というタイトルを示す文字、その他などは点描てんびょうではなく、あらかじめ刻まれていたようだ。

 受け渡し時に、受付嬢さんから以下の説明を受けた:


・カードをなくしたら、ランク情報はクリアされる

・カードの偽造は重く罰せられる

・ランク『D+』の依頼を3回達成すると、ランクCにアップする

・達成ごとに、カードに刻印を行う

・ただし、他人の力を借りた場合は無効で、あくまで1人で達成する必要がある

・この点は個人の倫理感に任せられる

・が、申請に詐称があっとわかった場合は、会員証剥奪となる


 ということです。


 俺は、再びギルド掲示板の前。

 ランクD+の依頼、その1つ1つを確認していく。

 以下が、依頼の具体例である:


・アヴァロンボア20匹討伐、および、全牙、もしくは肉素材の納入

・サーベルウルフ15匹討伐、および、全皮素材の納入

・バスターウルフ10匹討伐、および、全皮素材の納入

・スカースネーク20匹討伐、および、全皮素材の納入

・リングスネーク10匹討伐、および、全皮素材の納入

・ワイバーン3匹討伐、および、全爪、牙素材の納入

・ブラウンワイバーン1匹討伐、および、全爪、牙素材の納入

・アリゲーター3匹討伐、および、全皮素材の納入

・ブラックアリゲーター1匹討伐、および、全皮素材の納入

・ホワイトアリゲーター1匹討伐、および、全皮素材の納入

・ジャンボブロイラー1匹討伐、および、全素材の納入

・ロックタートル1匹討伐、および、甲羅素材、肉素材の納入

・ジャイアントシザー1匹討伐、および、肉素材の納入

・プテラス1匹討伐、および、クチバシ素材の納入

・デモンクリーチャ討伐、および討伐証明

・レイス討伐、および討伐証明


「結構、いっぱいある」


 しかし、ほぼ全ての依頼で、『討伐』のみならず、『素材の納入』までが求められていた。

 もしくは、討伐したことの証明が必要、というものもある。


 ちなみに、『ジャンボブロイラー』とは、俺が過去に狩った『巨大鶏』のことらしい。

 ギルドで酒を飲んでいるオッちゃんが教えてくれた。

 オッちゃんいわく、この依頼の難点は以下らしい:


・鶏のクチバシは必殺の威力

・遭遇率が比較的低い

・追い詰めると、飛んで逃げられる

・全素材納入が条件なので、運搬が大変

・運が悪いと、討伐中にドラゴンが寄ってくる

・それは、鶏が、ドラゴンの餌だから

 

 もっと、早く知りたかった、この情報。

 改めて、天界の天使達に言いたい。

 『なんで、ギルドがある街を、転生場所として設定してくれなかったのか』、と。


 ギルドのシステムは、よくできていて。

 『経験のない者には、危険な仕事はさせない』、という仕組みになっている。

 本来、0日ゼロデイでランクがEからDに上がるなんて、ありえないことなのである。


 とか、ミエルさんに言っても。

 『甘ったれんな』。

 と言われるだけであるからして。

 俺は、怒りを沈め、依頼の選別を開始したのだった。

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