下位属性魔法の威力は、一般的に、『火>土>氷>風』といわれています

 聞き取り調査完了。

 以下、報告します:


・氷属性の基礎魔法は、氷の矢を召喚して、それを敵に放出する

・温度冷却にも使えるが、長期間冷やし続けることはできない

・つまり、食品の冷蔵、冷凍機能としては使えない

・慣れてくると、氷の矢のサイズと、その数が増える


・風属性の基礎魔法は、空間に風を起こして、圧縮した風で相手を切り裂く

・逆に拡散放出して、広範囲に風を起こすことも可能だが、威力が弱い

・他属性と比較して威力が弱い


・土属性魔法は、実際の土をあやつるわけではない

・地中内にある『アースエネルギー』というものを、引き出して使う

・土属性の基礎魔法は、地中から橙色のエネルギーの槍を突き出す攻撃

・地面に接している場所じゃないと、威力が出ない

・例えば、高層建造物の上階や空中では使用できない


・火属性の基礎魔法は、火の玉を相手に飛ばす攻撃

・耐火性を持たない相手に対しては、絶大な威力を持つ

・しかし、耐火性を持つ防具は、市場に多く存在している


・威力的には、『火>土>氷>風』といった関係

・上位属性と比較すると弱い


 そして、俺は思った。

 『この人、喋り出すと、めっちゃ喋る』、と。


「どれも有用なので、全部買っておくれ」


「すんません、所持金的に1個しか買えません。

 氷の魔法でお願いします」


「あらら、残念」


 残金は13,600G。

 プライマリマジックは、全属性、10,000Gなのでした。

 そして、氷魔法を選んだのは。

 短期的にでも『冷やす』という行為が、有用となる可能性があると考えたからでした。


「それじゃあ、『プライマリー・アイス』、お買い上げ。

 ありがとうございました」






*****





 『アイス』の魔法を覚えた俺。

 本当に、身体的に、なんの変化もない。

 脳内に、直接聞くしかないのである。


「『魔法確認スキル』、実行!」


・フラン [火]MP10

・アイス [氷]MP15

・シェルターオープン [特] MP15

・喫茶店オープン [特] MP20

・シェルタークローズ [特] MP5

・喫茶店クローズ [特] MP5


「MP消費、多いのな」


 フランがMP10、アイスがMP15。

 その差、MP5。

 しかし、威力は、『火>氷』の関係。

 それでも、異属性の魔法を覚える目的は明確。

 俺は、自分が装備している『ドラゴンレザーエプロン』を、しげしげと観察した。


「相手が、どんな装備してやってくるか・・・。

 わかんないもんなぁ」


 アイスの魔法習得が成功していることを確認したのち。

 次に、俺がやってきたのは『魔法防具店』だった。


「こんにちわ、ユナスさん」


「こんにちわ、ドラゴンエプロンくん。

 君の話、何人かにしちゃった。

 ドラゴンのレザーでエプロン作った、変人がいる、って」


「話すのはいいけど、『変人』はやめてください。

 せめて、『かわったヤツ』、くらいでお願いします」


「で、『ドラエプ』くん。

 なんか御用かい?」


「タドル、です。

 その通り、御用です。

 ちょっと教えてほしいことがあって」


「ほう」


「『ナメシガワ』って、何ですか?」






*****






「あんた、『なめし』、知らないで、レザー防具、発注したのかい」


「ナメシ、って。

 なんか、『ウルトラ怪獣』みたいなヤツですかね?」


「ごめんね。

 あんた、何、言ってんの?」


 さすがに、『ウルトラ怪獣』は伝わらなかったようです。


「『なめし』、は『加工法』さ。

 この工程をることで、動物の『皮』が、防具などに使用できる『革』に変わるのだよ」


「・・・」


「例えば、牛や馬の皮をいで、それを素材にしようとする。

 でも、皮、そのままでは、時間経過で固くなったり、腐敗したりするのさ。

 ここで、とある溶液に皮を漬け込むと、腐敗や固化を防いで、カワを柔らかくし、また一定形状を形成しやすくなる。

 この溶液には、植物の樹皮から抽出した『タンニン』という成分を含有させるんだ。

 これで、革、レザーを生み出すことができる」


「このエプロンも、なめして、あるんですか?」


「そうだよ」


「ユナスさんが、なめしたんですか?」


「否。

 この街には、なめし、専門の業者がいる。

 そこに委託した。

 ウチだけじゃない、この街の防具屋、服飾店の、『御用達ごようたし』。

 なくてはならない、重要拠点さ」


「あのー、実はですね・・・」


「どうした?」


「俺、レッドドラゴンのレザーで、イス、作ったんですけど」


「あの、ごめんね。

 頭、おかしいの?」


「そのレザーも、なめしておいた方が、よかったですかね」


 知識不足のまま、突っ走ってしまったのであった。

 勉強になりました。

 ただ、当然、ドラゴンレザーは、最大限、綺麗に洗浄してある。


「ドラゴンレザーは厚いから、なめしはそんなに必要ない、かもね。

 逆に、なめしすぎると、魔法防御性能が落ちてしまう可能性もあるんだ。

 ドラゴンよりも、レッドドラゴンの方がさらに装甲が厚いから。

 まあ大丈夫じゃあ、ないのかね。

 知らんけど」

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