錯乱は指定状態異常には該当しません

 一晩明け。

 俺は、今、ジェルソンの村にいる。

 天使に頼み込み。

 土下座までして。

 転送魔法を使ってもらって。


「お久しぶりです、村長さん。

 さっそくですが、『木』、また、ください」






*****






 俺がジェルソンを出発してから、今日までに17日が経過しており。

 村には、多少、活気が戻ってきていた、ように見える。

 そして、村には、『家具店』ができていた。

 ここで作る家具が、少しづつ人気を獲得しつつあり、ハミルトンでの販売も現在検討中、とのことでした。

 そして、この家具店ができていたおかげで、『樹木を伐採し、加工して』。

 その工程を経た結果である『木材』が、すでに多数準備されていたのだった。

 

 俺は、その家具店内部、作業場へと通された。

 ちなみにミエルさんは、喫茶店でソシャゲ中です。

 『十天使』がナントカ、とか言ってました。


 作業場で働いていたのは4人。

 1人は、この村の大工さん。

 中年、小太りの男性で、大工の仕事がないときは、家具作りの手伝いをしているらしい。

 名前は『ケント』さん。


 1人は、元ハンターの年齢20歳後半の男性。

 しかし、足を怪我したため現役から退しりぞき、農業をしていたらしい。

 足の動きはにぶっているが、腕の筋肉は現役。

 名前は『モリタ』さん。


 あとの2人は、なんと・・・。

 やっと10歳を越えたばかりの女の子。

 しかも、双子ちゃん。

 しかし、子供とは思えない理解度。

 そして女性的な感性、繊細さ、デザインセンスを持っている。

 家具の仕上げは、おおよそこの2人が担当しているらしい。


「お兄ちゃん、会いたかったー」


「私もー」


「イノリ、カナエ、久しぶりー」


 イノリちゃんと、カナエちゃんという名前なのでした。

 ちなみにお母さんはタマエさん、だそうです。

 ブラウンの短髪ショートカットが、イノリちゃん、です。

 ブラウンの長髪ロングヘアが、カナエちゃん、なのです。


 ここで、この場所まで案内してくれた村長さんが、かしこまった口調で進言した。


「恩人である、あなた様に、貢物みつぎものがあります。

 これを、お持ちください」


 受け取ったもの、それは、鉄製の、小さなバケツ。

 そのバケツはしっかりと蓋がされ、中が密閉されている。

 ゆっくりと開封すると。

 そこにはダークブラウンカラー、ロウソクのろう?、のような、謎の固体。


「塗料です」


「塗料、キターーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」


 ゴマダレー。

 俺は、バケツを天高く掲げた。

 まるで、聖剣を引き抜いた勇者のごとく。

 俺のテンションの高さに、村長さんは若干引いていた。


 が、しかし。

 そう、これで。

 さらに『改良』できる!






*****






 作業場にて。

 元ハンターのモリタさんから質問を受ける。


「すみません、これ何ですか?」


「ドラゴンルーラーレザー、です」


「あの?

 えっ?

 はっ?」


 モリタさんは、錯乱状態におちいった。






*****






 モリタさんの錯乱状態が解けるまで、かわいい双子のお母さんの映像をご覧ください





*****






 モリタさんの状態異常が回復した。

 その上でモリタさんは、とてつもなく丁寧に解釈を述べる。


「あなたがドラゴンルーラーを討伐して、その最高級素材で、『イス』を作ろうとしているのですか?」


「そうです」


「あんた、バカなの?」


「本気です」


 いつにない、真剣な表情で、俺の本気度を伝えようとする。


「そんな話、前世でも聞いたことないよ」


「俺もないです」


 まあ、俺の前世には、ドラゴンルーラーは存在していなかったが。

 デジタルの世界を除いて。






*****






 前回の家具作成では、設計図を俺が全て作成した。

 この時の設計図は、全て、村に提供してある。

 これを見て、その『ココロ』のようなものを学習した人間が、ここには4人もいる。

 

 今回のソファーの設計図作成は、俺も含めての5人が、同時に図面とにらめっっこしながら、そんなスタイルで行われた。

 そこで生まれる、双子ちゃんの意見が、俺の心の琴線に突き刺さること数回。

 このら、大物に、なるで。


 そして、設計図は完成。

 レザーの縫い合わせは、双子のお母さん、タマエさんが裁縫上手とのことで、お願いすることにした。

 木材の加工や組み立ては、モリタさん。

 仕上げは双子ちゃん。

 俺は塗装。

 ケントさんは現場監督。


 そんな作業分担で、万事うまくいったように見えた。

 しかし、そこには、たった1点だけ、問題が残ったのでした。

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