言語、通貨は全地域で共通です

 今回製作するソファーは1人掛け。

 これを、2席分作成する。


 おおまかなソファーの設計は。

 まずドラゴンレザーを使った真四角のクッションを2つ作成。

 ただし、厚みが10cmほどある、分厚いクッション。

 1つはお尻に敷く位置、1つは背もたれとなる位置に配置。

 それを支える骨組みを、塗装した木材で作成する、というもの。


 そこで問題になるのが、『クッションに詰める素材』である。

 布団では『巨大鶏の羽毛』を使ったが、これでは、ソファーとしては柔らかすぎる。

 前世ではよく『低反発』という言葉が使われたが。

 『ある程度の反発力で押し返してくれる』というのが、絶対に外せない条件であったのだ。

 まあ、これは、あくまで俺のコダワリでしかないのだが。

 ここで、俺は一旦、喫茶店に戻ることにした。






*****






「ミエルさん、ちょっといいですか?」


「何?」


「『ポリウレタン』、って。

 この世界にあります?」


「ない」


「ありがとうございます」






*****






 わかりきった直球ストレートを投げ、スッキリした状態で作業場に戻ってきた。

 当然、問題は解決していない。

 背もたれクッションは、羽毛オンリーでも、まだ良い。

 尻敷きクッションは、羽毛にプラスして、何か、もう少し硬度があるものを混ぜたい。

 硬度があり、かつ、『弾力性』があるものを・・・。


 ・・・


 ポク。

 ポク。

 ポク。


 チーン。


 ナンマイダー。

 ハンニャ・ハラ・ミタジ。

 グレイソーマタージ。


 イノリ・カナエ・タマエ!

 

「ゴム!」






*****






「ミエルさん、ちょっといいですか?」


「何?」


「『ゴム』、って。

 この世界にあります?」


「ある」


「どこに?」


「南国の一部の島国」


「ミエルさん、俺と、バカンス、行きません?」






*****






 一言でまとめる。

 『合成樹脂』を諦め、『天然樹脂』に手を出したのだ。

 そして俺は、ゴムを求め。

 再び、ミエルさんに頼み込み、南の島に転送してもらった。

 転送先は、ハワイか、グアムか、オセアニアか。

 まあ、前世で行ったことないから、わからないんだけどね。


「私は、ちょっと海岸でたわむれて、飽きたらソシャゲに戻るから。

 あとは、ご自由に」


 海岸沿いに設置された喫茶店は、サナガラ、海の家のようだ。

 ここで、『焼きそば』とか売っても、結構儲けがありそうだな、とか思いました。






*****






 第一村人発見。

 それは浜辺で遊ぶ、男の子、2人。

 上半身裸で、ボール遊びをしている。

 ここで、改めて、異世界取説の内容の一部を確認する:


・言語は全地域で共通であり、語学を勉強せずとも、ある程度会話は可能

・通貨は全地域で共通です


 故に、問題なく、コミュニケーションを取ることができるのであった。


「こんにちわ、君たち」


「こんにちわ、へんなオジさん」


「それにしても。

 君たちが使っているボール、よくはずむね」






*****






 『へんなオジさん』という評価は受けたものの、子供達は迷うことなく、自分たちが住む村に案内してくれた。

 南の島国、だと聞いてきたのだが、島民はみんな、普通の綿コットンの洋服を着ていた。

 家も高床式の、しっかりとした木造。

 いわく、すでに、海運経路が存在し、交易がスタートしている、ということだった。

 しかし、これは、俺にとってはありがたい。

 それはつまり、この島の人間も『貨幣』に価値があること。

 それを理解してくれているから、そういうことである。


 通されたのは、村長宅。

 村長さんは、比較的若く、謎の木製の仮面をかぶって、かつ帯刀していた。

 めっちゃ怖い。

 それでも、俺は引かない。

 もう、最初から、結論を突きつけたのだった。


「子供達が遊んでいた、あの弾むボール。

 全部ください!」


「君は、玩具店でも作りたいのかね?」






*****






 俺のねちっこい説得のおかげで、島中に存在するボールを、俺に提供してくれることとなった。

 今は、ボールをかき集めてくれている最中。

 そして、そのボールの原材料こそ、『ゴム』なのであった。


 以下は、村長さんの言葉です:


・ボールの原料は樹液

・が、何かの役に立つとは思っていない

・とにかくよく弾むので、ボールを作って、子供のオモチャとして提供している

・木はまだまだ、たくさん育っているので、ボールはまた作ればいいから、全部もっていってくれても構わない

・ただし、当然、金は取る


 将来、このゴムが、『車社会』にとって、なくてはならないものになるとは、今この世界の人間は誰も思っていないのである。

 ゴムの偉大さ。

 それを知っているのは、『転生者』、および『天使』のみである。






*****






 現在ゴムボールを回収していますので、皆さまは美しい海岸でソシャゲをする天使の映像をお楽しみください






*****






「集まったよ!」


 無数の『ゴムボール』が、ジェルソンの村でチョッパヤでこしらえた木箱、それ、いっぱいに詰められている。

 木箱のサイズは、俺がギリギリ持ち上げられる程度に設計してある。

 持ち上げようとしたら、ズシリと重い。

 しかし、可愛い娘のためならエンヤコラ、タココラ。

 なんとか1人でも運べそう。

 というか、無理やりでも運ぶ、という意気込みであった。

 が、その前にやることがある。


「この箱、20,000Gで買います!」

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