物理ダメージ、魔法ダメージ両方を含む攻撃が存在し、その場合は物理防御力、魔法防御力両方の値を使ってダメージが計算されます

「ただ今帰りました」


「おかえり。

 緑になったわね」


 ミエルさんは、その変化にすぐに気づいた。

 前回帰宅したときは、見向きもされなかったが、今回は、喫茶店の扉を開けた瞬間に目が合った。

 彼女は、そういった『戦闘』に関する『勘』、それが優れているのだ、という予想が生まれた。


「ドラゴンレザーのエプロンです」


「エプロンを竜鱗りゅうりんで作る人間。

 私、初めて見たわ」


「まあ、目指しているのは、あくまで『喫茶店』なので」


 たしかに、目指しているのは喫茶店。

 しかし、この世界は、『多角的に厳しい』。

 それは、ここまで、嫌というほど味わわされている。

 『ズシッとくる』と表現したくなるエプロンの重さが、今は逆に安心感につながっている。


「じゃあ、テストしましょうか?」


「テスト?」


 その瞬間、空間に生み出された、リンゴサイズの1つの魔力球。

 それが炎であると知覚した瞬間に、その魔力球は俺の腹部に向けて撃ち込まれた。


「グボエラ!」


 嗚咽を吐きながら、後方にダイブ。

 炎が直撃した部分を高速でさすり、全力で鎮火活動を行う。

 が・・・。


「燃えてない」


「やっぱり、耐火性能持ちなのね」


 無事、どころか、エプロンには何の『痕跡』も残っていなかった。

 ミエルさんの炎の魔法を、本当に、ほぼ、無力化した?


「無力化してないですって!

 天才高校生ピッチャーの剛腕ストレートを直撃した、そんな痛みです!」


 炎は無効化できたが、直撃の衝撃は、しっかりと体に伝わっていたのでした。


「別に、昨日、ギルトイベントで負けた腹いせ、とかじゃあないからね。

 実験に協力してあげただけよ。

 ふふっ。

 でも、これでよくわかったでしょ。

 『魔法防御力』、その重要性を」


 ミエルさんは笑った。

 そんな天使の笑顔で、俺の心は癒され・・・。

 る、訳無いだろーが、ボケェ!!!! 

 このドS天使が!






*****






 天使マッドサイエンティスト実験材料モルモットになったのち。

 俺は厨房へ。

 メニュー試作。

 今回の主役は『ハム』である。

 そして、その試作は、1分で終わった。

 

 ハムとキャベツを細かく切り、ボールへ投入。

 そこに調味料、塩胡椒とマヨネーズ。

 かき混ぜて完成。


「コールスローサラダ!」


 失敗する要素があまりない、『間違いないやつ』ができました。

 そして、俺は、メニュー表を、一部のみ、書き換える。


・タマゴサンド 500G

・ハムサラダサンド 500G

・ミックスサンド 500G


 タマゴサンドは既存メニュー。

 『コールスロー』だと、『なんか、なんだかよくわからん』とか、『何、変化球かなんか?』とか言われそうなので、わかりやすく『ハムサラダ』とした。

 そして、『ミックスサンド』は、タマゴサンドとハムサラダサンド、両方を味わえる、おトクメニューである。

 まあ、おトクとは言っても、パンのサイズはそれぞれ半分になるので、コスト的にはあまり変わらない。

 しかし、一度で2種の味を楽しめる、というのは、どの世界でも通用する、よくある商売手法なのではないでしょうか。


 この時点で喫茶店の外に出ると夕暮れ。

 赤く染まる草原が、この1週間の頑張りを慰労してくれているようで。


 さあ、また明日から。

 喫茶店、2週目運営。

 頑張ろう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る