ドラゴンブレスのダメージは魔法防御力で計算されます

 にわとり狩りのつもりが、ドラゴンスレイヤーとなった俺は、ハミルトンの近郊まで戻ってきた。

 鶏肉の備蓄は十分。

 今日の目的は『買い出し』だ。

 俺は改めて、買い物リストを参照する。


・コーヒー豆

・茶葉

・パン

・米

・小麦粉

・キャベツ

・レタス


 そして、以下はマヨネーズの材料である:


・油

・卵

・酢


 マヨネーズはうまく作れるか不安である。

 とにかく、やってみようと思います。


 そして、その買い出しの前に、資金調達を行いたいと考えている。

 その元手となるのは『ドラゴン』である。






*****






 俺は、町の酒場にやってきた。

 ドラゴンの素材が武器防具素材として利用できるのなら、商人よりも冒険者のほうが、その価値に関して詳しいのでは、と考えたのだ。

 そしてその判断が、思わない結果を産むことになったのである。


「黒鎧の方!

 コンパスを下さった方ですよね!」


「お前、喫茶店の!?

 久しいな、元気だったか」


 そこにいたのは、俺にコンパスをくれた黒い鎧の男だった。

 上機嫌そうにビールをあおっている。

 そう、これは、またも、チャンスだ!


「よろしければ、お名前を教えてもらえませんか」


「ダルトだ。

 そういうお前は?」


「タドルです。

 先日はありがとうございました。

 このコンパスのおかげで、とても助かっています」


「でも、お前、ジェルソンの村へ向かったはずだろ。

 村はどうだった?

 いい村だったろ」


「盗賊に襲われて、みんな意気消沈してました。

 しかもアヴァロンボアの群れが、畑を荒らしにくるという状態で」


「マジか。

 それはご愁傷様だな」


「でも、猪は自分が退治しました。

 今は、みなさん活気を取り戻しています」


「嘘だろ。

 アヴァロンボアは1匹でも強敵だぞ。

 お前、そんな強そうには見えないが」


「企業秘密がありますので」


「よくわからん」






*****






 黒い鎧のダルト氏は、またも有用な情報を提供してくれた。

 それは、『防具屋』。

 しかも『魔法防御に特化した防具屋』である。

 防具屋には盾のマークの看板が掲げられるのが通例であり、この店もそれは同じ。

 店に入ると、俺の目に飛び込んできたのは、無数の『ローブ』だった。

 薄暗い店内には、お客は誰もいない。

 そして、店員もいない。


「すみません、だれかいませんか?」


 無反応。

 しかし、この状態で30秒待っていると、店の奥から白いローブの女性が現れた。

 短い白髪、そこから覗く瞳は、たっぷりのクマをこさえて、いかにも眠そうな。

 切れ長の瞳、目尻のホクロが妖艶さを醸し出す、お姉様。


「いらっしゃい」


「ここは素材の買取もしてくれる、と聞きましたが」


「安物ならば、買わないよ」


「ドラゴンの革鱗かくりんなんですけど」


「買う!

 めっちゃ買う!」


 テンションが急上昇した店主さん。

 眠そうな目が、カッと見開いた。

 しかし、この反応はダルトさんの事前情報と合致する。

 このドラゴンの革鱗かくりんは、防具素材として、たいへん優良であるということ、らしい。


「ローブ作製1人分の量、いくらで買ってくれます?」


「20,000Gでどうだ」


 このあたりの情報もダルトさんが教授してくれた相場と、おおよそ類似。

 あの人、本当に有能すぎる。


「これで、ローブ2人分はあると思います。

 40,000Gで買ってください」


「交渉成立だね」


「そして、もう1点。

 今度は、こちらが金を払います。

 このドラゴン素材で、『エプロン』を作ってくれませんか?」






*****






 交渉は成立した。

 特注品、ドラゴン革のエプロン。

 それに必要な革鱗かくりん素材は自分が渡し。

 その上で、30,000Gを支払う約束を書面上で交わし、オーダーメイド品を発注した。

 これで、今まで不安だった防御力の点も、かなり改善できるだろう。

 

 残金は、約47,000G。

 エプロンの代金を差っ引いて、約17,000G。

 買い物リストを再度見直すと、俺は物資の買い物を開始したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る