調味料は水道シンクの下に入っています

 魔物に見つかったら、すぐにシェルターオープン。

 その呪文を何度も脳内で唱えていたが。

 魔物の襲撃はなく、1時間ほど歩き。

 本日は、この何も存在しないポイントを宿にすることに決めた。


「シェルター・オープン!」


 前回と同じ、白いコンテナが『ポン』と出現した。

 100人乗っても大丈夫そうな丈夫いコンテナだが、完全に地面に接地した状態で登場するので、落下の衝撃などは存在しない。

 すぐさま冷凍庫を確認。

 よし。

 食材、消滅してない。

 これだけの肉があれば、1ヶ月ほどは余裕で暮らせるのではないだろうか。

 問題はビタミン、食物繊維。

 つまりは野菜だ。


 この点、街を見つけるのもいいが、森などで野草を採取する案もあるかもしれない。

 願わくば、この包丁。

 肉の質だけでなく、植物の毒の有無まで採取時に判断してくれるとうれしい。

 この点、できるだけ早く試しておきたい。


 ふとここで、水道シンクの下に扉が付いていることに気づく。

 その扉の奥に収納されていたのは、


「調味料だ!」


 砂糖、醤油、塩、胡椒、酒、みりん。

 そして油。

 ゴマ油とオリーブオイル。

 それらが、前世でよく見るパッケージのまま、冷暗所保存されていた。

 ソース、ケチャップ、マヨネーズなどの複雑なものは、さすがに無理だったようだが。

 塩があるだけでも非常に助かる。

 これも、おまけ特典なのだろう。

 細かいところまで気配りのできる天使である。

 一部のみ、の話だが。

 気分屋さんかな?


 ・・・


 では。

 さあ、早速・・・。

 焼肉だ!






*****






「星、2つ」


 狼の肉は、どの部位を食べても、旨味が少なく、脂身も少なく、そして獣臭かった。

 『生姜でもあったら、まだ臭み消せたかな』、などと思ったり。

 『胡椒、活躍してるー』、とか思ったり。

 調味料を変えながら、できるだけ単調にならないように食した。

 味は問題有りだが、満腹度は100%を超え。

 さらに満腹度が拡張されそうなまであった。


 お腹もたまり、では就寝。

 ここで浮かんだ案は、『喫茶店もオープン状態にする』ということだ。

 このシェルター前室は、3畳ほどのスペースしかなく、就寝場所としては窮屈。

 喫茶店がどういう内装か現時点では不明だが、この部屋よりも大きい可能性は高いと考える。


 が、懸念点が1つ。

 それは『喫茶店の装甲強度』だ。

 シェルターの装甲強度は本日確認することができたが、喫茶店の壁面に同等の強度があるか、現時点では不明である。

 狼が息を吹きかけただけで吹っ飛んでしまう可能性もある。

 しかし、宵闇の中で、種々試行を行うのは危険と判断。

 その結論を持ってして。


 おやすみなさい。






*****






 窓から、朝日が差し込んでくる。

 硬い床、布団も存在しない状況にしては、よく眠れた気がする。

 どうも、この前室には、ある程度の保温機能も備わっているようだ。

 結果、寒くて眠れないという危機も回避できた。


 ここで俺はシェルターの外に出て、草原の空気をめいいっぱい吸い込む。

 東、だと思っていた方向から、太陽が登ってきているのを確認して。

 新しい朝が来た。

 簡易的なストレッチを行ないながら、周囲を見渡す。

 やはり。

 どの方角にも、まだ、何も見えない。

 草原が広がるのみ。

 しかし、最低限の物資、水と食料は確保済み。

 今は、このまま、北東の方向へ進むことにしよう。

 こんな場所に旅人がやってくるはずはない、だろうから。


 だろうから?

 

 いや、なんか馬に乗った人影が見える、北の方角から。

 こんなこと、ある?

 なんて幸運!

 聞こう!

 最寄りの町の情報を!


・言語は全地域で共通であり、語学を勉強せずとも、ある程度会話は可能


 取説にはそう書いてあった。

 心配ないさ。


 心配ないよね。


 なんか馬の頭数が増えているけど。


 心配ないよね。


 めっちゃ、こっち目指して集団でやってくるけど。


 心配ないよね。


 全員がバンダナで頭と口元を隠してるけど。


 心配ないよね。


 腰に刀剣のたぐい、ぶら下げてるけど。


 心配ないよね。




 ・・・




「盗賊だーーーーーーーー!!」

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