第11話
(バカ共が…。この私が負けるわけがなかろう。皿はもう私の部屋にはないのだからな。部屋を出る前に窓からロープで降ろしておいた。それを真宮に携帯で知らせてある。いつ、どこからでも回収できるのだ。まさか皿の隠し場所がこのペンションの外だなんて想像もつくまい…)
ほくそ笑みながら百目鬼が真宮の部屋に入ろうとしたところに加藤が現れた。
「おっと、どちらへ?」
「もう私の負けは決まったんだ。関係なかろう」
「さては本当の皿の隠し場所は真宮の部屋だな。こっそり回収しようったってそうはいかねえ。皿を持った瞬間俺が叩き割ってやらぁ」加藤がにやりとする。
「何を言ってるのかね。君と私はチームだろう」
「ならダイヤをよこしな。その代わり賞金は全てお前が持ってけばいい。どうだ、たった1億のダイヤで3億の賞金が手に入ると思えば安いもんだろ?」
「まったく欲の張った男だな…。そんなに欲しければくれてやる、森の中を探すがいい!」そう言うと百目鬼は窓からダイヤを投げ捨てた。
「言われなくてもそうしてやるよ!」加藤は百目鬼を思いっきり殴り退場した。
「…バカが、本物かどうかも確かめんとは。にしても痛っ…」
百目鬼がドアを閉めようとした時、野崎が足を引っかけた。
「なんだ。今度は君かね」
「さっきの話聞かせてもろたで。ホンマはこの部屋に皿隠しとんのやろ?せやない言うんやったらこのドア開けてや」
「君こそ足をどけたまえ。それとも君もダイヤが目当てかな」
「いらんわ、あんな偽もん。ばら撒けばばら撒くほど信用失ってんのが分からへんの?」
百目鬼は時計をちらりと見た。
(まずいことになった…。終了までもう20分もない。いつでも皿を受け取れるとは言え、手にした瞬間割られては意味がない。部屋から出たのは失敗だったか…?いや方法はあるはず。…そうだ。終了時間ちょうど、いや1分前に真宮から受け取れば割られることはまずない。ロビーの奥の窓の外に真宮を待機させておこう…)
百目鬼は片手で携帯を操作し始めた。
(真宮、ちゃんと働いてくれよ…。)
6時前、百目鬼はドアを開ける。
「そんなに探したいなら探せばいい。ほら、どうした?」
野崎が部屋の中を覗き込んでいると百目鬼が走り出した。
「あ、ちょっと!」野崎が追う。
百目鬼は廊下に転がっていた消火器のピンを抜くと辺り一面に噴射した。
「げほっ、何してくれんねん…」
野崎がやっと粉塵から這い出た時には百目鬼はもう階段を駆け下りていた。
ロビーの奥では既に真宮が待機していた。
「よくやった」百目鬼は皿と引き換えに真宮にダイヤの鍵を渡す。
(間一髪だ。残り1分…。長い1分だ。この皿は誰にも触れさせん)
百目鬼はロッカーの影に隠れ皿を抱えて蹲った。
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