第10話

「俺だ」

加藤は百目鬼の部屋に着くとドア越しに話しかけた。

「とんでもないことになった。真宮が割った皿は1枚だけ割れてなかったらしい。おまけにアイツらキッチンから新しい皿を見つけ出しやがった。もう1枚見つかるようなことがあれば人数的にも俺たちの方が不利になる。とにかく下に行って状況だけでも確認してくれ」

それを聞いた百目鬼が部屋の中で考える。

(バカな…。ライヤーゲームは宝探しゲームじゃないんだ。皿が見つかるなんてあるわけがない。加藤が寝返ったと見るべきか…。しかし加藤の言うことが万一本当だとしたらマズいのも事実。両方の可能性を考えて行動せねば)

午前5時になろうとしていた。

ガチャ。百目鬼がゆっくりとドアを開ける。

「分かった。行こうか」百目鬼は部屋を施錠すると加藤と食堂へ向かった。

食堂では野崎と成瀬があちこち調べ回っていた。

「白々しい演技はよせ。皿なんて1枚も見つかってないんだろう?」百目鬼は加藤の方をちらりと見る。加藤はあさってを見た。

野崎と成瀬が固まっていると百目鬼の背後から神楽が降りてきた。

「流石だわ…と言いたいところだけどあなたの負けよ。今あなたの部屋の鍵を接着剤で固めてきたわ。これでもうあなたは自分のお皿に触れることはできない。私たちにはさっき割れてなかった1枚がある。形勢逆転ね」

「な、なんだと…!」

百目鬼は慌てて自分の部屋へ駆け戻る。神楽たちもその後を追った。

ガチャガチャ。何とか開錠を試みるがドアはびくともしない。

「ようやく自分の負けが分かったやろ?」

「…くっく。どうやらそのようだな。だが君たちの勝ちもまだ決まってないぞ」

「どういう意味?」

「その皿がなくなれば全員負けってことだ!」百目鬼は近くにあった消火器を振りかざした。

「神楽、逃げて!」3人はまた一階へ避難する。

神楽はトイレに鍵をかけ、野崎と成瀬もキッチンに姿を隠した。

「開けろ!」百目鬼はトイレの前で怒鳴ったがしばらくすると諦めたのか二階へ上がっていった。

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