第12話

「ゲームが終了致しました。結果を発表致しますので皆様食堂へお集りください」

終了のアナウンスが流れると百目鬼が食堂へ戻ってきた。

「くっくっく。実に面白かったよ…ここまで私を追い詰めたのは君が初めてだ。最初にポーカーをした時、君をチームから除外した私の目は間違ってなかったということだ」

神楽は粉まみれになった野崎の手当てをしている。

「それでは皆様のお皿の獲得枚数を発表致します」

音声と同時に巨大なディスプレイに結果が映し出される。

 マミヤ キョウイチ様 …0枚     カトウ ワタル様   …0枚

 カグラ レイ様    …1枚

「残念だったな。相手がこの私で」勝ち誇ったように百目鬼がにやりとする。

 ドウメキ タイガ様  …0枚

「おいおい、何が0枚だ?結果が間違っているではないか」

「いいえ、間違いではございません。百目鬼様の獲得枚数は0枚でございます」

「何を言っている。見えないのか?私の手にあるこの3枚の皿が」

「ではこちらをご覧ください」ディオルバがそう言うとディスプレイに百目鬼が映し出される。二階の廊下で百目鬼が消火器を噴射しようとしている時の映像だ。

「このペンション内には合計800台の小型カメラが設置されています。そしてこちらがゲーム終了時の百目鬼様の映像でございます。加えて全てのお皿には発信機が埋め込まれており、いつ、どなたが、どのお皿を手にしているかを完全に把握しております。間違えるはずはございません」

「いや、ちょっと待て。だとしたらこれはゲーム終了前の映像だ。私の時計は狂ってなどいない。時間を間違えているのはそっちだろう!」

「クスクス。あら、まだ気づかないのかしら。自分が騙されたことに」神楽がゆっくりと立ち上がった。

「騙されただと?」

「ええ、あなたが終了時刻だと思っていた6時10分…あれ嘘なのよ。ゲームは定刻通りに終了していたわ。だからその3枚はカウントされなかったのよ」

「終了時間が嘘だと?そんなわけなかろう。ちゃんとこの仮面の男の声でアナウンスがあったんだ」百目鬼がそう言うと神楽は携帯を取り出した。

…なおゲームが中断されましたので終了時刻は6時10分となります、という音声が携帯から流れる。

「私は念のためルールー説明を録音しておいたの。その時のディオルバさんの声を継ぎはぎして作ったのよ。最初は黒いスーツの男性に嘘のアナウンスを流してほしいと頼んでみたんだけどライヤーゲーム側が嘘はつけないって…まぁ、そりゃそうよね。なら代わりにこの音声を流してほしいとお願いしたらあっさり承諾してくれたわ」

「ふざけるな。ルールを偽る音声を流すなどゲームが破綻している!」

「いいえ、それは違います。我々が作った嘘とプレイヤーが作った嘘では意味合いが全く異なります。現に神楽様の音声は冷静に聞けば誰でも分かる程粗い。それを見抜くことこそがこのゲームの本質ではございませんか」ディオルバが言う。

「ぐ、ぐおおお…」百目鬼の手から3枚の皿がこぼれ落ち砕け散った。

「残念だったわね、こちらが一枚上手ってことかしら」

百目鬼はその場に崩れ落ちた。

「では残りの方の獲得枚数を発表します」

 ノザキ チカコ様   …0枚     ナルセ アオイ様   …2枚

「ええー!?」神楽と野崎が目を皿にする。

「どどど、どういうこと?」

「えへへ。見てください、くっつきましたよ」成瀬が2枚の皿を両手に掲げた。

「あ、アンタそれ…。神楽の接着剤で…?」

「割れててもお皿はお皿ってこと?」神楽が問う。

「左様でございます。しかし発信機を埋め込んだ箇所が欠けていればカウントされません。ですのでお皿を割る行為は禁止とさせて頂きました」

「そ、そうなの…」神楽がどっと疲れた顔をする。

「それでは優勝者の発表を行います。優勝は2枚獲得された成瀬様でございます。賞金は後日お渡し致します。迎えのバスが到着するまで少々お待ちください」

音声が途絶えるとディスプレイも真っ暗になった。

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