第5話
(くそ…。何がチームだ。賞金やるから皿をよこせだと?ふざけやがって。どうせ皿を渡せばお払い箱に決まってる。絶対に渡すものか…)
二階のトイレの洗面で加藤が鏡とにらめっこをしている。
(後で賞金が分配される保証などない。となれば逆に騙して皿を集めるしか…)
トイレから出てきた加藤の考えは半分口から漏れていた。
「ひどい男ね、チームメイトを騙そうだなんて」
びっくりしてのけぞる加藤の前に現れたのは神楽だった。
「な、何のことだ」
「あら、もしかしてチームを作ったことがバレてないとでも思ってるのかしら」
「…。知ってんなら話は早い。負け組はあっちへ行ってろ」
「いいのかしら、そんなこと言って。せっかく儲け話を持ってきてあげたのに」
そう言うと神楽は2枚の皿を加藤に見せた。
「お、お前っ。それどうしたんだよ!」
「あのバカそうな子から騙し取ってきたの。そんなことより私と組まない?そちらのチームからもう一人引き抜けば3人で4枚の皿が集まる。賞金が余るわ」
「…なるほど。確かに悪くない話だ」加藤はしばらく頷いたが顔をしかめた。
「けどよ、そう上手くはいかねえと思うぞ」
「あら、どうして?」
「あの百目鬼って男は誰かに従うような奴じゃねえ。それに真宮って小男も百目鬼の手下みたいなもんだからな。野崎って女は動くかもしれねえが今は皿を奪われるんじゃないかってことしか頭にないだろう」
「大丈夫、それならいい考えがあるわ」
神楽はにっこり笑うと自室まで加藤を連れていった。
部屋に入ると神楽はクローゼットから鞄を取り出した。
「この鞄はロック式になってるから開けられるのは私だけよ」
「…それが?」加藤は首を傾げる。
「この中に私と加藤さんのお皿を入れた後この部屋にも鍵をかけるの。部屋の鍵は加藤さんにお渡しするわ。そうしておけばお互い協力しないとお皿に触れることすらできない…絶対に裏切れない仕組みってわけ。名案でしょ?」
「まあ確かにそうだがそこまでする必要あるか?金銭的にも百目鬼のチームに寝返るメリットはもうねえんだ」
「あら、野崎さんが金銭的なメリットだけじゃ動かないかもと不安がっていたのは加藤さんの方ではなくって?誰が裏切ってもおかしくない百目鬼チームよりも結束の固いところを見せましょうよ。それとも機を見て私を裏切るつもりでした?」
「ったく分かったよ。けど鞄に皿を入れた瞬間に持ち逃げしようとか思うなよ?」
「そんなバカじゃないわ。こんなところで争ってお皿が割れたら事だもの」
神楽は皿の入った鞄に、加藤は部屋に鍵をかけた。
「さ、次は野崎さんよ。私は食堂で待ってるから百目鬼に悟られないように誘い出してきて」
「分かってるよ。けど俺は子分じゃねえんだ。説得はお前がやれよ」
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