第6話
しばらくして加藤に連れられた野崎が食堂へ降りてきた。
「なんや!用があるんやったらここで言うてや」
「野崎さん、お待ちしてましたわ」キッチンから神楽が顔を出す。
「な、なに?なんでアイツがおるん?」
「私と加藤さんはチームを組んだの。既にお皿は3枚あるから野崎さんが入ってくれれば勝ちは確定するわ。いかがかしら」
「3枚?なんで3枚もあるんや?それにそれはどこ?」
「お皿は3枚とも私の部屋にあるわ。そのうち2枚は私と加藤さんのお皿。もう1枚は成瀬って子から騙し取ったものよ」
「…なるほどねぇ。まぁウチも騙せるとしたらあの子やと思ってたけど。ええよ、入ったる。アイツの傍におるのに嫌気がさしてたとこや。けどこれだけは覚えとって。確実な賞金の受け渡し方法が決まるまではこの皿は渡さへん。終了間際のどさくさで言いくるめようとか思っとんやったら甘いで」
「分かったわ。まだ時間はあるもの。お互い信用できる方法を探していきましょう。それはそうと野崎さんお皿は?」
「ああ、ウチの皿はロッカーに置いてある。暗証ボタン式やから安心して」
「なぜそんなところへ?部屋にも鍵がついてるじゃない」
「部屋の鍵が壊されとったんや。てっきりアンタかと思っとったわ」
神楽は少し考えこんで野崎に聞く。
「ねぇ、あなたのお皿今から見せてもらえない?」
「ええけど?」
神楽たちはロビーの奥にあるロッカーへと移動した。
「ないっ!なんで!?」
野崎が開けようとしたロッカーは既に開いていて皿も入ってはいなかった。他のロッカーを開けてみるも何もない。
「やられたわね…」神楽が言う。
「どういうことだ?」加藤が尋ねた。
「百目鬼しかいないじゃない。彼が開けて盗んだのよ」
「…そんな。ここの暗証番号は4桁なんやで?ウチが皿を入れてそんな経ってへんのに1万通りも試したって言うん?」野崎の声は震えている。
「いいえ、36通りよ。同じ番号を使っていなければ24通りね。ほら、まだボタンに薄く粉が付着してるわ。粉はあなたが番号を設定した時に剝がれてしまう。それをもとに彼は使われた番号を炙り出したのよ」
「そ、そんな…」野崎はその場に座り込んだ。
「かっ、情けねえ。お前そもそもなんでここに皿を入れようとしたんだよ。自分で持っときゃよかったろ」加藤はため息をついた。
「アンタみたいな図太い人間には分からへんわ。信用して皿を預けろ、アイツそればっかりや。皿を持ったまま断り続けんのは限度があんねん…」
「鍵を壊したのもそうやって圧をかけたのも全て彼の計算だったってことね」
神楽は野崎の隣に座るとそっと肩に手を置いた。
「あーあ。もうこんなチームじゃ勝てねえなあ…上手くいきそうだったのによ」
そう言うと加藤は階段の方へ歩き出した。
「ちょっとどこへ行くつもり?私たちのお皿はまだ3枚あるのよ。決して負けてなんてないわ」
「いいや負けだね」加藤の顔つきが変わる。
「神楽、残念だがお前の部屋にある皿はすぐ盗られちまう。いくら鍵をかけても鞄の強度なんて知れてるからな」
「そうかしら、鍵は二重よ。鞄は壊せても扉はそう簡単に壊せないわ」
「確かにそうだな…けどその肝心の部屋の鍵を他人に渡しちゃダメだぜ!」
加藤は鍵を神楽に見せつけニヤリと笑うと二階へと駆け上がった。
「…追わへんの?」野崎が問う。
「放っておきましょ。それより紹介したい人がいるの」
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