第4話 剣戟、或いは悲劇の引き金
【登場人物】
★異能:不明
本作の主人公。22歳、駆け出しの小説家。訳あって自宅に探偵事務所を構えている。裏の顔は『
冬哉のもとを訪れた18歳の女子高校生。『
アテン:女性
★異能:《
『
イメリス:女性
★異能:不明
『
ゼル:男性
★異能:不明
『
女性の声:女性
『
チェシャー:性別不明
★異能:不明
かつて冬哉を逢魔が時に閉じ込めた猫。『
【本編】
【《逢魔が時》酉川空音の『
瑠花「ここが、
冬哉「だいぶ荒れてんなぁ。まぁ、9年間も放置されてたらこうなるのも頷けるか。」
《通信》イメリス「ヤバいねこりゃ・・・。街の原型無くしてるもん。」
ゼル「というか、これは街なのでしょうか・・・?」
アテン「至る所に鎖が巻きついてる・・・。一体瑠花ちゃんのお姉さんに何が・・・?」
冬哉「・・・急ぐぞ!」
アテン「待って。」
冬哉「なんだよ!?」
アテン「・・・この『
ゼル「そうですね。では、チーム分けを致しましょう。」
《通信》イメリス「了解っ!じゃあチームは・・・っと。」
《通信》イメリス「アテン・瑠花チームと冬哉・ゼルチームでいいかな?」
冬哉「異論なし!」
瑠花「わかりました!」
アテン「瑠花ちゃん、しっかり着いてきてね。」
瑠花「頼りにしてます!」
ゼル「我々は逢魔掃討を主な作業と致しましょうか。」
冬哉「だな。闘いは男の仕事だ。」
アテン「勿論、私も闘うし、貴方達も捜索してよ?」
冬哉「あったりまえだ!」
《通信》イメリス「では、解散っ!」
アテン&ゼル&冬哉&瑠花「了解!」
【side.アテン&瑠花チーム】
アテン「・・・どう?初めての『
瑠花「想像以上に不気味ですね・・・。こんな所にお姉ちゃんは9年間も留まり続けたのかぁ・・・。」
アテン「無事を祈るばかりね・・・。」
瑠花「・・・!? 何か空から声が聞こえませんか!?この声は・・・。」
アテン「・・・本当だ。女性の声と・・・、」
アテン「———逢魔の声だ。」
瑠花「え?」
【そうアテンが言った次の瞬間、物陰から逢魔が現れた】
瑠花「あ、あれが・・・!?」
アテン「逢魔よ!下がって!」
アテン「・・・はっ!(逢断剣を振るう)」
【逢魔が消滅した】
【・・・が、追加の逢魔が迫ってくる】
アテン「チッ!数が多い!」
瑠花「・・・! アテンさん!後ろからもゾロゾロ来てますっ!」
アテン「・・・この数を一人で捌くのは骨が折れるわね。」
瑠花「どうしましょう!?」
《通信》イメリス「アテン!ISGを使えっ!」
アテン「わかってるっ!」
アテン「・・・ISG-S-01、起動!」
【アテンはISG-S-01『対逢魔用閃光弾』を逢魔の群れに投げ込んだ】
アテン「お願い、効いてっ!」
【ISG-S-01『対逢魔用閃光弾』は眩い光を放ち、逢魔たちの動きを止めた】
瑠花「す、すごい・・・!」
アテン「感心している場合じゃない!早く逃げるわよ!」
瑠花「は、はいっ!」
【瑠花、アテンは逢魔の群れを抜け出し駆け抜ける】
アテン「・・・イメリスっ!」
《通信》イメリス「なーに?」
アテン「冬哉・ゼルチームにここの座標を送って、殲滅を依頼して!」
《通信》イメリス「OKっ!」
瑠花「どうして私たちの所に大量の逢魔が・・・?」
アテン「(独白)・・・もしかして、瑠花ちゃんを狙ってる?それに、逢魔の声に混じって聞こえた女性の声・・・、まさかっ!」
瑠花「・・・? どうしたんですか、アテンさん?」
アテン「・・・逢魔の声に混じって聞こえたあの女性の声って、」
瑠花「・・・今、私もその話をしようと思ってました。」
アテン「と、いうことは・・・。」
瑠花「・・・はい。あの声は、」
瑠花「———間違いなく、お姉ちゃんの声です。」
【side.冬哉&ゼルチーム】
【こちらも別の逢魔の群れと応戦していた】
冬哉「・・・くっそ!わらわらと湧いて出てきやがってっ!」
ゼル「このままでは劣勢になるばかりですね・・・。」
冬哉「わかってる! チッ、あの大型ISGを使うしかないか・・・?」
ゼル「・・・冬哉さま。私がなんとか致します。」
冬哉「・・・まさか、やるのか?」
ゼル「おや?心配なされているのですか?・・・私とて、神でございます。」
冬哉「・・・。」
【冬哉がゼルにこの場を託すかどうかを悩んでいると、イメリスの通信が聞こえてきた】
《通信》イメリス「おい、聞こえるか!?」
冬哉「・・・イメリス!?どうした!?」
《通信》イメリス「アテン&瑠花チームが襲撃された!」
冬哉「今こっちも襲撃に遭ってる!」
《通信》イメリス「う、嘘!?」
冬哉「・・・ゼル。」
【冬哉、ゼルに眴をする】
ゼル「・・・承知致しました。」
冬哉「すまん!頼んだぞゼル!」
冬哉「・・・逢魔ども、そこを退けぇッ!」
【冬哉、逢魔の群れを斬り抜けてアテン&瑠花チームの元へ向かう】
【ゼル、逢魔の群れに囲まれ孤立する】
ゼル「・・・さて、」
ゼル「あれだけ期待をされるのはいつぶりでしょうか。」
ゼル「期待というものは、いつになっても嬉しいものですね。」
ゼル「(空を仰ぎ)———そうだろう?我が盟友よ。」
ゼル「私は、冬哉さまの期待に応えねばねらない。」
ゼル「・・・それが、
【ゼル、深呼吸をし精神を整える】
ゼル「・・・目を凝らせ、これが我が
ゼル「———我、数多の屍を踏み越えし者。
死という名の至高の畏怖、忘るるなかれ。
汝に、神の裁きを下さん・・・!
———《
【———ゼルの異能、『《
【ゼルの目に、逢魔の『弱心』が映る】
ゼル「・・・お前たちの『弱心』、視えたッ! はあっ!」
【ゼルが逢魔を次々と倒していく】
【そして・・・】
ゼル「フゥー・・・。お前で最後だ。」
【ゼルは最後に残った逢魔を容赦なく斬り伏せた】
ゼル「・・・片付きましたかね。」
【ゼルの周りにはまだ逢魔の屍が残っている】
【・・・ゼルの剣戟が逢魔消滅のスピードより速かったということだ】
ゼル「さて、冬哉さま達と合流しますかね。」
ゼル「イメリス、居ますか?」
《通信》イメリス「・・・流石だね、ゼル。」
ゼル「・・・長き修行の成果でございます。」
《通信》イメリス「今座標を送った。早く行ってあげな。」
ゼル「・・・もちろん。放っておく訳にはいきませんから。」
【side.アテン&瑠花チーム】
《通信》イメリス「今そっちに冬哉と、遅れてゼルも向かってる!」
アテン「ありがとう。それで・・・。」
瑠花「・・・。」
アテン「お姉ちゃんの声が聞こえた、か。妙に反響していたけれど・・・。」
【その時、また姉の声と思われる濁声が空から響き渡る】
女性の声「あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ”!」
瑠花「い、嫌っ!(咄嗟に耳を塞ぐ)」
アテン「・・・とても苦しそうね。いったい何処から聞こえて・・・。」
【困惑していると、そこに冬哉が駆けつけてきた】
冬哉「大丈夫か!?」
アテン「私は平気。それより・・・。」
瑠花「・・・うっ(耳を塞ぎ、涙ぐむ)」
冬哉「・・・俺も、さっきの声は聞こえた。それに反応してるってことは、まさか・・・?」
アテン「瑠花ちゃん曰く、姉の声なんだって。」
冬哉「悲痛な叫びだったな。まるで昔の俺のようだった。」
アテン「・・・まずは、逢魔の殲滅よ。」
冬哉「ああ、そうだった。瑠花ちゃん、どっかの物陰に隠れときな。さっさと片付けてくっから。」
瑠花「・・・(静かに頷き、物陰に隠れた)」
アテン「・・・逢魔は恐らく、顕現者と密接な関わりのある瑠花ちゃんを狙っている。早めに片付けて、脅威を減らしましょう。」
冬哉「ああ。」
【しばらくして、ゼルが合流。逢魔を殲滅した】
《通信》イメリス「一帯の逢魔反応、消失。もう出てきていいぞ。」
瑠花「・・・は、はい。」
ゼル「お怪我はありませんか?」
瑠花「け、怪我はないです。それより・・・。」
アテン「それより?」
瑠花「———さっき、喋る猫に会ったんですけれど。」
『逢魔を征く者』メンバー全員「・・・!?」
瑠花「え・・・?皆さん、どうされたんですか?」
冬哉「・・・そいつは何処に行った」
【冬哉は顔を怒りに染め上げる】
瑠花「え・・・。わ、わかりません。一瞬目を離した隙に逃げられちゃいました。」
冬哉「・・・クソッ!」
ゼル「・・・冷静になってください。」
アテン「そうよ。・・・あいつを追うのも目的ではあるけれどもね。」
瑠花「あの猫って一体なんなんですか?」
冬哉「・・・昔、俺を
瑠花「え・・・!?」
アテン「あいつ、他にも多数の人間を
《通信》イメリス「もしかしたら、瑠花ちゃんのお姉さんも・・・。」
瑠花「・・・許せない」
《通信》イメリス「い、いや、まだアイツのせいでお姉さんが拐われたと決まった訳じゃ・・・。」
瑠花「・・・お姉ちゃんをあの猫が拐っていなくても、冬哉さんを拐ったのは許せません。」
冬哉「・・・言うじゃないか。」
ゼル「・・・それで、瑠花さんはあの猫から何を聞いたのです?」
瑠花「あ、はい。えーっと確か・・・。」
【回想・瑠花とチェシャーの邂逅】
瑠花「・・・。」
【『逢魔を征く者』の闘いをじっと見つめている瑠花の後ろに何かが近づく】
瑠花「(気配に気付き)だ、誰!?」
チェシャー「おや、私の気配に気付くとはやりますにゃあ〜。」
瑠花「ね、猫!? しゃ、喋ってる・・・!」
チェシャー「・・・貴女、酉川瑠花さんですかにゃ?」
瑠花「え!?どうして・・・?」
チェシャー「私は人間観察が趣味でにゃぁ〜。ふっふっふ・・・。」
瑠花「・・・わ、私に何の用ですか?」
チェシャー「いやぁ、特に何もありませんにゃぁ。ただ興味本位で話しに来ただけの、ただの猫ですにゃ。」
チェシャー「あ、そうだにゃ。折角ですから自己紹介でもしてあげましょうかにゃぁ。」
瑠花「・・・?」
チェシャー「んー、コホン。」
チェシャー「———私の名前はチェシャー。『
【回想終了】
冬哉「『
アテン「それに、サブリーダーってことは・・・。」
ゼル「・・・裏に、リーダーがいるということですね。」
《通信》イメリス「チェシャー・・・それがアイツの名前なのか。」
冬哉「チェシャー、か。俺が会った時とは随分口調が違うが・・・?」
アテン「恐らく、人によって口調を変えてるのよ。
《通信》イメリス「・・・まさしく『道化』、だな。」
冬哉「とにかく、ここにチェシャーが居るってことは、この事件にその『
アテン「・・・そうね。」
《通信》イメリス「こっからは固まって行動しよう。さっきみたいな事があったら危ないからな。」
瑠花「・・・わかりました。」
ゼル「よし、それでは参りま・・・」
【ゼルの言葉を遮るように、あの濁声が空から聞こえてきた】
【しかし、先程とは様子が違う】
女性の声「うっ・・・。こ、此処は・・・?」
瑠花「お、お姉ちゃんっ! 私はここだよっ!」
女性の声「私は・・・。私は・・・。」
瑠花「お、ねえ、ちゃん・・・?」
女性の声「———私は、誰?」
冬哉&アテン&ゼル&イメリス&瑠花「・・・っ!?」
逢魔を征く者 Un:TaIk @tuna_1724
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