第4話 剣戟、或いは悲劇の引き金

【登場人物】




白波しらなみ 冬哉とうや:男性

★異能:不明


本作の主人公。22歳、駆け出しの小説家。訳あって自宅に探偵事務所を構えている。裏の顔は『逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』の精鋭。




酉川とりかわ 瑠花るか:女性


冬哉のもとを訪れた18歳の女子高校生。『逢魔が時ダスクエリア』絡みの事件依頼者。




アテン:女性

★異能:《鍵護ゲート・キーパー


逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』のリーダーであり、かつて冬哉を救った神。人界に紛れ込み、『逢魔が時ダスクエリア』絡みの事件を追っている。




イメリス:女性

★異能:不明


逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』のメンバー。主に後方支援をしていて、武器や便利な道具などの製作に長けている。冬哉を実験台にすることもしばしば・・・。何かと冬哉にちょっかいを出す子供っぽい神。




ゼル:男性

★異能:不明


逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』のメンバー。『逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』一の剣の使い手。冬哉に『逢魔が時ダスクエリア』での闘い方を教えた年老いた神。




女性の声:女性


逢魔が時ダスクエリア』に響き渡る濁声。瑠花によると姉の声だそうだが・・・?




チェシャー:性別不明

★異能:不明


かつて冬哉を逢魔が時に閉じ込めた猫。『逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』を掻き乱す。




【本編】




【《逢魔が時》酉川空音の『逢魔が時ダスクエリア』内部】


瑠花「ここが、逢魔が時ダスクエリア・・・!」


冬哉「だいぶ荒れてんなぁ。まぁ、9年間も放置されてたらこうなるのも頷けるか。」


《通信》イメリス「ヤバいねこりゃ・・・。街の原型無くしてるもん。」


ゼル「というか、これは街なのでしょうか・・・?」


アテン「至る所に鎖が巻きついてる・・・。一体瑠花ちゃんのお姉さんに何が・・・?」


冬哉「・・・急ぐぞ!」


アテン「待って。」


冬哉「なんだよ!?」


アテン「・・・この『逢魔が時ダスクエリア』、かなり広いわ。固まって動いていると発見に時間がかかる。」


ゼル「そうですね。では、チーム分けを致しましょう。」


《通信》イメリス「了解っ!じゃあチームは・・・っと。」


《通信》イメリス「アテン・瑠花チームと冬哉・ゼルチームでいいかな?」


冬哉「異論なし!」


瑠花「わかりました!」


アテン「瑠花ちゃん、しっかり着いてきてね。」


瑠花「頼りにしてます!」


ゼル「我々は逢魔掃討を主な作業と致しましょうか。」


冬哉「だな。闘いは男の仕事だ。」


アテン「勿論、私も闘うし、貴方達も捜索してよ?」


冬哉「あったりまえだ!」


《通信》イメリス「では、解散っ!」


アテン&ゼル&冬哉&瑠花「了解!」




【side.アテン&瑠花チーム】




アテン「・・・どう?初めての『逢魔が時ダスクエリア』は?」


瑠花「想像以上に不気味ですね・・・。こんな所にお姉ちゃんは9年間も留まり続けたのかぁ・・・。」


アテン「無事を祈るばかりね・・・。」


瑠花「・・・!? 何か空から声が聞こえませんか!?この声は・・・。」


アテン「・・・本当だ。女性の声と・・・、」


アテン「———逢魔の声だ。」


瑠花「え?」


【そうアテンが言った次の瞬間、物陰から逢魔が現れた】


瑠花「あ、あれが・・・!?」


アテン「逢魔よ!下がって!」


アテン「・・・はっ!(逢断剣を振るう)」


【逢魔が消滅した】


【・・・が、追加の逢魔が迫ってくる】


アテン「チッ!数が多い!」


瑠花「・・・! アテンさん!後ろからもゾロゾロ来てますっ!」


アテン「・・・この数を一人で捌くのは骨が折れるわね。」


瑠花「どうしましょう!?」


《通信》イメリス「アテン!ISGを使えっ!」


アテン「わかってるっ!」


アテン「・・・ISG-S-01、起動!」


【アテンはISG-S-01『対逢魔用閃光弾』を逢魔の群れに投げ込んだ】


アテン「お願い、効いてっ!」


【ISG-S-01『対逢魔用閃光弾』は眩い光を放ち、逢魔たちの動きを止めた】


瑠花「す、すごい・・・!」


アテン「感心している場合じゃない!早く逃げるわよ!」


瑠花「は、はいっ!」


【瑠花、アテンは逢魔の群れを抜け出し駆け抜ける】


アテン「・・・イメリスっ!」


《通信》イメリス「なーに?」


アテン「冬哉・ゼルチームにここの座標を送って、殲滅を依頼して!」


《通信》イメリス「OKっ!」


瑠花「どうして私たちの所に大量の逢魔が・・・?」


アテン「(独白)・・・もしかして、瑠花ちゃんを狙ってる?それに、逢魔の声に混じって聞こえた女性の声・・・、まさかっ!」


瑠花「・・・? どうしたんですか、アテンさん?」


アテン「・・・逢魔の声に混じって聞こえたあの女性の声って、」


瑠花「・・・今、私もその話をしようと思ってました。」


アテン「と、いうことは・・・。」


瑠花「・・・はい。あの声は、」




瑠花「———間違いなく、お姉ちゃんの声です。」




【side.冬哉&ゼルチーム】


【こちらも別の逢魔の群れと応戦していた】


冬哉「・・・くっそ!わらわらと湧いて出てきやがってっ!」


ゼル「このままでは劣勢になるばかりですね・・・。」


冬哉「わかってる! チッ、あの大型ISGを使うしかないか・・・?」


ゼル「・・・冬哉さま。私がなんとか致します。」


冬哉「・・・まさか、やるのか?」


ゼル「おや?心配なされているのですか?・・・私とて、神でございます。」


冬哉「・・・。」


【冬哉がゼルにこの場を託すかどうかを悩んでいると、イメリスの通信が聞こえてきた】


《通信》イメリス「おい、聞こえるか!?」


冬哉「・・・イメリス!?どうした!?」


《通信》イメリス「アテン&瑠花チームが襲撃された!」


冬哉「今こっちも襲撃に遭ってる!」


《通信》イメリス「う、嘘!?」


冬哉「・・・ゼル。」


【冬哉、ゼルに眴をする】


ゼル「・・・承知致しました。」


冬哉「すまん!頼んだぞゼル!」


冬哉「・・・逢魔ども、そこを退けぇッ!」


【冬哉、逢魔の群れを斬り抜けてアテン&瑠花チームの元へ向かう】


【ゼル、逢魔の群れに囲まれ孤立する】


ゼル「・・・さて、」


ゼル「あれだけ期待をされるのはいつぶりでしょうか。」


ゼル「期待というものは、いつになっても嬉しいものですね。」


ゼル「(空を仰ぎ)———そうだろう?我がよ。」


ゼル「私は、冬哉さまの期待に応えねばねらない。」


ゼル「・・・それが、盟友お前と結んだ約束だからだ。」


【ゼル、深呼吸をし精神を整える】


ゼル「・・・目を凝らせ、これが我が剣の極致異能だ!」




ゼル「———我、数多の屍を踏み越えし者。

   死という名の至高の畏怖、忘るるなかれ。

   汝に、神の裁きを下さん・・・!

   ———《威戒リベレーション・プレッシャー》!」




【———ゼルの異能、『《業威カルマ・パニッシャー》』が発動した。】


【ゼルの目に、逢魔の『弱心』が映る】


ゼル「・・・お前たちの『弱心』、視えたッ! はあっ!」


【ゼルが逢魔を次々と倒していく】


【そして・・・】


ゼル「フゥー・・・。お前で最後だ。」


【ゼルは最後に残った逢魔を容赦なく斬り伏せた】


ゼル「・・・片付きましたかね。」


【ゼルの周りにはまだ逢魔の屍が残っている】


【・・・ゼルの剣戟が逢魔消滅のスピードより速かったということだ】


ゼル「さて、冬哉さま達と合流しますかね。」


ゼル「イメリス、居ますか?」


《通信》イメリス「・・・流石だね、ゼル。」


ゼル「・・・長き修行の成果でございます。」


《通信》イメリス「今座標を送った。早く行ってあげな。」


ゼル「・・・もちろん。放っておく訳にはいきませんから。」




【side.アテン&瑠花チーム】


《通信》イメリス「今そっちに冬哉と、遅れてゼルも向かってる!」


アテン「ありがとう。それで・・・。」


瑠花「・・・。」


アテン「お姉ちゃんの声が聞こえた、か。妙に反響していたけれど・・・。」


【その時、また姉の声と思われる濁声が空から響き渡る】


女性の声「あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ”!」


瑠花「い、嫌っ!(咄嗟に耳を塞ぐ)」


アテン「・・・とても苦しそうね。いったい何処から聞こえて・・・。」


【困惑していると、そこに冬哉が駆けつけてきた】


冬哉「大丈夫か!?」


アテン「私は平気。それより・・・。」


瑠花「・・・うっ(耳を塞ぎ、涙ぐむ)」


冬哉「・・・俺も、さっきの声は聞こえた。それに反応してるってことは、まさか・・・?」


アテン「瑠花ちゃん曰く、姉の声なんだって。」


冬哉「悲痛な叫びだったな。まるで昔の俺のようだった。」


アテン「・・・まずは、逢魔の殲滅よ。」


冬哉「ああ、そうだった。瑠花ちゃん、どっかの物陰に隠れときな。さっさと片付けてくっから。」


瑠花「・・・(静かに頷き、物陰に隠れた)」


アテン「・・・逢魔は恐らく、顕現者と密接な関わりのある瑠花ちゃんを狙っている。早めに片付けて、脅威を減らしましょう。」


冬哉「ああ。」


【しばらくして、ゼルが合流。逢魔を殲滅した】


《通信》イメリス「一帯の逢魔反応、消失。もう出てきていいぞ。」


瑠花「・・・は、はい。」


ゼル「お怪我はありませんか?」


瑠花「け、怪我はないです。それより・・・。」


アテン「それより?」


瑠花「———さっき、喋る猫に会ったんですけれど。」


『逢魔を征く者』メンバー全員「・・・!?」


瑠花「え・・・?皆さん、どうされたんですか?」


冬哉「・・・そいつは何処に行った」


【冬哉は顔を怒りに染め上げる】


瑠花「え・・・。わ、わかりません。一瞬目を離した隙に逃げられちゃいました。」


冬哉「・・・クソッ!」


ゼル「・・・冷静になってください。」


アテン「そうよ。・・・あいつを追うのも目的ではあるけれどもね。」


瑠花「あの猫って一体なんなんですか?」


冬哉「・・・昔、俺を逢魔が時ダスクエリアに迷い込ませた元凶だ。」


瑠花「え・・・!?」


アテン「あいつ、他にも多数の人間を逢魔が時ダスクエリアに迷い込ませてるの。」


《通信》イメリス「もしかしたら、瑠花ちゃんのお姉さんも・・・。」


瑠花「・・・許せない」


《通信》イメリス「い、いや、まだアイツのせいでお姉さんが拐われたと決まった訳じゃ・・・。」


瑠花「・・・お姉ちゃんをあの猫が拐っていなくても、冬哉さんを拐ったのは許せません。」


冬哉「・・・言うじゃないか。」


ゼル「・・・それで、瑠花さんはあの猫から何を聞いたのです?」


瑠花「あ、はい。えーっと確か・・・。」




【回想・瑠花とチェシャーの邂逅】


瑠花「・・・。」


【『逢魔を征く者』の闘いをじっと見つめている瑠花の後ろに何かが近づく】


瑠花「(気配に気付き)だ、誰!?」


チェシャー「おや、私の気配に気付くとはやりますにゃあ〜。」


瑠花「ね、猫!? しゃ、喋ってる・・・!」


チェシャー「・・・貴女、酉川瑠花さんですかにゃ?」


瑠花「え!?どうして・・・?」


チェシャー「私は人間観察が趣味でにゃぁ〜。ふっふっふ・・・。」


瑠花「・・・わ、私に何の用ですか?」


チェシャー「いやぁ、特に何もありませんにゃぁ。ただ興味本位で話しに来ただけの、ただの猫ですにゃ。」


チェシャー「あ、そうだにゃ。折角ですから自己紹介でもしてあげましょうかにゃぁ。」


瑠花「・・・?」


チェシャー「んー、コホン。」




チェシャー「———私の名前はチェシャー。『悲劇の先導者ルーイン・トリガー』のサブリーダーですにゃ。」




【回想終了】


冬哉「『悲劇の先導者ルーイン・トリガー』・・・。聞いたことないな。」


アテン「それに、サブリーダーってことは・・・。」


ゼル「・・・裏に、リーダーがいるということですね。」


《通信》イメリス「チェシャー・・・それがアイツの名前なのか。」


冬哉「チェシャー、か。俺が会った時とは随分口調が違うが・・・?」


アテン「恐らく、人によって口調を変えてるのよ。チェシャーあいつは人を陥れる事に躊躇いがない。寧ろ、楽しんでる。」


《通信》イメリス「・・・まさしく『道化』、だな。」


冬哉「とにかく、ここにチェシャーが居るってことは、この事件にその『悲劇の先導者ルーイン・トリガー』ってのが関わってる可能性が高いな。」


アテン「・・・そうね。」


《通信》イメリス「こっからは固まって行動しよう。さっきみたいな事があったら危ないからな。」


瑠花「・・・わかりました。」


ゼル「よし、それでは参りま・・・」


【ゼルの言葉を遮るように、あの濁声が空から聞こえてきた】


【しかし、先程とは様子が違う】


女性の声「うっ・・・。こ、此処は・・・?」


瑠花「お、お姉ちゃんっ! 私はここだよっ!」


女性の声「私は・・・。私は・・・。」


瑠花「お、ねえ、ちゃん・・・?」




女性の声「———私は、誰?」




冬哉&アテン&ゼル&イメリス&瑠花「・・・っ!?」

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逢魔を征く者 Un:TaIk @tuna_1724

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