第2話 秘密の喫茶店

【登場人物】




白波しらなみ 冬哉とうや:男性


本作の主人公。22歳、駆け出しの小説家。訳あって自宅に探偵事務所を構えている。裏の顔は『逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』の精鋭。




酉川とりかわ 瑠花るか:女性


冬哉のもとを訪れた18歳の女子高校生。『逢魔が時ダスクエリア』絡みの事件依頼者。




アテン(偽名・天野あまの 真理亜まりあ):女性


逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』のリーダーであり、かつて冬哉を救った神。偽名を使いつつ人界に紛れ込み、『逢魔が時ダスクエリア』絡みの事件を追っている。




マスター:男性


謎の喫茶店『Imageryイメジェリー』のマスター。その正体は・・・?




【本編】




【しばらく歩き、とある廃ビルの前】


アテン「・・・着いたわよ。」


瑠花「・・・え?ここって、廃ビル・・・ですよね?」


冬哉「ああそうさ。ここが目的地だ。」


瑠花「ここに喫茶店があるんですか・・・?」


冬哉「それじゃあアテン、いつものよろしくぅ!」


アテン「オーケー。瑠花ちゃん、下がってて。」


瑠花「ふぇ?」


【アテン、廃ビルの壁に手を当て】


アテン「———《解錠ゲート・オープン》。」


【アテンがそう呟くと、廃ビルの壁が轟音を立て始める。】


【その轟音と共に、廃ビルの壁に扉が現れた】


瑠花「え?・・・えぇぇぇぇぇぇ!?」


冬哉「流石に驚きすぎだろ・・・。ほら、行くぞ。」


瑠花「・・・ふぉわー(放心状態)」


アテン「・・・ほら、ぼさっとしてないで!(瑠花の手を引く)」


瑠花「う、うわっ!」


【喫茶店・『Imageryイメジェリー』店内】


瑠花「(手を引かれ)っとっとっと・・・。うわっ!地下にこんな喫茶店が・・・!」


アテン「ようこそ。私たちの隠れ家へ。」


瑠花「か、隠れ家!?」


冬哉「ああ、その通りさ!・・・そうだよな、マスター?」


マスター「・・・そうですね(呆れたように)。」


冬哉「ほらな?(謎のドヤ顔)」


瑠花「・・・冬哉さんも、真理亜さんも、一体何者なんで(冬哉の言葉に遮られる)」


冬哉「(瑠花の言葉を遮る)まぁまぁ、詳しい話は席に座ってから、な?」


瑠花「は、はぁ。」


【三人、カウンター席に座る】


マスター「・・・ご注文は?」


冬哉「俺はいつもので。」


マスター「・・・いつもの、と言えるほどここで頼んでいないでしょう。」


冬哉「つれないなぁ。言ってみたかったんだよ。」


マスター「・・・(溜息)。全く。」


冬哉「・・・それじゃ、ブラックで。」


アテン「・・・飲めたっけ?」


冬哉「舐めんな。俺は執筆してる時いつも飲んでんだよ。」


アテン「へー」


冬哉「興味なさそうだな・・・。」


アテン「だって興味ないもの。」


冬哉「うーっわ辛辣ぅ」


瑠花「・・・ふふっ。」


冬哉「ん?どした?」


瑠花「いや、お二人は仲良しだなぁ、と思って。」


冬哉&アテン

「仲良くねえよ! 仲良くないわよ!」


瑠花「ほらっ!」


冬哉&アテン「・・・〜〜〜っ!(互いに睨み合う)」


【しばらく睨み合い・・・】


冬哉「っと、こんな茶番は置いといて・・・。真理亜と依頼人ちゃんも早く頼めよ。」


アテン「はいはい・・・。」


瑠花「早く決めないとですね・・・!」


アテン「・・・じゃあ私はカフェオレで。」


瑠花「わ、私は・・・そのぉ・・・。(顔を赤くする)」


アテン「どうしたの?顔真っ赤よ?」


瑠花「・・・オ、オレンジジュース、で。」


マスター「・・・あいよ。」


冬哉「・・・。(瑠花をじーっと見つめる)」


瑠花「な、なんですかその目!いいじゃないですか!高校生がオレンジジュース頼んでも!」


冬哉「いやいや、別に悪いとは言ってないぞ。ただ・・・。」


瑠花「た、ただ・・・?」


冬哉「・・・そんな些細なことで思い悩んでたのかって思ってさ!あっはははwww」


瑠花「ば、馬鹿にしないでくださいっ!」


冬哉「(笑い転げる)」


アテン「・・・駄目だ、ツボに入ってる。」


【数分後、冬哉の笑いが治ると同時に、注文の飲み物が届いた】


瑠花「・・・冬哉さん、大丈夫ですか?」


冬哉「あ、あぁ。もう大丈夫だ。」


アテン「全くもう・・・。手間かけさせないでよね。」


冬哉「す、すまん。(咳払い)・・・それで、俺に依頼したいことは?えーっと・・・。」


瑠花「あ、自己紹介がまだでしたね。私の名前は酉川とりかわ瑠花るかです。」


冬哉「OK。瑠花だな。じゃあ瑠花ちゃん、改めて聞くが俺に依頼したいことって?」


瑠花「———姉を、探して欲しいんです。」


冬哉「・・・ほう?お姉さんがいるのか。お姉さんの名前は?」


瑠花「酉川とりかわ空音くおんです。」


冬哉「・・・一応聞くが、警察には?」


瑠花「・・・(静かに首を振る)。消息不明になった場所も時刻も不明。そして痕跡が全くないって。」


冬哉「・・・いつから行方不明なんだ?」


瑠花「・・・今から約9年前。」


冬哉「き、9年前!?」


瑠花「・・・私は9年間、学校に通いながらずっと、姉が失踪した事件の手がかりを探してました。でも、何も無くって。もう、死んじゃったのかなって・・・。」


冬哉「・・・。」


アテン「・・・そして、私が彼女を見つけた。」


瑠花「はい。真理亜さんが『事件を解決してあげられるかも』って・・・。」


冬哉「・・・真理亜。そういう事なんだな。」


アテン「・・・ええ。この事件にが深く関わっていることは、間違いない。」


瑠花「・・・あの、さっきも言いそびれたんですけど、お二人って一体何者なんですか?」


冬哉「・・・もう、この喫茶店に訪れてるんだし、いいよな?真理亜。」


アテン「・・・許可するわ。」


冬哉「・・・じゃ、遠慮なく。」


瑠花「・・・?」


冬哉「いきなりで信じられないとは思うが、聞いてくれ。俺たちは・・・。」


冬哉「———怪物をぶっ倒す仕事をしてんだ。」


瑠花「・・・はい?」


アテン「私たちは人界、いわゆる現世で探偵として活動している。とある事件専門でね。」


瑠花「もしかして、冬哉さんが言ってる『怪物』に関係する事件・・・?」


アテン「その通り。私たちはその事件を『逢魔が時ダスクエリア』事件と呼んでいる。」


瑠花「『逢魔が時ダスクエリア』?」


冬哉「『逢魔が時ダスクエリア』ってのは、『逢魔』っていう怪物がうじゃうじゃいる異世界のことだ。」


アテン「その『逢魔が時ダスクエリア』にお姉さんが居るかもしれないっていう話。」


瑠花「お姉ちゃんがどうして・・・。」


冬哉「それは俺たちにもわからん。ただ、『逢魔が時ダスクエリア』に足を踏み入れちまう奴らには、一つ共通点がある。」


瑠花「共通点・・・?」


冬哉「『心に深い闇を持ってる人間』ってことだ。」


瑠花「・・・!?」


冬哉「どうした?・・・もしかして、心当たりがあんのか!?」


瑠花「・・・確証ではないんですが、お姉ちゃん、学校から帰ってくる時、いっつも暗い顔してました。」


冬哉「まさか、これって・・・!?」


アテン「ええ。冬哉が経験したケースと類似している可能性があるわね。」


冬哉「・・・こりゃ、みすみす見逃すわけにはいかねえな。」


瑠花「・・・依頼、受けてくださるんですか!?」


冬哉「ああ!この『逢魔探偵事務所』の探偵、白波冬哉がその依頼、引き受けた!」


瑠花「・・・有難うございます!」


冬哉「お礼は解決してからにしてくれ。じゃあアテン・・・って、あ。」


瑠花「・・・アテン?」


アテン「(溜息)、別にいいわよ。『逢魔が時ダスクエリア』について話したんだし。」


瑠花「?????」


アテン「瑠花ちゃん。私の名前は真理亜じゃないの。」


瑠花「えぇ!?」


冬哉「真理亜は偽名。人界に紛れやすくするためのな。こいつの本当の名前はアテン。一応、神様だぜ?」


アテン「一応ってなによ」


瑠花「・・・。(放心)」


アテン「あ、また放心状態になった」


冬哉「まだまだぁ!アテン、追い討ちだ!」


アテン「追い討ちって何を!?」


冬哉「ほら、本部に繋がる と・び・ら 開けちまえ!」


アテン「えぇ・・・この子の前でやるの!?」


冬哉「・・・いいよな?瑠花?」


瑠花「・・・。(放心)」


冬哉「・・・沈黙は肯定、っと。やっちまえ!」


アテン「・・・どうなっても知らないわよ!」


アテン「———《解錠ゲート・オープン》ッ!」


【アテンがそう唱えると、喫茶店の最奥にある大扉が開いた】


アテン「・・・瑠花ちゃんはどうするの!?」


冬哉「・・・しゃあない、俺がおぶってくか。」


冬哉「(瑠花を背負う)よい、しょっと・・・。なんか最近俺背負ってばっかだな・・・。」


アテン「行くわよ!」


冬哉「・・・じゃ、マスターまたな!」


マスター「行ってらっしゃいませ。」


【三人、大扉の中を進んでいく】


【しばらくして、大扉が音を立てながら閉まっていった】


マスター「・・・システム、スリープモードへ移行。」


【そういうと、マスターは動かなくなった】

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