第1話 新たなる依頼

【登場人物】




白波しらなみ 冬哉とうや:男性


本作の主人公。22歳、駆け出しの小説家。訳あって自宅に探偵事務所を構えている。裏の顔は『逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』の精鋭。




酉川とりかわ 瑠花るか:女性


冬哉のもとを訪れた18歳の女子高校生。どうやら冬哉に頼みたいことがあるようだ。




アテン(偽名・天野あまの 真理亜まりあ):女性


逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』のリーダーであり、かつて冬哉を救った神。偽名を使いつつ人界に紛れ込み、『逢魔が時ダスクエリア』絡みの事件を追っている。




イメリス:女性


逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』のメンバー。主に後方支援をしていて、武器や便利な道具などの製作に長けている。冬哉を実験台にすることもしばしば・・・。




子供:男女どちらでも


前話にて、『逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』が救い出した子供。




母親:女性


子供の母親。




【本編】




【『空白の逢魔が時エンプティ・ダスクエリア』から帰還。冬哉の独白】


冬哉「俺の名前は白波冬哉。まだまだ駆け出しの小説家だ。そんでもって、探偵でもある。まぁ、とある分野専門の探偵だがな。」


冬哉「・・・俺は数年前、摩訶不思議な世界『逢魔が時』に足を踏み入れた。そこには、自分自身の心の闇である『逢魔』達が跳梁跋扈していた。俺は、その逢魔ってのに襲われそうになったんだ。そこにだ。」


冬哉「突然、剣を携えた少女が逢魔をぶった斬った。あぁ、そん時は驚きすぎて目ん玉が飛び出るかと思ったぜ。」


冬哉「それから、なんやかんやあってその少女、『アテン』と共に逢魔を倒していった。」


冬哉「そして、最終的にはラスボス的な逢魔を撃破した!(誇らしげに)」


冬哉「・・・そんで、こっからが本題だ。俺は逢魔が時から脱出する際、そこで起きたあらゆる事象を忘れるらしいんだが・・・。」


冬哉「———なんでか知らんが俺は逢魔が時での出来事を覚えている。」


冬哉「その後、俺はアテンと再会し、アテン率いる組織『逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』に加入することにした。・・・まぁ、成人するまでは入んなとは言われたが。」


冬哉「・・・その決断から時が経ち、俺は成人し『逢魔を征く者ダスク・トラベラーズ』への加入が許可された。」


冬哉「俺は、頼りになる仲間達と共に『逢魔が時ダスクエリア』関連の事件を解決するため、探偵として活動をしている。」


【独白終了、《人界・昼》冬哉の自宅前】


【イメリスと通信中】


冬哉「・・・っと、まだ寝てんな。ぐっすりだこと。」


《通信》イメリス「いいじゃないか。寝る子は育つってやつだよ。」


冬哉「精神的にも成長して、もう俺たちのお世話にならないことを願うばかりだ。」


《通信》イメリス「えぇ〜、その子、冬哉の背中で気持ちよさそーに寝てんのに、それは酷いんじゃないかい?」


冬哉「・・・イメリス、本気で言ってんのか?」


《通信》イメリス「・・・冗談に決まってるだろう?そう怒んなってぇ。」


冬哉「・・・さっさと母親の元に届けて、本来の生活に戻ってもらわないと。」


《通信》イメリス「それじゃ、その子の母親に連絡入れとくね〜」


冬哉「頼んだ。早くこの体勢から抜け出したい・・・。」


《通信》イメリス「おやぁ?新進気鋭の冬哉サマがこの程度で音を上げるんですかぁ〜?」


冬哉「・・・そんな口を利くなら、もう道具の試運転には付き合わないぞ?」


《通信》イメリス「・・・すんませんした。」


冬哉「わかればよろしい。」


子供「・・・うーん?」


冬哉「あ、起きた。」


子供「・・・おにいさん、だあれ?」


冬哉「俺?俺はねぇ・・・」


冬哉「———通りすがりの、旅人さ。」


【数分後、母親が現れた】


冬哉「・・・あ、こっちですー!」


母親「はぁ、はぁ・・・。遅くなってしまい、申し訳ありません・・・。」


冬哉「いえいえ、とんでもない。」


子供「おかあさん!(母親に抱きつく)」


母親「よしよし。・・・よかったね。優しい人に見つけてもらえて。」


子供「うん!」


冬哉「よかったよかった。」


母親「・・・この度は、本当にありがとうございました。(深々と頭を下げる)」


冬哉「そんな、僕はただ捜索に協力しただけ。依頼されなければ、僕は動きませんでした。お母さまの勇気ある行動が、功を奏したのですよ。」


母親「・・・ご立派ですね。まだお若いというのに。」


冬哉「僕には、頼れる仲間がいるので。」


《通信》イメリス「お?それって私た(冬哉、静かに通信を切る)」


母親「・・・では、改めて。ありがとうございました!」


子供「ばいばーい、たびびとのおにいさん!」


冬哉「・・・ばいばい。(子供に向かって、優しく手を振る)」


【子供と母親は帰っていった】


冬哉「・・・ふぅ。(通信を再開する)」


《通信》イメリス「酷いじゃないか!通信をぶった切るだなんて!」


冬哉「いや?ただ雑音が聞こえるなぁと思って。」


《通信》イメリス「むぅ〜。・・・い、一応後で通信機メンテナンスさせて!」


冬哉「やっぱ職人気質だな(小声)」


《通信》イメリス「・・・なにか言ったかい?」


冬哉「いやなんでも?」


冬哉「・・・そんじゃま、事件も解決したことだし、俺は本業の仕事があるんで。通信、切るぞ。」


《通信》イメリス「そっか。じゃ、またな。」


【通信終了】


【冬哉、家に戻り執筆作業を進める。】


冬哉「・・・。(集中)」


【数時間後、インターホンの音】


冬哉「・・・ん?俺なんか頼んだっけ?」


冬哉「(インターホンに出る)はーい?」


アテン「あ、冬哉居た。」


冬哉「ん?アテン?なんか用か?」


アテン「早く来て。」


冬哉「お、おう。わかった。」


【冬哉、玄関のドアを開ける】


冬哉「どうしたアテ・・・うん?」


瑠花「・・・っ(アテンの後ろに隠れる)」


冬哉「・・・?」


アテン「(瑠花に優しく話しかける)大丈夫。さっきも言ったでしょう? この人は私の仲間。」


瑠花「そ、そうですね・・・。(アテンの後ろから出てくる)」


冬哉「・・・もしかして、事件の依頼か?」


アテン「・・・詳しい話は、喫茶店で。」


冬哉「・・・ああ、わかった。」


アテン「さ、行くわよ。」


瑠花「え?あ、はい!」


【喫茶店へ向かう道中、アテンが冬哉に耳打ちする】


アテン「・・・前も言ったけど、私を人界で呼ぶ際は「真理亜」だからね。」


冬哉「・・・ああ。それより、アテ・・・真理亜が依頼人を連れてきたってことは・・・。」


アテン「・・・ええ、『逢魔が時ダスクエリア』絡みの事件よ。」


冬哉「はぁ、ほんっと最近多いな・・・。」


アテン「でも、今回は一筋縄ではいかなそうよ。なにせ今回は・・・」


アテン「———『空白の逢魔が時エンプティ・ダスクエリア』での事件ではないもの。」


冬哉「・・・!?」

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