第五章 《償い》の刻

【登場人物】


白波 冬哉(しらなみ とうや):男性


本作の主人公。中学3年生。心にとあるトラウマを抱えている引きこもり。前章にて、いじめっ子の幻影に総攻撃を受けた。果たして無事なのか・・・?




アテン:女性


冬哉のサポートをする神様。迷逢魔に太刀打ちできないでいる。




冬哉の幻影:男性


冬哉の回想に現れる『もう一人の冬哉』。冬哉に問いかける。




【本編】

【冬哉の回想】


冬哉「(独白)消える。全てが。俺の目の前から、何もかも。悪意の権化に全てがかき消される。何の理由もなく不意に襲いかかる悪意は、俺の人生の道を妨げる壁となる。俺はその壁を乗り越えようとはせず、仮初の平和に浸っていた。」


冬哉「・・・ぐっ!(胸が苦しくなり、胸を押さえる)」


【脳裏に自分(?)の声が響く】


冬哉の幻影「・・・そんなの、聞き飽きたよ。」


冬哉「!?」


【次の瞬間、冬哉の目の前に大穴が現れた】


冬哉「まさか、これって・・・!」


冬哉の幻影「覗いてみろ」


冬哉「(声に従い、大穴を覗く)・・・!? あれは、俺・・・?」


【穴の中には、今まさに落下死しそうになっている冬哉の姿があった】


冬哉「(穴の中の冬哉)・・・けてっ!助けてっ!」


冬哉「これは、今日の悪夢・・・うっ!?(自分の口に違和感)」


冬哉「(心の中で)く、口が勝手に・・・!どうなってるんだ!?」


【冬哉、穴の前に立ち、落ちてゆく冬哉にこう告げる】


冬哉「『』」


冬哉「(心の中で)この言葉・・・あの時の。」


【穴の中の冬哉、生々しい音を立てながら地面と衝突し、死んだ】


冬哉「うっ、(目を背ける)一体どうなってるん・・・!?」


【突然、冬哉の呼吸が荒くなる。心臓の音が激しくなっていき、

                          どんどん苦しくなる】


冬哉「はあ・・・はあ・・・っ(倒れる)」


【すると、冬哉と瓜二つな人物が光に包まれながらやってきた】


冬哉「お、お前・・・は・・・。」


冬哉の幻影「俺はお前の心の中に住まう『もう一人の白波冬哉』だ。」


冬哉「・・・。」


冬哉の幻影「お前はこのままでいいのか?このまま足踏みを続けていて、本当にいいのか?」


冬哉「・・・でも、もう・・・。」


冬哉の幻影「お前は護りたいんだろう?親友を、家族を、そして、アテンを。」


冬哉「・・・ああ。護りたいさ。俺はいっつも護られてばっかだった。だから

今度は、俺が皆を護りたい。でも・・・俺にはそんな力・・・。」


冬哉の幻影「ある。今ならあるだろ!手の届く範囲にいる人を護る力が!」


冬哉「・・・!(何かに気付いたように)」




冬哉の幻影「さあ、立ち上がれ!お前が・・・いや、」


冬哉「ああ。皆のために、今、立つよ。俺が・・・いや、」




冬哉・冬哉の幻影


「護られてばっかだった『俺達』の『償いの刻』だッ!」




【冬哉の逢魔が時・1年3組】


アテン「(心の中で)・・・逢魔が時では、迷逢魔と真逢魔は顕現させた本人以外はダメージを与えられない。でも・・・それでも・・・!」


アテン「(涙を流しながら)はあっ!(剣を振るう)」


【迷逢魔にダメージはない】


アテン「やっぱり・・・ダメ、か・・・。(崩れ落ちる)」


【迷逢魔が標的をアテンに変えた】


アテン「(泣きながら)冬哉っ・・・冬哉ぁっ!」


【迷逢魔がアテンに襲いかかる刹那、】


冬哉「・・・何、よそ見してんだよッ!(剣を振るう)」


【冬哉はたった一振りの斬撃で迷逢魔を殲滅した】




冬哉(冬哉の幻影も少しだけ)


「・・・さあ、俺『達』がやるべき皆への償いを、今、ここから始めよう。」

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