第二章 『逢魔』

【登場人物】


白波 冬哉(しらなみ とうや):男性


本作の主人公。中学3年生。心にとあるトラウマを抱えている引きこもり。前章にて、不思議な猫の導きにより『己が地獄』(?)に迷い込んでしまった。




悲劇の傷跡:女性


冬哉の記憶に深く刻まれている声。




逢魔(今章での表記『異形』):性別不詳


冬哉を強襲する黒い異形。謎の少女は黒い異形のことを『逢魔』と呼んでいるが・・・。




???:女性


冬哉を窮地から救った謎の少女。どうやら『逢魔』という存在について詳しいようだ・・・。




【本編】

【『己が地獄』にて、冬哉一人。悲劇の傷跡の声が冬哉の脳内に響き渡る】


傷跡「汚いから近づかないで。菌が移る。さっさとどっか行け。あんたなんかお呼びじゃないのよ。 あーあ。あんたなんか・・・」


冬哉「やめろ・・・やめてくれッ(無意識に涙が溢れる)」


傷跡『死んじゃえばいいのに』


冬哉「あ・・・ああ・・・。(殴られたかのようにフラフラと倒れる)」


冬哉「(独白)聞き馴染んだはずの言葉わるぐちなのに。何故だろう・・・。今は、憎くて憎くて仕方がない!」


【冬哉の負の感情がどんどん増幅していく】


冬哉「ああ、ああああああああッ!(言葉にならない悲痛な叫び)」


【それに共鳴するように、巨大な足音が冬哉に迫る】


冬哉「な、なんだ・・・?まさか、さっきの・・・」


異形「・・・・・ミツケタ」


冬哉「(異形の顔を見つめ)や、やっぱり・・・。」


【異形は冬哉の前に立ち塞がり、冬哉の逃げ道を封じた。異形は大きく口を開き、今まさに冬哉を捕食しようとしている】


異形「(不気味な笑い声)」


冬哉「・・・もう、駄目みたい・・・だな。もう少し長く生きたいって言いたかったけど、日常も己が地獄ここもどっちも等しく地獄だ。食うなら早くしてくれ(目を瞑り、歯を静かに食いしばる)」


冬哉「(独白)でも・・・やっぱり死にたくないな・・・」


【異形が冬哉を食らうその刹那、】


異形「・・・!?(気配がする方向へと振り向く)」


???「はあっ!(眩い剣を異形に振るう)」


異形「グオオオオオオオオッ!(唸り声を上げ、倒れる)」


冬哉「・・・え?(恐る恐る目を開け、その光景に目を疑う)」


???「・・・大丈夫? 怪我はない?(異形の残骸の上から話しかける)」


冬哉「え・・・あっはい大丈夫です・・・?(動揺)」


???「そう。なら良かった。って言ってられる状況ではないのよね・・・。」


冬哉「・・・。(少女の手に握られた眩い剣を見つめる)」


???「何ぼーっとしてるのよ!『逢魔』の追っ手が来る前にここから逃げるわよ!(冬哉の手を引く)」


冬哉「おう、ま・・・。」


冬哉「(独白)もしかして・・・さっきの化け物がそうなのか?しかも追っ手って・・・。ここにはあんなのがうじゃうじゃ居るのかよ。」


冬哉「(独白)・・・でも痛感した。ここではモタモタしてると、あっさり死んじまうってことが・・・!」


【冬哉は静かに、少女の手を握りしめた。】

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