第6話 チャットでのやり取り

「はぁ……」


 ベッドの上に寝転んでいる雫から溜め息がこぼれる。

 送ったLIMEが一時間経っても返ってきていないどころか、既読にもならないという理由によるものだ。


(ミスったかなぁ……)


 雫は散々悩んだ挙句、結局名前と年齢に職業、それらに加えて『ぜひご飯行きましょう!』というメッセージを送信した。


 既読にならないのは、その文面が良くなかったからではないか。

 そんなネガティブな考えが頭の中を支配していた。


「風呂、入ろ……」


 そこで雫は気を紛らわせるため、風呂に入った。




 それから三十分後。


(どうせ来てないんだろうな……)


 本当に来ていなかった時のダメージを和らげるため、事前にそう思いつつスマホを確認した。


 すると、通知が一件。名前の欄には由依とある。

 雫はドキドキしつつ、本文をタップして文章に目を通した。


『こんばんは! 今バイト終わりました。連絡して頂けて本当に嬉しいです!

 私は七咲由依という名前で、二十歳の大学生です。

 ご飯の件もありがとうございます! 美味しいお店、探しておきますねっ』


 胸がおどった。

 連絡が来た上に、デートの約束まで。


 顔のニヤけが止まらない。


「よし!」


 そんな状態が数分続いたところで、雫は返信することに。


(バイト終わりだし、まずは相手を労わる言葉からスタート。次にどこの大学か聞いてみるか? いや、それはもっと仲良くなってからのほうが……)


 しかし、どう返信するのが正解なのかわからない。

 何せここ最近、女性とのLIMEなんてセフレとしかしていないためだ。


『今日いける?』『何時?』『ういー』


 この三文以外、普段はまず使わない。


 それ故、スマホを握ったまま、全く指先が動かなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る