入れ替わりタイムトラベラー
R18BL | ユキ×晃
「痛って……」
それはあまりにも突然で、突拍子もない出来事だった。
「なに……? 誰……?」
轟音と共に巻き起こった真っ白な煙の中から現れた見慣れない男に向かって反射的にそう呟いたものの、その実ユキにはそれが誰だかよく分かっていた。ただ、目の前で起こった一連の出来事がにわかには信じられなかったのだ。
「……幸介」
低い声に名前を呼ばれ、紫色の瞳がユキを射抜く。この瞳を、ユキはよく知っていた。
「……あっくん?」
ユキの記憶しているものよりも長い瞳と同じ色の髪は後頭部の低い位置で一つに纏められ、質の良いスーツに包まれた身体は綺麗に鍛え上げられバランスよく筋肉がついている。おまけにスーツの汚れを払いながら立ち上がった相手はユキよりも頭ひとつ分背が高く、ゆっくりと近寄って来る姿に思わず一歩後退ってしまう。
そんなユキを見て、男は「ああ、そうか」となにかを思い出したようなそぶりを見せてからニヤリと意地の悪い笑顔を浮かべた。
「こんなに小さかったっけ」
「……ちょっと、いきなり何? 喧嘩売ってる?」
わざわざ人の顔を覗き込むようにしてそう言ってくる男にカチンと来て詰めよれば、相手は敵意はないとでもいう風に手をひらひらと振って近くのソファーにドサリと腰掛ける。
「ねえ、っていうか何がどうなってんの?」
「さっきまで俺、ここで変なカバン持ってたろ? あれのせい」
「あれのせいって、どういう」
「入れ替わってんだよ。十年後の宗宮晃と、今この時代の宗宮晃が」
「なにそれ、冗談キツいよ」
「ホントにな。まあしばらくすれば戻るから、のんびり待とうぜ」
いきなり現れて全く慌てる素振りも見せずに「十年後の宗宮晃」だと名乗った男。まるでそこが自分の家であるかのように悠々とソファーに腰掛けくつろぎ始めた未来の晃(仮)にその場の空気を完全に掌握され、ユキは軽いイラつきを覚えながらも渋々その隣に腰掛けた。
「……なに、俺の顔になんかついてる?」
「……別に」
「なんだよそれ」
ふっと息を吐きながら頬を緩めた晃に、ユキは思わず目を丸くする。こんな顔をして笑うようになるのか。あの晃が。そのまままじまじと隣の男を観察していると、また馬鹿にしたように「なんだよ」と笑われムッとする。あっくんのくせに、さっきから妙に余裕があってムカつく。あっくんのくせに。
「いや、あっくんも少しはいい男になるんだなあ、って」
甘えた声でそう言いながらハイヒールの先で晃の脚をなぞり上げながら、ネクタイを片手で掴んでぐっと引き寄せる。そのまま晃を背中からソファーに押し倒し太ももの辺りに馬乗りになったユキは、晃に覆い被さるようにしてその顔を覗き込んだ。
「……褒めてくれんの?」
しかしユキを待っていたのはいつものような驚きや嫌悪の表情ではなく、先程と同じように面白いものを見ているかのような表情を浮かべる晃の姿だった。
「そういえばさ、未来に行ってる間にひどい目にあったんだよな」
「ちょ、」
がしりと身体を掴まれ、ぐるりと反転する視界。あっという間にユキの背中は柔らかなソファーに押し付けられ、抵抗しようと振り上げた両手は晃の手によって頭上に縫い止められる。
「悪い餓鬼は痛い目見なきゃ分かんねえ」
「……はあ?」
「お前がそう言ったんだろ」
開いた片手でネクタイを緩め、それで器用にユキの両手を結んだ晃が、スッと目を細めながらじたばたと暴れるユキを見下ろす。
完全に油断していた。まさかここまで力に差がついているなんて、思ってもみなかった。悔しさと腹立たしさ、そして少しの恥ずかしさの入り混じった気持ちを込めてキッとその紫色の瞳を睨み返す。
「先輩の言うことは絶対らしいから」
「なに、っ」
続けるはずだった言葉は晃の深い口づけと共にあっという間に飲み込まれ、酸素を求めて開いた唇を割って口内へと侵入した舌がぬるりと歯列をなぞった。
それと同時に柔らかなドレスの裾をたくし上げるようにして晃の手がユキの太ももを撫で、その手がそのまま腰から腹部を通り身体をなぞり上げて行くにつれ、身体を微弱な電流がながれるようなゾクゾクとした感覚がユキを襲った。
「ちなみにそれもお前が言った」
「意味、わか、な、っ、ア」
は、と大きく息を吐いた瞬間に耳元で掠れた声が聞こえ、そのままかぷりと耳を甘噛みされたユキの口から甘い声が漏れる。耳から首筋へと舌を這わせる晃の手が、きゅ、っとユキの胸に爪を立て、びくりと身体が震える。
「あとなんだっけ、」
「あ、や、」
「ああそうだ。可愛い子はちゃんと可愛がれって」
「ん、あッ」
ぐっと薄い下着がずり下げられ、露になったそれを晃の大きな手にまさぐられる。直接的な刺激から逃げるように腰を引こうとしたところで、もう片方の手でいきなり後ろを探られ身を捩ることしかできない。
「や、あっくん、っ、あ!」
すでに自由になったのにも関わらず、縛られた腕に顔を埋めるようにして襲い来る快感に耐えようとすることしかできない。
「やだ、あっく……ね、や、」
こ わい。連続的に訪れるその性感にまともに頭が働かない中で感じたのは、小さな、しかし紛れもない恐怖だった。これは本当に晃なのだろうか。自分の身体に触れる硬く大きな手が誰の物なのか突如として不安で、恐ろしくなる。しかしその身体は快楽に抗えず、ユキは段々と泣き声交じりで懇願するような声を上げ始めた。
「……幸介」
「あ、やだ、あっくん、」
「幸介」
あやすような口調で名前を呼ばれて瞑っていた目を開ければ、見慣れた紫色の瞳と目が合った。
「あっく……あ、あ――」
片手でひょいと抱き上げられ縋るように相手の名前を呼んだ瞬間、指で奥をぐっとすり上げられて悲鳴のような声が零れる。縛られたままの腕を晃の首にかけその身体にぎゅっとしがみつくと、痙攣のようにびくびくと大きく身体が震え、先端からは白濁がだらだらと溢れ続けた。普段の射精とは違う連続的な刺激に浅い呼吸を繰り返すユキの身体を抱き締め、晃はユキの目の端から零れ落ちる滴をそっと舌で掬い取る。
「……あっくんのバカ」
「あー……悪かったって」
「未成年淫行!!!」
「お、そろそろ時間切れみたいだ」
「バーカ!」
折角今回の任務のためにと新調したのにぐちょぐちょになってしまったドレスの裾を握りしめ、未だ力の入らない足で晃の身体にハイヒールのかかとをねじ込む。
「……この借りは未来で返すから、覚えとけよ……クソガキ!」
涙目で、ソファーに横たわったままこんなことを言ってもなんの脅しにもならないことは分かっている。それでもなにか言わずにはいられなかったのだ。
数秒後、また大きな音とともに真っ白な煙が晃を包み、憎たらしい大人の男が立っていたそこには何故か半裸に剥かれた晃が呆然とした顔で立っていた。
身も心もすり減った状態で現代に戻って来た晃が、何故か自分の目の周りを真っ赤にして震えるユキから華麗な回し蹴りを食らってダウンするのは、また別のお話。
囚人学校 Virtual Hitsuji @7mi___n
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。囚人学校の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます