12:ハプニング! 白猫からの強制召喚!
「えっ、なに」
「お知らせじゃね?」
「あっそうかも」
プレイヤー全員に送られたものだろうか。私は
「何でコートから?」
「コートって
「ラックスだよ。
「そうやった」
『キミたちに直接伝えたいことがあって、このメールを書いているよ。このメールを開いた一分後に、キミたちをこちらに
……とのこと。
「い、一分後! あと何秒?」
「……あと四十秒くらい」
「断りもなく、一方的にこういうのが来るんだね」
「ホント、今日
「もうそろそろか」
「さぁて、どうなったんやか」
「「ねー」」
私と
今日もどこかの
「急に呼び出してごめんね。どうやら五人とも集まっていたようだから」
「いきなりすぎて、おとがびっくりしてたわ」
律歌に親指で指され、ちょっと照れる私。
早速本題を切り出してみる。
「私たちを呼び出したってことは、状況が進んだっていうことだよね?」
「そう、もちろん」
コートは自信ありげにフンッと鼻を鳴らす。
「まず何から話そうか。じゃあみんなに前提として覚えておいてほしいことがある。この間のような犯人は、一人でああいうことをしてるんじゃなくて、
誰かに命令されて……悪い人たちに言われて、この前のようなことを……。
「その『誰か』っていうのは、どういう人なん?」
「まだ分かってないことも多いけど、命令しているのは複数人で、ブラックリストみたいなものから選んで事件を起こさせるようだね」
ブラックリストからっていうことは、そこに入っている人たちはみんな『やばい人』ってことだよね。
「……そのブラックリストって、どういう人が入ってるの。何か基準があるはずだけど」
やはり弦斗は的確な質問をしてくれる。犯人の
「ボクが
「……負のオーラが見えるのか」
近未来な
「そしてリストから選ばれたアバターは、その人たちに呼び出されて、お金をもらうのを条件に事件を起こしている」
お金……お金もらえるならやろうっていう人、いるよね。お金に目がくらんで、悪いことをしちゃう人。
「ということは、犯人には負のオーラがあるんだね。私たちにも見えるものなの?」
「それが見えないんだ。指示する人たちは何か道具を使って見るそうなんだ」
それなら『オーラを見る機械』として、この雰囲気に合ってるかも。いや、それどころじゃない。
「何で指示する人たちは、自分で事件を起こすんじゃなくて、代わりに起こしてもらってるのかなぁ」
それは確かに。こっちゃん、いい質問。
「うーん、ボクの推測に過ぎないけど、自分の手を
そっか……ていうか、そもそも何で事件起こしてるんだろ?
「ねぇ、何で事件を起こしてるのかな」
「あぁ、そもそもな」
私には理解できない。一人でやってるなら「誰かを殺してみたかった」っていう理由は通るけど。
「それがものすごく
コートが目を
「指示する人たちは、そういうブラックリストの中から、自分たちの理想に合うプレイヤーを探しているらしい。理想っていうのは……『欲望のままに動き、欲望がぶつかり合い、その争いに勝ったアバターが治める世界』なんだ」
……えぇっと、ちょっと待って。言葉が難しい。
「……わがままなヤツが、わがままなヤツ同士で戦って、勝った最強のわがままなヤツが、オルビスの王様になるってことか」
弦斗くん、めっちゃ分かりやすい! ということは。
「わがままな人でオルビスの世界があふれ返るってこと?」
「そういうこと。あいつらは『最強のわがままな人が世界を支配すれば、世界は最強のわがままな人のために動くので、うまくいく』と言っているんだ」
うわぁ……コートの前置きのおかげで
「そしてあいつらは、最強のわがままな人を育てた
自分たちはひいきしてもらえばいいんだ……。さっきから頭の中に『やばい』しか
「ちょっと、コート。何でそれをオルビスの人に
正論を言われたコートはしばらく
「確かに賛成してくれて、
これは遠回しに「事件が起きても逃げないで、ちゃんと戦ってほしい」って言われてる?
「だから、オルビスの人じゃない、現実世界の人間に頼んだわけか。約束したのにそれを破るのはダメやなぁ」
「もし指示する人たちを放っておいたら、オルビスで遊べなくなりそうだし」
志音はあくまで自分の利益のためらしい。ただ、コートとの利害は
「そういう理由でもいいよ。だから、ボクと一緒にオルビスを救ってほしい」
私たちがコートの言葉に満場一致したところで、コートは
「みんなのところにもデータを送るね。ボクたち五人と一
ブーッと腕時計が振動し、『プレイヤーネーム:Coat からプレゼントを受け取りました!』と、腕時計の
「さっそく着
「これか!」
着がえてみた。
全身をぴっちりと包む白いタイツを着たと思いきや、ふんだんにレースがあしらわれたピンクのベストや、
最後に、背中に武器らしきものを背負った。やはりオルビスの世界なので
取り出してみると、銃とサックスがミックスされたようなものだったのだ。意味が分からないかもしれないが、そう言うしかない。
「めっちゃかわいいスキンだけど……何これ?」
「思ってたよりも、かなり個性的なものができあがったな」
と、コート。
志音は大きな
琴音は私と同じような格好で、黄色やオレンジが基調となっているが、大きく広がるスカートが目を引く。
弦斗も志音と色違いのマントとスーツで、
律歌は
「これはみんなの好みが反映される、ボクたちの特別なスキンだ。武器はみんなの特技が反映されたものなんだが……」
私のはどう見てもサックスだ。特技がサックスだと認識されたらしい。
志音のは
「すげぇ、連結するとサックスになる!」
……らしい、って、連結できるの! すごっ!
「……
ギターのような形をしているが、本人によると
「私のはないの?」
「うちのもないわ」
自分の体の周りをキョロキョロ見回すが、どこにも銃らしきものはついていない。
「二人は『そういうタイプ』か。じゃあ腕時計のボタンを押してみて」
琴音と律歌は言われるがままに、腕を構えてボタンを押した。
なんと、琴音の周りに、光るピアノの
「なんやこれ! 出てくるタイプか!」
「すごい! 銃じゃなくてこういうのもいいね」
二人とも気に入ったようだ。
「武器が出てきたところで分かってると思うけど、キミたち、いや、ボクたちはこの前のような事件の現場に出くわしたら、犯人とこれで戦わなければならない」
コートの顔が険しくなり、私たちも
「ただ、犯人の体はなるべく傷つけちゃいけない」
「何で?」
「そこで傷つけたり消してしまったら、犯人を反省させられないからね」
そうそう、コートの目的の一つでもあるしね。
「この武器を使うのは、犯人から負のオーラを引き
「うわぁ……負のオーラが怪物になるとか気色悪い」
あからさまに志音が
「犯人から負のオーラを引き離すにはどうしたらいいの?」
そして
「それが……誰も負のオーラを引き離したことがなくて、分からないんだ」
「じゃあ、引き離すと怪物になるっていうのは?」
「なるらしいって、あいつらが言っていただけ」
またまた私たちはズッこける。そこ重要でしょ!
「負のオーラはプレイヤーの心の中から生まれている。だから……心を
「たぶんって!」
「コート、そこ聞かんことには、うちら何もできへんよ」
「次呼ぶ時には、ちゃんと調べてくるから……」
果たして、表では案内猫という仕事をしておきながら、この猫は本当に大丈夫なのだろうか。
私はため息をつき、やれやれと何もない天井を見上げるのだった。
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