第4話 城下町

アカリの『完璧魔法』をコピーさせてもらい、再び二人は城下町へと歩いた。


「ねぇー、この草原長すぎない?」


凄い疲れた声で訊いてくる。 


「そりゃあ、大草原だからな。こんくらい頑張れよ。」

「何でそんな平気そうなのよ。」

「異世界いけたときのため、体を鍛えてたんだよ。」


そう、異世界にいきたいなー、とか考えてたとき少しでも出来ることがないかと思い、

体を鍛えていた。

ついでに体力も。

そのおかげで、2時間ぐらい歩いた今でさえ全く疲れを感じない。


「どんだけ頭がお花畑だったのよ。」


呆れたような表情で言ってくる。


「お、お花畑いうな!あ、憧れてただけだ!」

「はい、はい。」


自分は「頭がお花畑。」と言われるのが物凄く嫌いだ。

実際、頭がメルヘンなんじゃなく憧れや、異世界に期待していただけだった。

高校生の自分ではもといた日本での生活に物足りなさを感じていた。

そのため、『異世界』に興味を持った。

異世界だったら、自分の物足りなさや、退屈さを無くせるのではと。

自分が活躍している所を誉められ、称えられ、生きている意味を実感出来るのではと。

だから、異世界に行きたいなー、とか言っていたのだ。


「ほら、もうすぐ着くぞ。」


ここまで歩いた二時間半、あまり退屈ではなかったが、かなりの達成感がある。

転移させられた山の上から見えた城下町。

よくありがちな外壁で囲われている。

そして門。

その前には門番もいる。

とても異世界っぽい。

とりあえず城下町に入るには門番に話しかけた方がよいのだろうか。


「あのー。」


この世界の人に日本語は通じるのか分からないが今はこれしかない。


「はい、シャウバトロー王国に入国ですか?」


どうやら日本語は通じるらしい。


「はい。入国しに来ました。」

「それでは、『神の加護書エクス・パス』をご提示ください。」


『神の加護書』?何だろうか。


「えっと、『神の加護書』と言うのはーどういった物でしょう。」


この世界にきてそれっぽい物を貰った気がしない。


「『神の加護書』を知らない?まいったなー。」


知らないと、ヤバいのか?


「『神の加護書』は15歳になる日に協会で発行してもらえるパスポート的な奴だ。」


あぁ、あれかリヴァティじいさんから貰った奴。

この世界では、『神の加護書』と呼ばれているらしい。

それに異世界っぽい設定。

くぅー、楽しくなってきた。


「あ、それならありますよ。」


ポケットに入れていたパスポートを提示する。


「え、二人とも17歳だよね?その年でLv.1ってのは珍しい。」

「えーっと、まぁ、あはは…」


変なことを言うと、かえって怪しまれる。

ここはそれとなく誤魔化そう。


「まぁ、そんなことはいい。では、入国を許可する。」


えー、意外と入国するの簡単やなー。


「えー、ではこの国で問題を起こさぬよう、気を付けるように。」

「は、はい。」


すると、大きな門をくぐらせてくれた。

そこは、夢に見ていたような亜人や、エルフ、ドワーフなどが住む、

種族差別のしない、平和なシャウバトロー王国だった。

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