二十七話 追い詰められた時の急成長はお約束
『どうしよう、お姫ちん。全部バレてるよぉ』
『参ったな。想像以上に警察は有能だ。通話内容まで確認されてんのか。素直に白状しても嘘としか思われないだろうし、チートを証明するのもそれはそれで問題になる。すまないけど今は黙秘で耐えてくれ』
『う、うん。わかった』
『おかしいですね。通話記録というものは誰と誰が何分間、会話したか程度しか分からないはずなのに』
『え゛。もしかしてブラフだった?』
それにしては内容が具体的すぎる。世間には会話内容はバレないと嘘を吐いているのか?
もしくは状況から会話内容を予測してブラフを仕掛けてきたか。
どっちもありそうだ。
『少なくとも関係者だとはバレちゃったよぅ。これからどうしよう』
『解決策が浮かばない……いざとなったら霊体化してバックれて貰うけど、監視カメラで見られてる?』
『取り調べ室はともかく牢屋の中は大丈夫だと思う』
『アリス姫、留置所は拘置所や刑務所と違って監視カメラは設置されてないらしいです。ネットに書いてありました』
『よし。最悪の場合、脱走して行方を眩ませることが出来るな』
『でも、それだと脱走犯になっちゃわない?』
『そうなるな。その場合は弘文の表社会の身分を貸して貰いたいんだが、いいか?』
『自分はバッチ来いです』
『楽しそうにしないでくれよ。浩介はロリ状態でそのまま弘文の家に居てくれ。身元不明でも死人よりはマシだ』
『マジっすか。微妙に変な目で見てくるから遠慮したいんですが……』
『いや、ロリに手は出さねえよ!』
『はうっ』
『タラコ唇さんは俺が誘惑したようなものだから、凹まないでいいんだよ』
『本当?』
『うん』
『はー、てぇてぇな』
『テレパシーで惚気られるとこっちまで恥ずかしくなりますね』
『わああぁっ。聞かないでぇ』
命懸けでマンションの十階から飛び降りて、縄跳びを命綱にするも反動であちらこちらに叩き付けられたことで思わず縄を手放して宙に放り出され、必死に途中の手摺りに手を引っかけるも減速するに留まり、最終的に花壇に布団に包まって落下して翌日。
辛うじて死ななかったが、片腕が花壇からはみ出て煉瓦のブロックにぶつけて折れた時は痛みで死ぬかと思った。
下敷きになった煉瓦とか粉々になってたぞ。最低でも複数箇所は骨折してたと思うが、エナジードレインのチートで無理矢理に動いて逃げた。
後はトイレの中に入ってリンクチートでアリス姫に変身しての回復魔法で全快。チートってやっぱインチキくせえな。
今はアイテムボックスに入れてた元四千万入りのアタッシュケースから現金の一部を取り出してネカフェで休んでいる。
現状のテレパシーは新しいチートを入手したわけじゃなく、エインヘリヤルのチート能力の一部みたいだ。
以前は出来なかったんだが、生命の危機に陥るほど追い詰められた結果、チートが成長したようだな。
エインヘリヤルはスキルコピーで手に入れたチートじゃないから詳細がわからない。他のチート同様成長はするみたいだが。
姉のいる福岡までテレパシーは繋がらないから距離制限があって、範囲内にいるはずの他のギルメンにも繋がらないことから覚醒させただけじゃ対象にはならない。
エインヘリヤル限定で1000キロ以内のテレパシー能力。これが感覚的に理解できたエインヘリヤルの新しい能力だ。
この能力に目覚めたおかげで現状がよく理解できた。俺がどれだけ馬鹿だったかがな。
くそ、生前のスマホとか後生大事に持ってんじゃねえよ。馬鹿か俺。
高所から落下したことでスマホもお陀仏になってブルーになってたが、壊れてなきゃネカフェまで追跡されてたじゃねえか。
刑事ドラマで逆探知のシーンがよく登場するから普通に使用する分には平気だと誤解してた。騙されたわ。
血痕のDNAから拓巳が特定されることまでは想像していたが、まさか行方不明になった俺と関連付けられるとは思わなかったし。
そうだよな。色々と変な要素を無視すれば、それが一番現実的な話になるよな。クソがっ。
イライラして思わず壁を殴ってしまった。咄嗟に力を弱めたが下手したらヒビくらいは入るかもしれない。冷静になれ。
「ふふっ。荒れてますね」
「あん?」
振り向けば個室に無断で侵入する影が一人。艶やかな黒髪と優しそうな顔立ちとは裏腹に目だけが妙にギラついて見える。
「探しましたよ。姫様」
嗤うその姿は要注意人物としてよく覚えていた。
サキュバスの元締め。支配の化物。現代社会のリアルチート。
年齢不詳、本名不詳、源氏名、ユカリ。
「マジか」
俺の今の姿は14歳程度のロリだぞ。
エナジードレインで年齢を変えられることは知っていても一目で風俗店に来たサキュバスと同一人物だとわかるか?
おまけに個室に来たって事は確信を持ってやって来たわけで。
呼び名が姫様ってことは諸々の一切の情報も抜かれていることになる。何時から?
「盗聴器で警察が来たことはわかっていましたので、アタッシュケースに仕込んだ発信器を頼りに探させて貰いました。反応が現れたり消えたりしたので焦りましたよ」
「冗談じゃねえ」
焦ってんのはこっちだ。この化物共め。
やはりチートを持ってる素人が気を付ける程度じゃ現代社会には通用しないのか。よく理解できたぜ。
――――――
主人公は骨折した程度だと思っていますが、落下した際に体内の臓器も何個か潰れていました。
エナジードレインのチート持ってなきゃ死んでますね。エナジードレインは生き汚さにこそ最大の力を発揮するので。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます