取り調べ回

~とある取り調べの記録より抜粋~



警察官:つまり同居人の少女の事情は何も把握していないと


容疑者:はい……


警察官:名前さえも? 普通、聞くでしょう


容疑者:何時もお姫様と呼んでいたので


警察官:はぁ、なるほどねえ

    それでどういった経緯で同居するようになったわけ?


容疑者:道端で呼び止められて。一晩、泊めて欲しいと


警察官:それで泊めちゃったわけだ。中学生くらいの女の子を

    家出とか疑わなかったの?


容疑者:最初は色々と考えてました。通報しなくちゃいけないのかなって

    でも一緒にいるのが楽しくて


警察官:駄目でしょ。貴方、いい年をした大人なんですよ


容疑者:はい……すいません……


警察官:私に謝罪されてもねぇ。親御さんの気持ちを考えなさいよ


容疑者:仰るとおりで……


警察官:それに隣から苦情があったんですよ。毎晩、喘ぎ声がうるさいって


容疑者:えっ


警察官:貴方、まさか宿代に身体を請求してないでしょうね


容疑者:してません! 無理矢理じゃないです!


警察官:つまり肉体関係はあったと


容疑者:あっ


警察官:女同士だとか野暮なことは言わないけどね。相手は未成年ですよ?

    手を出しちゃ駄目でしょ


容疑者:その通りです……


警察官:幼い女の子が好きなの? 今までもこういうこと、してた?


容疑者:やってません


警察官:ふうん。初犯なわけね


容疑者:変だと思うかもしれませんけど、

    姫様と私の関係はちゃんとした恋愛だったんです


警察官:恋人の名前も知らないのに?


容疑者:それは……


警察官:貴方はそういうつもりだったかもしれないけどね

    件の少女は別のとこで同じ事を繰り返してたかもしれないんですよ


容疑者:そんな


警察官:証拠に成人男性のスマホを持ち歩いている

    おそらくは以前の宿泊先だったんだろうね


容疑者:え?


警察官:その男性は現在、行方不明で職場にも連絡がない

    おまけに通帳から金を引き出されている


容疑者:な、何が言いたいんです?


警察官:大規模な犯罪組織が関わってるかもしれないんですよ。あの少女には


容疑者:嘘、そんなわけ


警察官:しかも男性家族は被害届けも出さず、私達が訪問してもだんまりだ

    犯罪者に脅迫された被害者の反応なんです、これは


容疑者:………………


警察官:通話記録に少女と男性の甥の会話が残っていましてね

    これがどうにも意味深だ

    まるで遺体を指示して隠蔽させたかのような会話だった


容疑者:………………


警察官:実家近辺に該当男性の物と思われる血痕も残ってましてね

    致死量に届いていました


容疑者:………………


警察官:ところで知っています?

    スマホや携帯電話はね

    電源を入れているだけで位置情報を電話会社に発信しているんですよ


容疑者:………………


警察官:貴方、被害男性の実家に訪れたことがありますね? 件の少女と一緒に


容疑者:………………


警察官:警察なめてんじゃねえぞ。嘘で欺けるとでも思ったか?



――――――

ミイラは家の中に隠して決して見付かるな=死体隠蔽

見付かればお前の母は二度と戻ってこないと思え=人質、脅迫

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