第2話
俺は今、Eランクダンジョンの「コボルトダンジョン」にいる。
今まではFランクの初心者向け「ゴブリンダンジョン」で過ごしていたが、レベルの上昇に伴って一つ上のランクのダンジョンに向かったのだ。
ダンジョンと探索者はF〜Sの7つのランクに分けられる。
Fはレベル10未満、Eはレベル10から、Dはレベル25から、Cはレベル50から、Bはレベル100から、Aはレベル200から、Sはレベル300以上、とレベルに合わせてランクがつけられる。
9年間レベル1だったため、俺はずっとFランクだった。しかしレベルが10になった今、ランクがひとつ上がり、Eランうになった。
ランクが上がれば入れるダンジョンのランクもひとつ上がるため、より金の入りも良くなるはず。
そう思って俺はこのダンジョンに来ているのだ。
このダンジョンは名前の通りコボルトというモンスターしか出現しない。
ゴブリンよりも強いが、それでもモンスターとしては弱い部類だ。レベル10になったのだから、安定して倒せるだろう。それに、ダンジョン内での経験だけなら、俺は探索者の中でもトップクラスだと思う。なぜなら、ずっとダンジョン内で暮らしていたからだ。その経験も加わればこのダンジョンでも危険はないだろう。
危険はないと言っても、対策しておくに越したことはないため、コボルトの特徴を確認しておく。
コボルトは人間のように二足歩行する犬のモンスターだ。錆びついた剣を持ち、それで攻撃してくる。群れで行動することが多く、およそ4〜10体で構成される。
1体1体は弱いが、数で押されれば危険は大きくなる。
しかし俺はレベル1の時に20を超えるゴブリンに囲まれた時も、全て討伐し生き残っている。だからコボルトに対する恐怖心は微塵もない。
ふー、と息を吐き、呼吸を整える。
気合いを入れ、歩みを進める。
5分ほど歩くと、少し遠くにゴブリンの群れを発見した。
数は4。群れを前にしても、危機感は感じられない。
相手は俺の存在に気づいていないため、強襲を仕掛ける。
全力で駆け出し、剣を振るう。剣術スキルのおかげか、自然に剣を振るえたことに驚いたが、思考を切り替える。
今の不意打ちで倒せたのは1体。残りは3体。突然現れた俺に驚いているのか、攻撃を仕掛けてこない。
チャンスだと思い、1体ずつ、1撃で沈めていく。
ほんの数秒で決着がついた。
少し前の自分なら絶対にできなかった芸当に驚きを隠せなかったが、これがレベルアップの恩恵かと思いながらコボルトの死体から魔石を取り出す。
《レベルアップしました。》
レベルアップのアナウンスが頭の中で響く。
たった4体のコボルトを倒しただけでレベルアップした。
「これは楽しいな!」
今までレベルアップできなかった俺は、レベルアップに興奮し、楽しくて仕方がなくなった。ダンジョンという閉鎖的空間にいるのだから、娯楽がないのだ。そのため俺はレベルアップすることを娯楽として楽しむことにした。
レベルアップの快感に酔いしれながら、更なるレベルアップを目指して俺はダンジョン内を駆け出した。
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