八日目

「さて、此処が星族の住まう聖地である。見つかるといくらわたしの様な賢くも美しい鳥でも対応に困るのでな。サッサと突破してしまおうか。いや……まあ怖がっているとかではないけどね」


 頑強そうな石壁で囲まれた小さな村。門は閉ざされており、強行突破は出来ない雰囲気だ。


「トネーロさんって黙れないんですかぁ~?」


「星族! 聞いた事あるぞ!! 人の未来をみれるんでしょ!!!!!」


「まあ、合ってはいるな」


 なんか上から声が聞こえた気がする。恐る恐る上を見ると、凄くデカイ人が2人で俺たちを見下ろしていた。2mを軽く越しているんじゃないだろうか。そして二人とも真顔な分、威圧感が凄い。


「あぁ~……これは俺様も手遅れですね」


 いつもの饒舌ぷりが消え、諦めしか含まれていないトネーロの言葉が何処か遠く聞こえ、俺の意識は暗転した。






 目を覚ますと、ふかふかとしていて良い匂いがする暖かい場所にいた。目隠しをされているのだろうか、視界は何故か暗く眠気に委ねるには充分な環境だ。


「ありゃ。まーだお寝坊さんしてるのかしらん。こりゃー鳥族のコイツを虐めるしかないですねぇー」


「ギャー!!! 変態かね君ィ! 我の穢れなき羽毛を引っ張るなんて外交問題! だぞ!」


 ……トネーロの大声が物凄い近くから聞こえ、完全に目覚めた。


「うるせえよトネーロ」


 とりあえず横に居るであろうトネーロを小突くと変な声を上げて黙った。


「あら、お目覚めですか? 今、布を外して差し上げますわ」


 トローネとは別の声がして、優しく布を外された。しばらく暗かったせいもあり、眩しさで瞬きをすると、隣にまだ痛がっているトローネ、そして俺の目を覆っていたであろう黒い布を外したおねえ……おにい……人がいる。


「ペッツェルト様、この人間は状況がよく分かって居ないようです。存在遮断の術を解いて、ご説明をお願いします。その鳥族の羽根を弄って居るのは見えてますから」


「はーぁい!」


 いつの間にかトローネと俺の間に、物凄い美人なお姉さんが居た。


「そこの人間クンのお陰で鳥族の羽根ゲットよ~~! うふふ、アリガト」


 語尾にハートが付きそうな口調で微笑まれ、心臓が高鳴ってしまった。惚れてまうやろ。


「あら~? 人間クンってばウブなのねぇ。お姉さんが遊んであげよっか~?」


「……ペッツェルト様、ご説明を、お願い、します」


 冷静ながらドスの効いた口調。美人なお姉さんはこほんと一つ咳払いをして、ベッドから降りると俺たちの前で仁王立ちした。


「妾の名はペッツェルト・ル・ヴィントン! この星族に王制も無いが、妾が『未来呼び』随一の使い手! つまり妾が一番! トップ! ……さて、理解なさったかしら?」

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