七日目

 ロンとライムさんが仲間になって……というか、付いて来て数日。薔薇族が住まう森が目的で、その為にはまず子天使族の承認が必要との事で俺たちは今子天使族が住まう塔のような場所へ向かっている途中であり、野営の準備を終えて、微かな月明かりの中横になっている状態だ。獣族の村からここまで歩いてきて気付いたが、此処には人を襲う魔物が一切居ないらしい。元いた世界では脅威とされていたドラゴンも、町を数歩歩いただけで我先にと襲い掛かってくるモンスターも、俺たちを襲う動作を見せないどころか、興味も無いようだ。女子供に戦闘なんてさせる気は無いから嬉しくはあるが、つまらなくも……いやいや、そうだ。そもそも地図を作るのに殺生なんて気分悪い事すべきじゃない。


「そういえばあなたの目的ってぇなんですかぁ?」


「あ!!!! それきになっむぐっ!」


「こぉーらロン。お外でおっきい声はダメでしょー?」


 ライムさんとロンが居るのを忘れて考え込んでしまったようだ。二人とも母と子だけあって仲が良く、見ていて飽きないやり取りが微笑ましい。


「あー……そういえば話してないな。俺の目的はこっちの地図を作って、元の世界で有名になる事だ。ちなみに命令された訳じゃないぞ。自分の意志だからな」


 目的なら色々あるが、一番主となるのはこれだろう。まあ、理由としては怪しまれないだろうし。


「ほへ~~……てっきり、人間様様の力で私達の世界を滅ぼしになられるのかと思いましたわぁ」


 ライムさんは俺の目的に疑いを抱いているらしい。ワザとらしく口に手を当て、嫌味ったらしい口調でワザと聞こえるように呟かれた気がするが、スルーしよう。この世に必要なのは適応力と対話力、そしてスルー力である。




「……なんか、羽音がしないか」


 数分立ち、もう眠ろうと目を閉じた矢先、遠方からバッサバッサと自己主張の激しい羽音が聞こえてきて目を開いた。そしてそれは、その音は段々と此方に近付いて来ている。


「……んん~~? 鳥族ですよぅそれぇ……もうねましょ……」


 ライムさんが大きい欠伸をしながら気怠げに教えてくれた。ちなみにロンは口を塞がれた数分後にライムさんの膝の上で寝ている。


「そう、だな。ゆっくり休んだ方が良い……おやすみ」


「こんな夜更けに私を呼ぶなんて、随分情熱的だね君達! いや、何も言わなくて良い! 俺の美しさに見惚れるのはよくわかるさ……はぁ、ボクを天使と見間違えたのか、そうだろう。だが残念! わたくしは鳥族の代表! 象徴! そして崇められ愛されるべき存在! ハッ! これでは天使と変わらないじゃあないか! はぁ……チミ達には恐れいったよ。まさか僕が鳥族の天使って事を見破るとは……ね」


 その来訪者は突然だったしなんかキラキラしてるしよく分からないのでとりあえず今も尚話し続けている鳥族らしい男を放っておいて明日の自分に全て託した。

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