二十二日目

※残酷描写注意※


 星族のトップだと自称するペッツェルトの元に滞在する事になってから二週間程経った。なんでも子天使族の住まう場所は転々と代わるらしく、子天使族を崇める星族にしか場所が分からないようになっているらしい。そして星族で匿われていたという俺より少し年上のリクと出会い、俺の他にも此方に人が来ていたという事実に驚きを隠せなかった。


「まだ子天使族さんと連絡取れないのかしらぁ……」


 ライムさんが物憂げに呟く。ここでは毒も薬も作れないらしく、道具も全てペッツェルトの従者に取り上げられたらしく、気を紛らわせられるようなものも此処には無く、ロンもリクと遊んでいるしトローネは気持ち悪いしで日々ストレスが溜まっているらしく俺に寄ってくる。トローネもトローネで、外に出れないし歩くのも嫌だしでイライラした様子で羽根をバサバサとさせ、ペッツェルトに会いたくないという理由で俺の近くを飛んでいる。俺も俺で、剣も日記も取り上げられ、ワガママライムさんと、ナルシスト鳥に纏わり付かれる日々だ。


「ほぉーらロン君高いたかーい」


「高い!!! 凄いです!!!! わーい!!!!」


 遠くから聞こえる楽しそうなロンとリクの会話が羨ましくて仕方ない。苛立たしさを隠す様子も無く床を片足でバンバンとしているライムさんと、ひたすらに美しい自分がこんな閉鎖空間にいるのはおかしいと愚痴り続けるトローネと、日記に書く事を忘れないよう床に指で文字を書く俺……中々に混沌としていると思う。




「……と、言う訳で、暇そうなお前等に試練でもくれてやろう」


 あれから色々あってトローネが死んだりしたが、まあそれは別の話。俺とライムさんとロンとリクは、ペッツェルトと従者さんの前で正座していた。


「アリガトウゴザイマスペッツェルト様」


 自慢だと自慢していた羽根を惨たらしく千切られ、皮肉にも醜く死んでいった俺達の目の前に倒れているトローネを踏み付けた後、従者さんに何か小声で囁くと従者さんはトローネの死体を引きずり、何処かへ消えて行った。そしてその入れ違いに性別不明の人が現れた。


「あなた達へ与える試練はーーと、子天使様から通信が来ました。ペッツェルト様、お願い致します」


「チッ……運が良かったわね、あなた達。今回は見逃してあげるわ。妾に感謝なさい」

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