第8話 昼休みの会議
「ほいなら、渡し船の待合所で、ずっと待っとったら?島に住んどるんなら会う事もあるじゃろう」
「待ち伏せされたって思われんかのう?」
昼休み。転校生の東條京香と、どの様にコンタクトを取るのか、僕は購買のカレーパンを食べながら康介と会議をしていた。
康介に事の顛末を話すと、『協力したる』と自信満々に言われて、会議と称した雑談を開始し、今に至る。
最初の頃は『飯食ったら4組行くで!』と、康介は自信満々に息巻いていたが、そんな悪目立ちは僕としては絶対に避けたい。次の日に学校中の噂になるのは目に見えている。理想はどうにかして人目に触れず、二人きりになりたいのだ。
「ほいじゃあ放課後、彼女に着いて行きゃあええじゃんけ」
「アホ、そんなストーカー紛いな事出来るかいな」
話は平行線。康介に色々と提案されるが、どれも不自然に思えて、良くない。
「はあ、いつも通りに渡し船に乗っとったら、向こうから会いに来てくれんかのう?」
そんなこんなで、今僕はそんな淡い期待を寄せているのだ。
「……そんなただ向こうから来るの待っとったら卒業してまうで。放課後になったら一人になったタイミングで声掛けてみいや」
呆れ顔でそう言う康介だが、ごもっともである。しかし勇気が出ないのだ。初恋のハードルが高すぎると言うのも問題である。
「そもそも別のクラスっちゅうんがハードルが高いんよ。……はぁ……東條さんがおんなじクラスじゃったらほんま良かったんに……」
正に泣き言のオンパレードである。意気地なしと言われようが、こればかりはどうしようも無い。
そもそも僕はあまり人とコミュニケーションを持つタイプでも無いのだ。
「……別クラス、か。ほういやお前、末籐さんとは幼馴染よね?」
唐突に康介からそんな事を言われて僕は目を丸くする。
「……ほうじゃけど、それが?」
「彼女、東條さんと同じ4組じゃろ?何とか間に立って貰えりゃええんじゃないか?」
康介の提案は、予想もしてないものだった。しかし成る程、それは名案だ。……由美に好きな人がバレるというのは何だか抵抗があるが、大勢の人前で東條さんと話すよりかはよっぽど良い。
それに由美はお喋りで、誰とでも直ぐに仲良くなれる性格だ。もしかしたら転校生である東條さんにも、もう話しかけているかも知れない。
「……とりあえず、アイツにメールしてみるわ」
そう思うと、行動は早かった。
『お前のクラスに東條さんっておる?もう知り合いじゃったら俺も話してみたいんじゃけど』
そんな内容のメールを、僕は由美に送った。
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