第9話 未返信
「あんのアホ……」
放課後、屋上にて不貞腐れる様に画用紙に向かってそう吐き捨てる。どうしてこんなにも不機嫌なのかと言うと、由美からの返信が放課後になっても返って来なかったからだ。
仕方がないので、気分転換にと屋上でいつもの様に絵を描こうと思ったのだが、やはりメールの方が気になって集中出来ない。
「……はぁーー………」
大きな溜息をついて、空を見上げる。空は依然として曇っていて、益々どんよりとした心を加速させていた。
そもそも由美がメールを見ていない可能性もある。この前だって送ったメールが3日後に返ってきたことがあった。
しかし、今回ばかりは返信をして欲しかった。なにせ初恋なのだ。メールで恋をした事は由美には伝えて無いのだが、内容で察して欲しいものである。
……いや、そもそもメールを見てないのだから関係ないか。
「……しゃーない。描こう」
見ていないなら仕方がない。いつも通り鉛筆を握ると、メールの事を忘れる様に画用紙に没頭した。
「いけん、ダメじゃ」
しかし、幾ら画用紙に没頭しようとしても、何処かしらで集中が途切れた。理由は言わずもがな。
僕はこれじゃあダメだと、もう絵を描くのをやめて片付けをする。
その後、屋上の柵に手を掛けて呉の景色をボーッと見る。
メールを見ても、返信は無かった。
「……今度会ったらシバいたる……」
空っぽの受信欄を見て、由美への怒りがまた沸々と湧いてくる。
……いかんいかん。メールを見ても居ないのに、怒りを感じるのは見当違いだ。怒りを振り払うように頭を左右に激しく、2、3回振る。
……いつもの事だ。景色を見て、冷静に、冷静に……
「誰をシバくって?」
「おわぁ!?」
すると、背後からいきなり声を掛けられた。あまりにも驚き過ぎて変な声が出る。
「あっははは!!どしたんね!!変な声出しよって!!!」
……いつもの声だ。うるさくて、元気な声。今日ばかりはそれが僕の怒りのスイッチを押すとは知らずに、このアホは大声で笑っている。
「こんの……!!メール見たんか!!このアホんだらぁ!!!」
カチンときた僕は勢いよく振り返ってそう言い放つ。
「おわっ!!」
「ひぃっ!!」
しかし、帰ってきた返事は2つ。一つは由美のものだと直ぐわかった。
もう一つは……
「あ、あの……何か怒らせる様な事しちゃいましたか……?」
僕が、思いを寄せている人物だった。
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