第684話 攻略終了?

 あまりにも呆気ない最後に戸惑っていると、リックが口を開きゆっくりと話し掛けてきた。


「あいつはいつもそう。やる時はやる奴だ。だから信頼出来るし頼りになる」


 そう言って話し出したのは、アルゴについてだ。

 アルゴは特に強力なスキルを持っていないらしいが、それでも多くの格上の魔物を倒してきた。

 ほぼ駆け出しの時に七階まで到達出来たのも、アルゴの力が大きいとリックは言った。


「あいつは目が良くて、あとは意外と思うかもしれないが努力の人だ」

「確かに。人前でやらないから知る人は殆どいませんよね」


 リックの言葉を受けて、クリフトが頷きながら言った。

珍しくアルゴを褒めて誇らしげだ。

 話を聞くと、アルゴは学習能力というか適応能力が高く、戦うことで相手の動きを読み、弱点を看破してそれを突くことが出来るらしい。

 何となく俺の記憶と似ているような気がする。

 ただすぐには無理で、それなりに時間は要するようだ。


「もしかして時間があれば武闘大会でも優勝出来たとか?」


 それなら獣王にも勝てそうだが、


「相性もある。戦うことで成長する相手だと難しい」


 ということだった。

 確かに獣王は戦いながら色々試してくるから対処が難しかった。

 今回の場合は戦っている間も相手の動きを観察出来たのも大きいのでは、ということらしい。


「もしかしてリックたちはそれを念頭に入れて戦っていたのか?」


 そう尋ねると曖昧な笑みを浮かべたが、否定はしなかった。

 それでもここまで時間がかかったのは、やはりボスである鬼人が強かったからだそうだ。


「とりあえず行くか。アルゴが待ってる」


 リックに言われてアルゴの方を見れば、鬼人が倒れて消えた辺りに宝箱が出現していた。

 すぐに開けないのは一応罠を警戒しているのと、何となく宝箱を開けるのはヒカリが担当しているからかな?

 近付き鑑定をしてみたが、特に罠はないようだ。

 ちなみにボスを倒した時に手に入った素材は魔石だった。

 ボスだけあって、一〇階で入手した鬼人の魔石と比べても一回り大きく輝きも違うから上質なものなのだろう。

 皆に見守られる中、ヒカリが宝箱をゆっくり開いた。

 中には複数のアクセサリー? が入っていた。指輪だったり腕輪だったり。

 見た目のデザインはシンプルなものもあれば、精巧な細工が施されているものもある。

 もちろんそのどれもが魔道具だ。


「ソラ、効果は分かるか?」


 アルゴの問いに俺は頷く。

 ダンジョン最下層のボスを倒した報酬に相応しい性能の魔道具だ。

 一部使い手を選ぶものもあるが、オークションにかければ一生遊んで暮らせそうなものもある、と思う。


【マジックリング】アイテムを収納出来る魔道具。収納物の劣化を防ぐ。


 これは腕輪型のマジック袋だ。収納出来る量は多くないが、アイテムの……特に料理を出来立ての状態で保存出来るのは冒険者だけでなく移動をする商人にとっても欲しい一品だ。

 鮮度を保つのが難しい食材とかを運ぶのにも役に立つ。

 個人的には腕輪である点がいいと思った。

 指輪だと地味に武器を握った時とか邪魔になりそうだからな。


【身代わりの指輪】致命傷を肩代わりしてくれる魔道具。


 この致命傷は、物理的な傷だけでなく、例えば毒物による死も肩代わりしてくれる効果があるみたいだ。

 効果が発動すると指輪の宝石が砕けるみたいだが、この宝石はどうやら魔石のようで、魔石を再びはめれば何度も使えるようだ。

 ただしそのための魔石は上位種の中でもさらに最上級のものでないと駄目だから、結構な金食い虫だ。ゴブリンやウルフの魔石では効果が発揮されない。

 権力者が欲しがりそうなアイテムだな。


【魔導の腕輪】魔力を貯蓄出来る魔法の腕輪。魔力の回復力が高まる。


 これは魔法使いが欲しがりそうだ。

 ベテランなら経験から自分の魔力量の限界を把握していると思うけど、冒険者だと何があるか分からないからこういう保険はあっても困らない。

 他にも錬金術士にも需要がありそうだな、と個人的に思った。

 魔力があれば一日の生産量とか上げられそうだし。


【スキルリング】登録したスキルを使用出来る魔道具。


 登録出来るスキル数は三つで、スキルの強さは登録者の能力で左右される。

 ただし同スキルの連続使用は無理で、一日一回という制限がある。

これは二四時間のクールタイムがあるというわけではなく、日の出でリセットされる。

 他には登録出来ないスキルも存在するみたいだ。

 この辺りは試してみないと分からないが、一度登録すると解除するにはある程度の日数が必要とあるがその詳しいところは解析を使っても分からない。


 俺が宝箱の中にあったアイテムの説明をすると、アルゴたちは腕を組んで悩み始めた。

 まあ仕方ない。

 個人的には身代わりの指輪が欲しいが、この辺りは話し合いだな。


「……とりあえずダンジョンを出るか?」


 ここで話すよりも、宿に戻ってからの方がゆっくり話せるから反対はない。

 それに長時間の戦闘で皆疲労困憊だ。

 俺は宝箱と同時に出現した扉へと視線を移す。

 ここがこのダンジョンの最終階なら、あの扉を潜れば何かが起こるはずだ。

 それはルリカたちも分かっているみたいで、視線を向けると小さく頷いた。

 そして俺たちは扉に手を掛けて扉を潜り……地上に戻ってきた。


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